第21話|要支援は軽くないのに報酬は下がった デイサービス管理者が令和6年度改定で苦しかった理由

デイサービスで働いていない人からすると、要支援の利用者さんは「比較的元気な人」に見えるかもしれません。
だから、現場でも手がかからない。
報酬が少し下がっても仕方がない。
そう見えることがあります。
でも、実際の現場はそんなに単純ではありません。
令和6年度改定で、要支援の運動器機能向上加算が基本報酬の中に組み込まれました。
うちのデイサービスでは、もともと要支援の方に付けられる加算は多くありませんでした。
そこにさらに単価が下がる改定が入った。
正直、きついと思いました。
しかも、要支援だからといって軽いわけではない。
要介護1の方と同じくらい介助が必要な人もいる。
それなのに、制度上は「予防」というくくりで見られる。
今回は、要支援の報酬が下がったことで、現場がどう苦しくなったのか、そしてそれでも要支援を見捨てたくないと思った理由を書きます。
令和6年度改定で一番きつかったのは、やっぱり単価が下がったことだった
令和6年度改定できついと思ったのは、やっぱり要支援の単価が下がったことです。
もともと、うちのデイサービスでは要支援の方に対して大きく加算を積める構造ではありませんでした。
そこに、運動器機能向上加算が基本報酬に組み込まれて、実質的に単価が下がった。
うちの事業所は、僕が管理者として入る前から、要介護の方も要支援の方も両方通える指定を取っていました。
割合で言うと、要介護6割、要支援4割くらいです。
この4割の報酬が下がる。
さすがに、これはしんどいなと思いました。
制度としては、要支援の方は予防で、元気になって卒業してもらうという考え方は分かります。
でも、現実にはそこに大きなミスマッチがあります。
卒業したからといって、事業所側に何か評価されるわけではない。
卒業加算みたいなものがあるわけでもない。
つまり、事業所から見れば、利用者さんが元気になって卒業したら、そのまま利用者さんが減るだけなんです。
予防を求める制度と、経営を支える報酬設計が噛み合っていない。
ここはかなりズレていると思いました。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
要支援は軽くない。要介護1より介助量が重い人もいる
要支援の方が軽いかというと、そんなことはありません。
実際に、要支援2でほぼ全盲の方がいました。
網膜色素変性症があり、ほとんど手引きで歩行される方です。
手引き歩行なので、介助量としてはかなり重い。
スタッフ1名がしっかりついていないと危ない。
感覚的には、要介護1の方より大変でした。
もう一人、要支援2で90代、腰椎圧迫骨折と乳がんがあり、ふらつきが強い方もいました。
杖や歩行器を使っていて、いつ転んでもおかしくないような歩行状態でした。
変更申請をしても要支援2のまま。
でも、現場で感じる介護量は、要介護1と同じくらいです。
こういう人を見ていると、「要支援=軽い」という制度の見え方に違和感があります。
もちろん、自立して動ける要支援の方もいます。
でも中には、要介護の方と同じくらい手がかかる人がいる。
その現場感覚を抜いたまま単価だけ下げられると、正直かなり苦しいです。
制度上の区分と、現場の介助量は一致しない。
ここがこの話の一番痛いところです。
周りでは「もう要支援は受けない」という空気まで出ていた
うちの会社のケアマネから聞いた話ですが、改定後は周りの事業所でもかなりしんどい空気が出ていました。
「もう要支援は断っている」
「要支援を取っていたら会社が潰れる」
そう言っていた近くのデイサービスもあったみたいです。
要支援の紹介がしにくくなった、という話も聞きました。
これって、かなり重い話です。
制度改定の影響って、数字の上下だけではありません。
地域の受け皿そのものが狭くなる。
実際に、「要支援はちょっと…」という空気が出ると、ケアマネも紹介しにくくなる。
そうなると、早い段階で支えたほうがいい人が、支援につながりにくくなる。
これは地域としても良くないと思います。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
それでも、急に要支援を切ることはできなかった
じゃあ、うちはどうしたか。
結論から言うと、急に要支援の受け入れを止めることはできませんでした。
現場として、見捨てるなんてまずできない。
それが一番大きいです。
それに、紹介を断るというのは、ケアマネとの関係にも響きます。
要支援だから断る、という姿勢が続くと、他の紹介にも影響することがあります。
もちろん、周りの事業所が言っていることも分かります。
経営的にしんどいのは事実です。
だから僕の中では、要介護7割、要支援3割くらいに抑えたい気持ちはありました。
でも、そこまできれいにコントロールできるものでもありません。
結局、当時4割くらいだった要支援割合を、できれば3割くらいにしたいな、と思う程度でした。
経営だけ見れば減らしたい。現場だけ見れば切りたくない。
この板挟みが、かなりしんどかったです。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
