結論から言うと、小規模デイサービスは稼働率が8割あっても安心できません。

僕のデイでは、施設利用者の利用が30マスほどに偏っていた時期、ある施設の感染症で6名がまとめて休みました。その状態が2か月ほど続き、たった一晩で売上の3割近くが消えることもありました。

この時期、僕は朝の電話が本当に怖かったです。送迎車を出す前に欠席の確認が入るだけで、その日の売上が一気に変わる。数字は埋まっているのに、安心できない。管理者として、朝から心臓がバクバクするような感覚でした。

そこで僕は、施設利用者の利用を30マスから20マスまでに抑えました。空きがあるように見えても、紹介を断る。その判断は簡単ではありませんでした。

この記事で伝えたいのは、稼働率を上げる方法だけではありません。何人埋まっているかではなく、誰で埋まっているか。その利用は崩れにくいか。小規模デイを守るための「負けない構造」を、僕が実際に食らった数字と判断から書きます。

あの経験で分かったのは、次のことでした。

  • 稼働率が高くても、脆い構造はある
  • 施設利用者が多いと、一晩で売上が崩れる
  • 管理者の仕事は、埋めることより潰さないこと

「稼働率は悪くないのに安心できない」「小規模デイの売上が安定しない」「施設利用者の割合をどこまで持つべきか迷う」という管理者に、数字の表面ではなく中身を見る判断を持ち帰ってもらえればと思います。

定員10名デイでは、2名の欠席がそのまま2割減になる

うちのデイサービスは、午前10名・午後10名の二単位制です。つまり1日20マス。営業日が20日なら、月の総利用マスは400になります。

この400をどう埋めるかは、小規模デイの経営でかなり重要です。ただ、定員が小さいと、1人、2人の欠席でもインパクトが大きくなります。

1単位10名のうち2名が休めば、その単位は2割減です。午前と午後の両方で欠席が重なれば、その日の空気は一気に変わります。大きい施設なら吸収できる程度のブレでも、定員10名デイではそのまま経営の揺れになります。

しかも、同じ施設の利用者で多くのマスが埋まっていると、その揺れは1人、2人では終わりません。

定員10名のうち2名が欠席すると利用枠が2割減ることを示す図

稼働率8割でも、6名の欠席で売上3割近くが消えた

施設依存30マスから6名欠席が約2か月続き売上が3割近く減る流れを示す図

ある時期、うちでは施設利用者の利用が30マスほどありました。

施設から紹介をいただくと、やはり断りにくいです。小規模デイに空きがあれば、なおさらです。まとまった利用につながることもあり、見た目としてはかなり助かります。

実際、当時の稼働率は8割前後に見えていました。僕にも「だいぶ埋まってきたな」という感覚がありました。

しかし、その30マスは施設側の事情ひとつでまとめて止まる可能性がある利用でした。施設内で感染症が出て外出自粛になると、その施設の利用者さんが一気に休みます。

うちでも、ある施設で感染症が出て、6名がまとめて休んだことがありました。しかも単発ではなく、2か月ほど続いた時期もあります。

30マス分の利用が一気に止まる。これはかなり重いです。

送迎車を出す前に「今日は何人休みですか」という確認が入るだけで、その日の売上が一気に変わりました。施設利用者の割合が高いと、たった一晩で売上の3割近くが消えることもありました。

しかも施設利用者さんは、要介護の方が多い。つまり、休みが出た時の売上インパクトも大きくなります。

数字の上では、利用マスは埋まっている。でも実際には、そのマスが全然安定していない。

一見すると、30マス埋まっているのは良いことです。けれど、その30マスが同じ施設に依存し、施設の事情ひとつで止まるなら、それは安定ではありません。

ここで怖いのは、「数字があるから安心」と錯覚してしまうことです。数字があることと、その数字が落ちにくいことは別でした。

数字は埋まっていた。でも、要塞としては脆かった。

この感覚は、経験しないと分かりにくいと思います。

ここで僕は、埋まっていることと、安心できることは違うと痛感しました。数字があっても、その中身が偏っていれば脆い。小さいからこそ、その偏りがそのまま経営の揺れになります。

同じような偏りは20名定員のデイでも起こると思います。ただ、定員10名ではその影響がより濃く出ます。少人数のまとまった欠席を、別の利用で吸収できる余地が小さいからです。

施設利用者を30マスから20マスまでに抑えた

この経験のあと、僕は施設利用者の利用を20マスまでに抑えるようにしました。これは施設利用者を否定する話でも、感情で決めた話でもありません。完全に構造の話です。

施設利用者をゼロにしたわけではありません。必要な人もいますし、紹介はありがたいです。ただ、割合を持ちすぎると、ひとつの施設の事情で売上が大きく崩れます。

そこで僕のデイでは、次の線を決めました。

  • 施設利用者は20マスまでにする
  • それ以上は基本的に埋めない
  • 代わりに在宅利用者を増やす
施設依存を30マスから20マスまでに抑え崩れにくい構成へ変える図

紹介をいただいても、「今は施設利用者の枠がいっぱいです」と伝えるようにしました。

正直、断りにくいです。施設からの紹介はありがたい。しかも空きがあるように見える時は、なおさら断りづらい。

紹介をいただけること自体は、管理者としてありがたいことです。目の前に空きがあれば、断ることに迷います。以前の僕なら、その空きを埋める方を選んでいました。

それでも断るようにしたのは、あの時に分かったからです。

ここで断れないと、あとでもっと苦しくなる。

目の前の紹介で空きを埋める安心より、同じ理由でまとめて止まらない構成を優先する。30マスから20マスへの変更は、数字を減らすためではなく、デイを守る線を引く判断でした。

