新規受け入れの罠|「契約できた」で安心した後に始まる地獄

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新規利用が決まると、やっぱり少し安心します。
紹介が来た。
体験につながった。
利用開始まで行けた。
管理者としては、まずそこが1つの山です。
でも、今の僕は思います。
新規って、「契約できたら終わり」じゃない。
むしろ怖いのは、その後です。
本人が本当に来たいと思っているのか。
家族の思いとズレていないか。
継続できる利用なのか。
管理者の時間を食い潰さないか。
そこを見誤ると、小規模デイは静かにしんどくなります。
この記事では、デイサービスの新規受け入れで見落としやすい罠を、僕自身の失敗に近い経験から整理します。
特に、次のような管理者さんには読んでほしいです。
- 新規利用者を増やしたい
- 稼働率を上げたい
- でも、契約後にキャンセルや拒否が続いて困っている
- 家族は行かせたいのに、本人が来たがらないケースで悩んでいる
- 新規対応に管理者時間を取られすぎている
新規受け入れは、契約数だけで見てはいけません。
本当に見るべきなのは、
本人の利用意思、家族との温度差、そして管理者時間への影響
です。
今回は、新規受け入れの時に見落としやすい罠について書きます。
デイサービス新規受け入れで起きた実例
認知症のある一人暮らし男性の新規利用だった
一番象徴的だったのは、認知症のある一人暮らしの男性利用者さんです。
- 要介護1
- 一人暮らし
- 腰痛持ち
- 裕福な方
- 普段は、息子さんからプレゼントされた電動自転車で一人で動いていると言っていた
本人はいつも、
「毎日忙しい」
「いろんなところに行っている」
と話していました。
でも、ご家族に聞くと違いました。
本当はそんなことはなくて、家にずっとこもっていることが多かったようです。
利用のきっかけは、ケアマネさんからの紹介でした。
しかも、もともと利用されていた方のご友人だったこともあって、
「その人と同じ日に行きたい」
という流れで利用になりました。
その時は、正直そこまで悪い入り方には見えなかったです。
むしろ、
良い新規が来たな
と思っていました。
最初は「良い新規利用者さん」に見えていた
最初の印象は悪くなかったです。
すごく社交的でした。
他の利用者さんともよくしゃべる。
リハビリも熱心にやる。
空気も悪くしない。
だから、最初は本当に
「良い方が来たなあ」
と思っていました。
でも、少しだけ引っかかっていたことがあります。
あまりにも社交的すぎるな、という感覚です。
後から聞いた話ですけど、家に帰ると
「話す相手が誰もいなかった」
と家族に言っていたらしいんです。
あんなにいろんな人と会話していたのに。
つまり、最初に見えていた社交性は、
単なる明るさじゃなくて、
孤独の裏返し でもあったのかもしれない。
この時点で、もっと慎重に見ないといけなかったんだと思います。
契約後にキャンセルと説得対応が始まった
最初の2回以降、休みが続くようになった
この方、本当にきつくなったのは利用開始後です。
最初の2回ぐらいは来られました。
でも、そのあと休むようになりました。
理由は毎回だいたい同じです。
- 自分は忙しい
- 今日もどこそこに行かないといけない
- 自転車で行かないといけない
- 腰痛がひどいから整骨院に行かないといけない
- 腰痛が治ってからまた行きたい
でも、ご家族に確認すると、整骨院に行っていない。
ずっと家にいる。
そして家族からは、
「どうかデイサービスに連れて行ってほしい」
と言われる。
ここから何が起きたか。
管理者の僕が、
毎回電話をして、
午後に迎えに行って、
説得する。
それでも断られる。
これを繰り返すようになりました。
崩れたのは稼働率より先に管理者時間だった
このケースで一番きつかったのは、現場の空気より、まず管理者の時間でした。
この方の利用日は、毎週火曜日と金曜日でした。
そのたびに僕が、
- 午前中に連絡する
