人が辞めた直後、新人を即戦力にしなかった理由|少人数職場を守る判断と出口

突然の退職で翌月のシフトが苦しくなった時、新人をすぐ一人分として数えなければ、誰かの負担で営業を守ることになります。小規模デイで僕が選んだのは、新人を即戦力にせず、短期的には負担が集中することも受け止めながら、非常時を解除する道を作ることでした。
これは小規模デイで僕が経験したケースです。業種や制度は異なっても、退職や欠員の直後に、新人を完成戦力として数えたくなる少人数職場はあると思います。ここでは一般論ではなく、僕が何を優先し、誰に負担が集中し、どんな条件で非常時を解除できたかを記録します。
人が辞めた直後に起きたこと
2026年5月から6月にかけて、僕が運営に関わる小規模リハビリデイサービスでは、職員の退職と体制変更が重なりました。6月のシフトを考える時点で、新しく入った介護パート職員がいました。一方で、常勤職員と管理者の負荷は高く、パートOTが確定していないため、個別機能訓練加算を維持できるかも見通せませんでした。
人手が足りない時ほど、新人を最初から一人分として数えたくなります。でも僕は、そうしませんでした。今回必要だったのは、勝ちに行くシフトではなく、営業を止めないための防衛シフトだと考えたからです。
なぜ新人を「一人分」と数えなかったのか
当時、1単位の定員は10名でした。僕は、介護員4名なら運用上望ましいと考えていました。最悪3名でも現場は回ると見ていましたが、その場合に出せる送迎車は3台までです。
送迎は、決められた時間に利用者を迎え、時間通り事業所へ到着する必要があります。簡単には縮小できませんでした。営業を続けられるかだけでなく、安全余力と送迎余力がどれだけ残るかを別に見なければなりませんでした。常勤職員と管理者に負荷が集中していること、パートOTが未確定なら加算維持が厳しいことも、同じシフトの中で考える必要がありました。
これは制度上の人員基準を説明する話ではありません。当時の事業所で、僕が運用上どう見ていたかという判断です。
その判断で誰に負担が集中したのか
防衛シフトで最も負担が集中したのは、僕自身と、正社員で僕の右腕となる職員の2名でした。僕はほとんど現場へ入る必要があり、営業時間内にしていたデスク業務は営業終了後へ移りました。
失ったのは、営業時間内の書類業務の時間、自分の休憩時間、定時に帰ることです。これは推奨できる解決策ではありません。短期的には営業を守れた一方で、管理者へ負担を移すことで成立していた面があり、持続可能な状態ではありませんでした。

他の介護パート職員からは、「このままだと希望休が取れない」という不満も出ました。僕はその不満を当然だと受け止めました。既存職員の疲労負担を抑えるために僕が現場へ多く入ったことで、少なくとも僕の記憶では、疲労そのものに対する大きな不満は表面化しませんでした。
防衛シフトで守ったもの
僕にとって最もしんどかったのは、単純な体力負担ではありませんでした。デイサービス内の安全、残っている職員の不満、既存職員の疲労増加を、先のこととして考えてしまうことでした。「今後の体制が決まらない」状態そのものが、大きな精神的負担でした。
退職した職員の中には、看護業務も兼務し、日常の利用者の健康管理に関わっていた機能訓練指導員もいました。単に人が一人減るのではなく、看護師の視点が現場から突然減ることに、僕は強い恐怖を感じていました。
退職する側では次の段取りが進む一方、残る事業所側の次の体制は決まっていませんでした。その時間差に、僕は腹立たしさも感じました。これは誰かを責めたいという話ではなく、突然の退職で残された側には、体制を再構築するまでの時間差が生まれるという管理者の感情です。
この6月のシフトを、僕は「勝ちに行くシフトではなく、営業を止めない防衛シフト」と捉えました。優先したのは、次の4つです。
- 事故を出さないこと
- 営業を止めないこと
- 新人を潰さないこと
- 管理者と既存の常勤職員が持続できること

加算を絶対条件にせず、算定しない前提も検討しました。営業を続けるために何でも維持するのではなく、余力が薄い時に何を先に守るかを決める必要があると考えたためです。
防衛シフトにも代償があった
防衛シフトで守れたものがあった一方、僕と右腕となる正社員の消耗は大きかったです。営業時間内に現場へ入れば、書類業務、休憩、定時退勤の時間が失われます。防衛シフトは、管理者の頑張りを常態化させるための考え方ではありません。
このケースから考えられるのは、少人数職場で新人を即戦力として数えないなら、短期的な負担を誰が引き受けるのかを曖昧にしないことです。負担を引き受ける人が見えないままでは、新人を守る判断も既存職員を守る判断も続きません。
非常時を解除できた条件
新しく入った介護パート職員を、最初から一人分の完成戦力として換算しませんでした。新人にはメンターを置き、管理者がすべてを直接教えるのではなく、新人用の業務フロー、送迎指導一覧、利用者ごとの送迎指導履歴を使い、教える側にも同じ資料を持ってもらいました。段階的に業務を覚えてもらうためです。
負担が軽減し始めた転換点は、新しいパート職員が送迎と日常業務を徐々に覚え、実際に担当できる仕事が増えたことでした。さらに、新しいPTが勤務を開始しました。防衛シフトをそのまま恒久化したのではなく、新人の技能を段階的に増やし、専門職が加わることで、非常時の負荷を解除していきました。

少人数職場で同じ問題が起きたときの判断軸
結果として、営業は維持でき、利用者数は5月・6月より増えました。僕の記憶ではこの期間に事故は発生せず、新人も比較的早く業務を覚えていきました。新しいPTの加入によって、専門職体制も改善する方向へ進みました。
ただし、新人を最初から一人分として数えなかったから事故が起きなかった、と因果関係を断定することはできません。事実として、職員が育成に協力し、事故への注意も高まり、その期間に事故は発生しませんでした。

今振り返っても、新人を完成戦力として数えなかった判断は「絶対その方が良かった」と思います。一方で、営業を守った代償として、僕と右腕となる正社員の消耗は大きかったです。このケースから持ち帰れるのは、人数を急いで埋める前に、安全、営業継続、新人の育成、既存職員と管理者の持続可能性をどう並べるかを決めることです。そして防衛シフトは、恒久化するものではなく、負担を解除する出口まで考えて初めて意味を持つと感じています。