報酬は下がる。でも手間は減らない
要支援の加算を増やして戦う、という手もあります。
でもそれも簡単ではありません。
例えば病院との連携が必要だったりして、小規模のデイサービスには敷居が高いものもある。
うちみたいな小さい事業所では、取りにいきたくても取りにいけない加算があるんです。
しかも、要支援の方は自立して動ける人もいるので、その分手がかからないこともあります。
ここは事実です。
でも、だからといって単純に「楽」とは言えません。
- 送迎も必要
- 見守りも必要
- 転倒リスクへの配慮も必要
- 書類だって減らない
うちでは、運動器機能向上加算はなくなりましたが、運動器機能向上計画書をどうするかも悩みました。
作るものなのか。
作らなくていいのか。
このあたりも市町村によって運用がバラバラらしく、リハプランからも「今のところ作成しておいた方がいい」と聞いたので、うちは作成しています。
こういうところも現場を疲れさせます。
報酬は下がる。でも書類や判断は減らない。
ここが本当にしんどいんです。
それでも要支援を受ける意味はある
ただ、ここで「だから要支援は取らないほうがいい」で終わりたくはありません。
僕は、要支援の方を支える意味はかなり大きいと思っています。
悪化する前に、しっかり運動習慣をつけてもらうこと。
これが大事です。
もともと、運動習慣がない人がほとんどです。
90代になってから新しい運動習慣をつけるのは大変です。
でも70代、80代の要支援の方なら、まだ習慣が身につきやすい。
運動習慣って、本当に大きいんです。
一度習慣がつけば、継続して運動できる人もいる。
逆に、習慣がつかないままやめてしまう人もいる。
だからこそ、要支援の段階で関わる意味があると思っています。
運動習慣があり、運動を続けて元気な人を地域に増やす。
これは、自分のデイサービスがある地域での役割だと思っています。
要支援を切るかどうかの話ではなく、どう活かすかの話に変えないといけない。 :contentReference[oaicite:7]{index=7}
要支援で戦うなら、現場のやり方を変えるしかない
制度に文句を言うだけでは、現場は守れません。
だから僕が思うのは、要支援を取るなら戦い方を変えることです。
例えば、元気な要支援の方同士を集めて、介護員1人で複数名と一緒に運動する。
そういう形なら、現場のオペレーションをある程度まとめることができます。
うちでも、集団体操のやり方を変えました。
それまでは15分くらいの短い時間だったものを、30分くらいまで延ばしました。
手先の運動、脳体操、全身運動をまとめてやる形にしました。
これは要支援の方だけのためではありません。
でも、要支援の方の力をうまく活かしながら、全体の流れを作る意味では大きかったと思います。
書類については、今はAIとリハプランを使って作成しています。
こういうところも、仕組みで少しでも軽くしていかないと続きません。
それと、要支援は月額の定額制という面があります。
休まれても、要介護のように1回ごとの減算がそのまま響くわけではない。
そこは要支援の強みでもあります。
悲観だけで終わるのではなく、運用を変えて守る。
そこまでやって初めて、要支援を受け続ける意味が出ると思っています。
一番腹が立ったのは、単価が減ることがそのまま現場の苦しさになることだった
今回の改定で、僕が一番腹が立ったのは、やっぱり単価が減らされたことです。
社会全体で介護保険の財源が厳しいのは分かります。
それは分かる。
でも、現場に対する単価が少ないということは、結局そこで働く人たちの給料も苦しくなるということです。
処遇改善はある。
それでも大変です。
しかも、高齢者は増えていくと言われていても、地方では稼働率がめちゃくちゃ上がっているかと言うと、そうでもない。
地方ほど、運営は難しくなっていくと思います。
制度の数字を少し動かしただけに見えても、その裏では現場の採算、職員の給料、受け皿の維持が全部つながっています。
制度の単価調整は、現場ではそのまま人と継続の問題になります。
まとめ|要支援は軽くない。だからこそ構造で守るしかない
今回の改定で、要支援を受けることのしんどさは確かに増えました。
- 報酬は下がる
- 書類は減らない
- 中には要介護と同じくらい介助量が必要な人もいる
- 周りでは「もう要支援は受けない」という空気まで出た
それでも、僕は要支援を全部切る考えにはなりません。
悪化する前に支えること。
運動習慣をつけて、元気な人を地域に増やすこと。
それはデイサービスの大事な役割だと思っているからです。
勘違いしやすいのは、要支援は軽くて楽だということ。
一番危ない見落としは、制度上の区分と現場の介助量は一致しない、ということです。
だから必要なのは、悲観しすぎることでも、制度に怒るだけでもありません。
自分の工夫次第で大きく変わる部分がある。
コントロールできないところもある。
でもそこに悲観しすぎず、頭を使うこと。
要支援だから残念、ではなく、どう活かすか。
どう構造で守るか。
結局、そこを考えられる事業所のほうが、最後はしぶとく残るのだと思います。
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