- 午後に迎えに行く
- 説得する
- それでも断られる
これを繰り返すことになった。
これが本当にきつかった。
しかも、説得しに行っても、話す内容はだいたいいつも同じです。
忙しい。
用事がある。
腰が痛い。
また今度。
話は長い。
時間はどんどんなくなる。
さらに最後の方になると、この方は利用日じゃない日にも、自転車でデイサービスに直接来て、
「自分はこういう理由で休みたいんだよ」
と説明するようになりました。
つまり、
- 利用日でも時間が取られる
- 利用日じゃない日でも時間が取られる
という状態になったんです。
ここまで来ると、もう単なるキャンセル率の問題ではありません。
管理者時間の破壊です。

デイサービスの稼働率や採算構造については、こちらの記事でも詳しく書いています。
稼働率8割でも赤字リスクがある理由
週2回契約でも、3週間後には利用が止まった
数字だけ見るとどうだったか。
この方は、週2回利用予定でした。
でも、継続期間としては、
最初の3週間以降は、ほぼお休みでした。
キャンセル率はかなり高かったです。
採算としては、正直合っていなかったと思います。
送迎距離だけ見れば、ご自宅はデイから車で10分くらいです。
だから最初は、そこまで悪く見えない。
でも実際は、
- 継続しない
- 毎回説得が必要
- 管理者の時間を取られる
- 利用日以外も対応が発生する
という形で、数字に見えにくいコストが積み上がっていきました。
小規模デイって、こういう利用者さんが1人いるだけで、かなり重いです。
キャンセルが続いた時に経営がどう崩れるかは、こちらでも整理しています。
稼働率66.1%で気づいたキャンセル崩壊の正体
新規受け入れで見るべき本人と家族の温度差
家族の希望と本人の利用意思にズレがあった
今振り返って、一番見るべきだったと思うのはこれです。
家族の思いと、本人の気持ちの差 です。
家族は、デイサービスに行ってほしい。
でも本人は、そんなに行きたくない。
この差が大きいと、いろんな理由をつけて休まれるようになります。
腰痛。
用事。
忙しい。
今日はやめておく。
表面上はどれも理由になる。
でも、本体はそこじゃない。
本体は、
本人の利用意思が弱いまま契約が走っていたこと
だったんだと思います。
ここを見抜けないと、契約できても継続しない。
そして継続しないだけじゃなく、管理者がその穴埋めに入ることになる。
本人と家族の温度差を見抜くチェックポイント
新規受け入れ前に、今なら僕はここを見ます。
| 確認する視点 | 見るポイント | リスク |
|---|---|---|
| 本人の利用意思 | 本人が自分の言葉で「行く理由」を言えるか | 家族主導だけで契約が進む |
| 家族の希望 | 家族が何を期待しているか | デイへの期待が過剰になる |
| 休む理由の出方 | 腰痛・用事・忙しいなどが頻発しそうか | 利用開始後に休みが増える |
| 生活実態 | 本人の話と家族の話が一致しているか | 状態把握がズレる |
| 管理者対応 | 説得や個別対応が毎回必要になりそうか | 管理者時間が壊れる |
ここで大事なのは、
「受け入れる・受け入れない」を一発で決めることではありません。
受け入れた後に、どんな負荷が起こりそうかを先に見ておくことです。
それでも新規受け入れを止められない理由
「誰でも受け入れるな」とは正直言えない
ここ、正直に書きます。
僕は、
「だから誰でも受け入れるな」
とは言えません。
言えないです。
だって、稼働率を上げたいもん。
稼働率を上げないと、スタッフを雇えないもん。
だから、紹介をもらったら、とりあえず来てもらえるように工夫する。
自分たちにできることはやる。
いやでもダメだったら仕方がないけどね、という感じです。
もちろん、入れることによって現場が壊れることもある。
でも、それでも挑戦したい。
失敗してもいいから、僕は挑戦したい。
ここはかなり本音です。
たぶん、管理者なら分かると思います。
