第52話|加算算定の迷い|取れるけど「あえて取らない」判断基準

加算は、取れるなら取った方がいい。
制度や経営の数字だけを見れば、たしかにその通りです。
でも、現場の最前線に立っている管理者は知っています。
「取れること」と「回し続けられること」は、まったく別物です。
ここを履き違えると、後で必ず痛い目を見ます。
書類が回らない。
確認が漏れる。
担当者が疲弊する。
気づいた時には、利用者さんにも現場にも迷惑がかかっている。
だから僕は、加算を取るかどうかで迷った時、最初に単位数を見ません。
まず見るのは、
「担当者の能力」
「担当者のメンタル」
「その運用が継続できるか」
です。
口腔加算を取るかどうか迷っている今も、最初に見ているのはそこです。
担当者が急に辞めたらどうなるか。
残された利用者さんはどうなるか。
書類だけ残って、誰も触れない状態にならないか。
そこまで見て、ようやく「取るかどうか」の話になります。
加算判断って、制度の話に見えて、実際はかなり人の話です。
でも同時に、人の話だけでもありません。
結局、管理者が見るべきなのは、
「この運用を、自分の管理下に置けるか」
です。
加算を取る前に、僕が最初に見る3つの物差し
制度上は取れる。
条件も一応そろっている。
それでも、あえて取らない。
その判断を下す時、僕は次の3つを見ます。
- 担当者の実務能力とメンタル
- その運用が、担当者不在でも継続できるか
- 管理者である僕が、毎月きちんと確認しきれるか
ここが1つでも欠けているなら、どれだけ増収が見込めても、僕は「まだその時じゃない」と判断します。
なぜなら、加算は取った瞬間より、毎月正しく維持し続けることの方がずっと難しいからです。
単発で通ればいい話ではありません。
終わりのないルーチンとして、現場に負荷が乗り続ける。
その覚悟と土台があるかを、僕は見ます。

判断の線引きはシンプルです
僕の中での線引きは、かなり単純です。
- 人員が安定しているか
- 担当者しか分からない状態になっていないか
- 毎月確認しきれるか
要は、
僕の管理内で把握できるか
ということです。
ここが一番大事です。
以前、OTがLIFE管理をしていた時、僕はそこに十分入れていませんでした。
今振り返ると、あれは甘かったと思っています。
自分が把握していない。
自分が管理できていない。
その状態では、相手が間違っていても気づけません。
指摘もできない。
助けることもできない。
修正もできない。
それで「担当者に任せていたから」は、管理者の言い訳にはなりません。
管理者が知らないまま進んでいる加算。 これはかなり怖い状態です。
任せることと、丸投げすることは違う
ここは、かなり大事です。
担当者に任せること自体は悪くありません。
むしろ、全部を管理者が一人で抱える方が崩れます。
でも、
任せることと
丸投げすることは違います。
任せるなら、
- 要件を管理者が理解している
- どこがリスクか分かっている
- 異常があれば気づける
- 最後は管理者が責任を持てる
この状態が必要です。
逆に丸投げは、
- 自分はよく分かっていない
- 担当者しか中身を知らない
- 管理者は結果だけ見ている
- 問題が起きても途中で止められない
こういう状態です。
以前の僕は、LIFE管理の場面でこの甘さがありました。
今ならはっきり言えます。
あれは「任せていた」のではなく、かなり丸投げに近かったです。
管理者が把握していない。
だから相手が間違っていても気づけない。
指摘も助けもできない。
これでは、加算を取る以前の問題です。

実例|僕がADL維持等加算を止めた理由
過去に、ADL維持等加算を取ろうとしていた時期がありました。
でも、僕は止めました。
理由ははっきりしています。
担当していた機能訓練士が、制度を十分理解していなかったからです。
その人はよく、
「自分は事務仕事が苦手でねえ」
と言っていました。
もちろん、苦手なこと自体は責められません。
でも、加算は
「苦手だけど頑張ります」で通していい領域ではありません。
経営にも影響する。
利用者さんにも影響する。
しかも、制度上の責任まで発生する。
そう考えると、理解が浅いまま、しかも継続性も怪しい状態で進めるのは危ない。
だから僕は止めました。
ここで見ていたのは、
「取れるかどうか」ではありません。
見ていたのは、
- 正確性があるか
- 継続性があるか
この2つです。
加算は、頑張りで何とかするものじゃない。
むしろ、頑張りに依存し始めた時点で危ないと僕は思っています。
回っている加算と、危ない加算の違い
今、回っている加算には共通点があります。
それは、
僕がどういう状態で取れて、どういう状態で取れなくなるかを把握していること
です。
何を確認しないと危ないのか。
どこでズレやすいのか。
どうなったら止めるべきか。
そこを、僕自身が分かっている。
これが大きいです。
逆に言うと、僕の管理外にあるものは危ない。
自分が管理できないこと。
自分が責任を持てないこと。
そこに対して「担当者がやってるから大丈夫」は、僕はやりません。
それは管理者じゃないと思っているからです。
管理者って、全部を自分でやる人ではありません。
でも、自分が把握できないまま回す人でもない。
この線を引けないと、加算はどこかで崩れます。
加算判断で一番危ない考え方
一番危ないのは、
「責任なく、取れるから取る」
この考え方です。
あるいは、
「よく分からないけど、担当者に任せておけばいい」
これも危ない。
正直、過去の僕にもそういう甘さはありました。
自分は管理しきれない。
でも売上は上げたい。
だから担当者がやってくれる前提で進める。
これは確実に危ないです。
本当に痛い目を見ます。
しかも、痛い目を見るのは管理者だけじゃありません。
現場も巻き込みます。
利用者さんにも迷惑がかかります。
だから僕は、加算判断で一番大事なのは
「取れるか」でも
「単位がいくつ増えるか」でもなく、
誰が、どこまで、責任を持って管理できるか
だと思っています。
他の管理者に一つだけ伝えるなら
加算を取るか迷っている管理者に、僕が一つだけ伝えるならこれです。
まずは、自分自身が要件と運用を把握し、管理できるかを見てください。
そこができないなら、まだ取らない方がいいです。
誰か任せのまま走ると、後で痛い目を見ます。
加算は、単位の話に見えます。
でも現場では、責任の話です。
管理者が条件もリスクも運用も把握しているなら、加算は武器になります。
逆に、管理者が見えていない加算は、どこかで無理が出ます。
だから僕は、加算を取る前にこう考えます。
- その担当者は継続できるか
- 担当者しか分からない運用になっていないか
- 毎月確認しきれるか
- そして、自分が管理できるか
ここまで見て、初めて「取る」と言える。
取れるけど、取らない。
この判断は、消極的なんじゃありません。
むしろ、
現場を壊さないために必要な、管理者の能動的な判断
だと僕は思っています。
まとめ
加算判断で一番危ないのは、制度を知らないことだけじゃありません。
管理できないまま取ることです。
担当者の能力。
担当者のメンタル。
継続性。
毎月の確認。
そして、管理者自身の把握。
ここを見ずに「取れるから取る」で進むと、後から現場が苦しくなります。
加算は、取ることが目的ではありません。
正確に、継続して、責任を持って回せることが前提です。
そこまで管理できるなら取る。
できないなら、まだ取らない。
僕は、その順番で判断しています。
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