第46話|加算算定の落とし穴|取ればいいわけではない理由

月4500単位くらい取れる可能性があった加算を、僕はあえて止めました。
デイサービスの管理者をしていると、加算はどうしても気になります。
取れるなら取りたい。
取らないより取った方がいい。
利益を考えるなら、算定できるものは増やしたい。
昔の僕も、かなりそう考えていました。
でも今は、はっきり違います。
加算は、取れるかどうかだけで決めると危ない。
本当に見るべきなのは、その加算を入れても現場が壊れないかどうかです。
今回は、実際には算定できる条件があるのに、あえて今は取っていない加算の話を書きます。
主役は口腔加算。
副として、ADL維持等加算にも少し触れます。
そしてそこで見えたのは、加算は利益の話に見えて、実はかなり深く
人員体制・メンタル・現場の安定
の話だということでした。
今、主役として止めているのは口腔加算です
今、主役として書けるのは口腔加算です。
本当は、条件だけ見れば算定できる。
看護師もいる。
形だけなら、進めようと思えば進められる。
しかも僕の中では、看護師を採用する前から、口腔加算は入れる計画に入っていました。
調べていくと、少なく見積もっても4500単位くらいは取れるんじゃないかと思っていました。
それなら、OTを雇う金額の一部もカバーできるんじゃないか。
経営的にも意味がある。
だから、本当は取りたかったです。
でも今は、止めています。
理由はかなりはっきりしていて、
看護師のメンタルが不安定だから
です。
これはすごく大きい。
看護師が不安定な状態で、さらに業務を増やす。
それで仕事を辞められるのが、一番困るし、一番怖い。
だったら、今無理に加算を取りに行くより、慣れるまで待つ方が得策だと僕は判断しています。

問題は「できるかどうか」じゃなく、「背負えるかどうか」だった
この看護師は、定期的に来るOTと自分との力量差をかなり比べてしまうんです。
でも、実際には当然なんですよね。
相手はOT。
こっちは、機能訓練の専門職ではない。
だから僕としては、ゆっくり覚えていってもらえたらいいと思っていました。
OTから少しずつ学びながら、できる範囲を広げていってくれたらいい。
採用の時点でも、そういう前提で話していました。
でも、そこがなかなか接続しなかった。
この看護師は、繰り返しこう言っていました。
「私よりもOTの先生が来た方が、利用者さんにとって意味あるじゃん」
「本当にわかんない」
「このままわかんないまま行ったら、私はやめます」
「利用者様の急変が多い中、私はそこまで背負えません」
この言葉を聞いていると、僕の中には正直
「何を今さら」
という気持ちもありました。
だって、採用の時から分かっていたことだからです。
ゆっくり覚えていく前提だった。
最初から完璧を求めていたわけじゃない。
でも同時に、この人が焦っているのも分かっていました。
誰かのためになりたい。
でも、なれていない気がする。
分からないままでいる自分も嫌なんだろう。
だから、ただ責める気にはなれませんでした。
「これはストップだ」と決めたのは、掃除中のあの空気だった
僕が
「あ、これは今入れたら壊れる」
と思った決定打は、仕事終わりの掃除中でした。
もう2人ともクタクタだった。
現場も終わって、疲れ切っている時間です。
その時、看護師の表情がすごく怖かった。
僕をぐっと睨みつけてきたんです。
いや、僕だって別に悪いことをしたわけじゃない。
でも、管理者っていつもそういう立場なんですよね。
最後に全部を受ける場所に立つことになる。
空気は重かったです。
その言葉も、その表情も、仕事終わりだったから余計に出やすかったんだと思う。
でも、僕にはすごく刺さりました。
その時、僕は
「ああ、これはもうストップだな」
と思いました。
それまでは、口腔加算を入れようと思って、いろいろ調べていた時期でした。
本当に動かすつもりだった。
でも、そこは無理押しできなかった。
やめてもいいから無理やり進める、になったら結局元も子もないからです。