理屈では慎重に選ぶべきだと分かっていても、
現実には埋めないといけない。
だから、この話は
「受け入れるな」
ではなく、
受け入れた後に何が起こるかを分かった上で挑戦する
という話なんだと思っています。
信頼できるケアマネからの紹介なら今でも挑戦する
とはいえ、判断基準が全くないわけではありません。
僕は今でも、よく知ったケアマネさんからの紹介なら、迷わず挑戦する方です。
そのデイサービスの特色を理解した上での紹介があるからです。
そこには、ある程度の前提共有があります。
実際、今でも紹介されたらガンガン体験してもらって、利用につながっています。
ただ、その一方で現場からは声も来ます。
「利用者さんが多くてちょっとしんどいです」
「何とかしてください」
そういう声は普通に来る。
その時は、僕が書類を置いて現場に出るようにしています。
まだ、いい形ではないと思っています。
でも、そうでもして稼働率を上げないといけない。
ここも、今の本音です。
新規受け入れの罠を避けるための管理者視点
契約できたことで安心するのが一番危ない
今回のケースを通して思うのは、新規受け入れの本当の罠は、受け入れそのものじゃないということです。
罠は、
契約できたことで安心してしまうこと
です。
でも本当は、そのあとに見るべきことがある。
- 本人は本当に来たいのか
- 家族の希望とズレていないか
- 継続できるのか
- 管理者が説得要員にならないか
- 利用日以外の対応まで発生しないか
ここまで見ないといけない。
小規模デイは、利用者が1人増える重みが大きい。
でも同時に、
1人のミスマッチが壊すものも大きい。
だから、受け入れ判断は、数字だけでも、理想論だけでも見られません。
新規受け入れ前に確認したい5項目
今なら、僕は新規受け入れの時に最低限ここを確認します。
- 本人は、デイサービスに行く理由を理解しているか
- 家族だけが前のめりになっていないか
- 本人の話と家族の話に大きなズレがないか
- 休みの理由になりそうな要素が最初から多くないか
- 管理者や相談員が毎回説得に入る前提になっていないか
この5つを見たうえで、受け入れるなら受け入れる。
ただし、
「契約できたから成功」ではなく、「継続できて初めて成功」
と見た方がいいです。
新規対応は管理者仕事の構造問題でもある
この話は、単なる新規受け入れの失敗談ではありません。
管理者が何に時間を使うべきか、という話でもあります。
本来なら、
- 書類
- 現場調整
- 職員配置
- 制度確認
- 新規獲得の次の一手
に使うべき時間が、
説得と個別対応に溶けていく。
これはもう、管理者仕事の構造問題です。
だからこの話は、稼働率だけの話ではなく、
将来的には 第97話|管理者仕事ハブ にもつながる話だと思っています。
また、稼働率改善の全体像は、今後公開予定の
第66話|稼働率ハブ|デイ管理者のためのV字回復ロードマップ
でも整理していきます。
デイサービスの新規受け入れは契約数ではなく継続意思で見る
新規受け入れの罠は、
「誰でもいいから埋めること」そのものより、
契約できたことで安心してしまうこと にあります。
今回のケースでは、
- 家族は行ってほしい
- 本人は行きたくない
- 契約はできた
- でも継続しない
- その穴埋めを管理者が説得で背負う
という形になりました。
つまり、崩れたのは数字だけじゃありません。
管理者の時間です。
だから、新規受け入れで本当に見るべきなのは、
単なる契約数ではありません。
家族の希望と本人の気持ちが、同じ方向を向いているか。
ここを見ないと、契約のあとで苦しくなります。
でも、それでも僕はたぶん、これからも挑戦します。
稼働率を上げたいから。
スタッフを守りたいから。
デイサービスを守りたいから。
だからこそ、
失敗も込みで、受け入れた後に何が起こるかを見ておく。
それが管理者に必要な視点なんだと思っています。
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