管理者は「全部受ける」より負けない構造を作る

以前の僕は、来た紹介はできるだけ全部受けることが正しいと思っていました。とにかく埋める。それが経営だと思っていたのです。

でも今は違います。

この経験を通して、管理者の仕事の見え方そのものが変わりました。紹介を受けた件数ではなく、何かが起きてもデイ全体が崩れない構成を残せているか。その視点を持たなければ、稼働率の数字だけに引っ張られます。

管理者の仕事は、来た紹介を全部受けることではありません。

本当に大事なのは、どの利用者構成ならこのデイが潰れにくいかを考えることでした。全方位に良い顔をするのではなく、リスクのポートフォリオを管理すること。埋めることより、まず潰さないことを優先する。

それが小規模デイの管理者に必要な冷たさだと、あの時はっきり分かりました。

この冷たさは、利用者を切り捨てるという意味ではありません。デイ全体が崩れないために、利用者構成を管理するという意味です。

小規模デイは、優しさだけでは守れません。構造で守る必要があります。

利用者構成を変えると、現場の負担も変わった

この話は、経営の数字だけで終わりません。施設利用者の比率を下げていくと、現場の空気も変わりました。具体的には、介護員の不満が減りました。

施設利用者が多い時は、キャンセルの波が急です。来る日と来ない日の差が大きく、送迎も崩れる。その日の介助量や負荷も読みにくくなります。

つまり、現場のリズムが安定しにくいのです。

売上だけを見れば、休みが出たという数字で終わります。しかし現場では、送迎の組み方が変わり、介助量の見込みも変わります。数字の揺れが、そのまま職員の動きづらさにつながっていました。

在宅利用者の割合が増えると、比較的リズムを読みやすくなりました。もちろん欠席がゼロになるわけではありません。それでも、施設都合でまとめて止まるような崩れ方は減りました。

その結果、数字だけでなく、現場のストレスも減っていきました。経営の構造を変えることは、現場のメンタルにも直結します。売上の安定は、そのまま職員の安心にもつながると実感しました。

売上と現場を守る崩れにくいデイサービス運営構造を示す図

稼働率8割でも赤字リスクが残る条件

定員10名のデイで稼働率が8割あっても、次の条件が重なると赤字リスクは残ります。

  • 利用者構成が偏っている
  • 施設への依存が強い
  • キャンセルが一気に出る
  • その日の売上が急変する
  • 加算や職員配置とのバランスがある

数字としての8割は、確かに悪くありません。でも、それが落ちにくい8割なのか、一晩で崩れる8割なのかで意味はまったく違います。

20名定員のデイでも偏りは起こると思います。しかし定員10名では、少人数の欠席がより濃く数字へ表れます。

管理者が見るべきなのは、稼働率だけではありません。

  • 施設利用者と在宅利用者のバランス
  • キャンセルが個別に出るのか、まとめて出るのか
  • 送迎や介助量を読みやすいか
  • 現場の負担が急に変わらないか

何人埋まっているかではなく、誰で埋まっているか。

ここを見誤ると、管理者は苦しくなります。

まとめ|埋めることより、まず潰さない

小規模デイで本当に大事なのは、埋めることより、潰さないことです。

僕のデイでは、施設利用者30マスへの依存から、6名の欠席と2か月ほど続く利用停止を経験しました。稼働率は8割前後に見えていても、一晩で売上の3割近くが消えることがありました。

だから今は、施設利用者を20マスまでに抑え、「埋まっているか」より「崩れにくいか」を見るようにしています。

施設利用者の割合。在宅利用者とのバランス。キャンセルの出方。現場の負担。その全部を含めて、負けない構造を作る。

あの時、施設利用者30マスを抱えたことで、僕はそれをかなり痛く学びました。

稼働率の数字を上げることは大切です。ただし、その数字を作っている利用者構成まで見なければ、管理者は安心できません。高く見える稼働率を守るのではなく、崩れてもデイ全体が持ちこたえられる構造を守る必要があります。

数字は埋まっていた。でも、要塞としては脆かった。

優しさだけで全部を受けるのではなく、デイ全体を守るために線を引く。それが、小規模デイを守る管理者の仕事だと思っています。

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稼働率や売上を動かした実績を昇給交渉へどうつなげたのかは、デイサービス管理者の年収470万円と昇給交渉の実体験で書いています。僕が稼働率58%台から79%台まで改善し、年収470万円まで上がった経緯をまとめた記事です。

ABOUT ME
リハビリデイ管理者
リハビリ特化型デイサービスの現役管理者。 現場運営・稼働率改善・スタッフ管理など、実際のデイサービス経営のリアルを発信しています。 これまで複数のデイサービス事業所で勤務し、稼働率が低迷していた事業所の改善に携わる。 担当した事業所では、稼働率を58.5%から79.8%まで改善。 ケアマネジャーとの関係づくり、紹介数を増やす営業方法、現場オペレーション改善など、 現場経験をもとにした実践的なノウハウをまとめています。 「現場で本当に使えるデイサービス経営」をテーマに、 管理者・生活相談員・デイサービス経営者向けに情報を発信しています。