加算の可否は、制度要件だけを見ていては分かりません。建前よりも職員の勤務状態やメンタルなど現場の空気を優先し、「危険信号が出たら止める判断」が一瞬で理解できるフローです。中央パネルには、疲労と不安が伝わる介護職・医療職のフラットベクターキャラクターが描かれています。
ADL維持等加算も、評価はしているけど算定は止めている
もう1つはADL維持等加算です。
これは2022年から評価自体はしています。
LIFEにも送っています。
でも、算定はしていません。
理由は、過去に機能訓練士のLIFEでのミスがあったからです。
ここは第45話:LIFE入力のリアル|管理者が夜に疲弊する本当の理由でも書いたところですが、LIFE関連の業務で一度大きく痛い目を見ています。
だから今は、ここを無理に広げるのは危ないと見ています。
将来的には、たぶん来年から算定したいと思っています。
でも今じゃない。
僕自身が、LIFE業務にもう少し慣れて、管理の精度が上がってからだと思っています。
一番大きい理由は、「人員体制が弱い」ことです
加算を今は取らない、後回しにしている一番の理由は何か。
それは、
人員体制が弱いこと。
そして人員のメンタルが不安定なこと。
これが主な理由です。
算定のために業務を増やして、職員を辞めさせたら意味がない。
むしろそっちの方が、経営的にはずっと痛い。
加算を取って単位を積み上げても、
そのせいで中心職員が不安定になったり、辞めたりしたら、損失はその比じゃありません。
しかも損するのは、お金だけじゃない。
利用者さんへのサービスの質。
現場の空気。
他の職員へのしわ寄せ。
全部崩れます。
だから僕は今、
取れる加算かどうかより、取っても現場が耐えられるか
を先に見ています。
「質が伴わない加算」は、取れても意味がない
口腔加算で僕が一番大きいと思ったのはここです。
どうせ算定するなら、質の良いものを提供したい。
今のメンタル状態でこの口腔加算を入れても、たぶん質の良いものは提供できない。
そう思いました。
制度上、算定できる。
人も一応いる。
書類も回せるかもしれない。
でも、それで本当に利用者さんのためになるのか。
ここを飛ばして
「取れるから取る」
に行くと、加算のための加算になる。
それは違う。
だから、今は止めています。
僕が今見ているのは「加算が増えるか」ではなく「現場が崩れるか」です
今の僕が、
取る加算と今は取らない加算
を何で分けているか。
建前じゃなく、本音で言うと、
職員の勤務状態と現場の安定度
です。
去年、職員が大きく変わりました。
だから今の現場は、正直まだ「安定している」とは言い切れません。
まず一番にやらないといけないのは、現場の安定です。
その上で、新しい加算を入れた時に
- 現場が安定したまま回るのか
- 崩れるのか
- 逆に良くなるのか
そこを見ています。
今の僕の見立てでは、口腔加算は
入れてはいけないという危険信号が出ている状態
です。
この感覚って、制度の要件表だけ見ていたら分かりません。
現場の空気、人の疲れ方、弱音の出方、そういうものでしか分からない。
だから、加算の判断って、数字だけの話じゃないんです。

以前は「取れるなら取る」だった。でも今は違う
この数年で、加算への見方はかなり変わりました。
以前は、
利益を最大化しないといけない。
そのためには、取れる加算はどんどん取っていかなければいけない。
そう考えていました。
でも今は違います。
今は、
利益を最大化するためにも、先に現場を安定させる土台が必要だ
と考えています。
その土台が安定してから、加算を取っていく。
今年は特に、負けない構造を作る年です。
だから、へんに加算を無理して取りに行くよりも、
- 何かイベントが起きても耐えられる
- 崩れても回復できる
- 次の一手を開始できる
- 確実に前進できる
そういう土台を優先しないといけない。
だから今は、
ただ単に加算を取った、イエーイ、みたいな発想はかなり危ない
と思っています。
まとめ|加算は「取れるか」ではなく「取っても壊れないか」で決める
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
加算は、取れるなら取ればいいものではありません。
本当に大事なのは、
その加算を入れても現場が壊れないか
です。
今回の僕のケースでは、
- 口腔加算は条件的には取れる
- 少なく見積もっても4500単位くらいの意味はあった
- でも看護師のメンタルが不安定だった
- OTの出勤も不安定だった
- その状態で入れると質が落ちると判断した
- ADL維持等加算も評価はしているが、LIFE業務の過去のミスを踏まえて今は止めている
以前は、取れる加算はどんどん取るべきだと思っていた。
でも今は、
加算は利益の道具である前に、現場の土台が耐えられるかを試す負荷でもある
に変わりました。
だから今の僕は、
加算を増やすことより、まず現場を安定させることを優先しています。
その土台ができてから取りに行く。
それが、今の僕の考えです。
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