デイサービス経営では、利用枠が埋まっていれば安心できる。
昔の僕は、どこかでそう思っていました。

でも、ある月にその感覚は完全に崩れました。

82マス埋まっていたのに、月間稼働率は66.1%。

見た目は埋まっている。
でも、全然安心できない。

この時に初めて、僕ははっきり分かりました。

デイサービス経営で本当に見るべきなのは、利用枠が埋まっているかどうかではなく、その枠を誰が埋めているかです。

今回は、施設利用者の割合が高かったことでキャンセルが連鎖し、経営が一気に不安定になった実例を書きます。
そして最後に、僕が「埋める経営」から「崩れにくい構造を作る経営」へ考え方を変えた話までまとめます。

82マス埋まっているのに、稼働率は66.1%だった

2021年11月のことです。

その月、うちのデイサービスは見た目だけならそこまで悪くありませんでした。

1週間の利用状況を並べると、こうです。

  • 月曜:午前8名/午後10名
  • 火曜:午前8名/午後7名
  • 水曜:午前5名/午後10名
  • 木曜:午前7名/午後9名
  • 金曜:午前10名/午後10名

こうして見ると、「そこそこ埋まっているやん」と思うかもしれません。

実際、当時の感覚でもそうでした。
82マス埋まっていたので、表面上は大きく崩れているようには見えませんでした。

でも、月が終わって数字を見たら、稼働率は66.1%でした。

見た目は82マス埋まっているのに、実際は66.1%。
このギャップはかなり重かったです。

ただ、ショックで固まったというよりは、「やっぱりそうか」が近かった。

今月、あれだけ施設の利用者さん休んだもんな。
それはこんな稼働率になるよな。

そんな感覚でした。

数字を見る前から、月の途中で「これはまずいな」という空気が現場に出ていたんです。

原因は、施設利用者が3割を占めていたことだった

この月に何が起きていたのか。

一番大きかったのは、施設利用者の割合です。

当時、利用者全体のうち、施設入居中の方が3割ほどを占めていました。

そしてその時期、施設内で新型コロナが蔓延し、外出自粛がかかりました。
結果として、施設利用者のキャンセルが一気に増えました。

ここで厄介なのは、1人ずつ休むのではないことです。

同じ施設から、まとめて休みます。

これが本当に重い。

しかも施設入居中の方は、その時点では全員が要介護の方でした。
つまり、休みが出た時の売上の落ち方が急なんです。

要支援が1人休むのと、要介護の方がまとまって休むのとでは、経営へのダメージが違います。

しかも、同じ施設で感染や外出自粛が起きると、単発では済みません。
連続で休みが出ます。

1件のキャンセルではなく、塊で落ちる。
だから月の途中で「今月きついな」がはっきり見えてきます。

一番きつかったのは「営業しても打つ手が少ない」ことだった

施設利用者の割合が高い時期に、何が一番苦しいか。

それは、キャンセルそのものだけではありません。

営業しても打つ手が少ないことです。

同じ施設からまとめて休まれる。
売上は落ちる。
でも、利用枠そのものはまだ埋まっている扱いに近い。
利用中止になったわけではないから、新規をどんどん入れられるわけでもない。

つまり、

  • マスは埋まっている
  • でも休みが続く
  • だから稼働率は落ちる
  • でも営業してもすぐ差し替えられない

という、かなり苦しい状態になります。

本当に、にっちもさっちもいかない感じでした。

デイサービスの経営って、空きが多すぎても苦しいです。
でも、こういう「見た目は埋まっているのに、実際は回っていない」状態も同じくらい苦しい。

むしろ、見た目に騙されるぶん厄介でした。

「埋まってても全然安心できない」と思った

あの時の本音は、かなりはっきりしています。

埋まってても全然安心できないな。

これでした。

それまでの僕は、とにかく利用マスを埋めることを考えていました。
もちろん、それ自体は間違いではありません。

小規模デイは空きが多いとすぐ苦しくなるので、まずは埋めるのが大事なのは事実です。

でも、あの時に分かったんです。

「埋まっている」と「安定している」は違う。

施設利用者の割合を考えなければいけない。
時期によってキャンセルは本当に増える。
特に12月、1月、2月は強い。
最近は真夏も危ない。

熱中症で倒れて、そのまま転倒や骨折、入院につながることもあります。

つまり、デイサービスの稼働率は、単純な席数ゲームじゃないんです。

  • 季節
  • 利用者属性
  • 生活環境
  • 感染症
  • 送迎条件
  • 介助量

そういうものが全部絡んで、数字が揺れます。

社長との会話で、危機感が現実になった

印象に残っている言葉もあります。

「また〇〇施設でコロナが蔓延してるらしいよ。」
「しっかり対策してるのかね。」
「このままじゃ、コロナによって会社が潰される。」

社長とそんな会話をしたのを覚えています。

もちろん、現実に会社がすぐ潰れるという話ではありません。
でも、あの時はそれくらい切迫感がありました。

小規模デイは、大きな会社みたいに分厚い体力があるわけではありません。
数名の休みが重なるだけでも、数字に響きます。

しかもそれが要介護の利用者で、まとまった施設由来ならなおさらです。

経営の怖さって、赤字決算書を見た瞬間だけじゃない。
月の途中で、じわじわと「これまずいな」と感じるあの空気。
あれが一番胃にきます。

そこで僕は、施設利用者の割合を2割まで下げた

この経験のあと、僕は考え方を変えました。

施設利用者をゼロにしたわけではありません。
でも、割合は2割まで下げようと決めました。

理由はシンプルです。

在宅の方のほうが、休む割合が少なかったからです。

もちろん、在宅の方でも休みはあります。
体調不良もあるし、家族都合もあります。

でも、同じ施設からまとめて休むような崩れ方は起こりにくい。
その差は、経営の安定性にかなり響きます。

だから以後は、在宅の方を優先的に受け入れるようにしました。

ただし、完全に線を引いたわけではありません。

ケアマネから、

「施設の利用者さんなんだけど、どうしても利用させてほしい」

という相談が来たときは、もちろん受け入れました。

ここは大事です。

僕は施設利用者が悪いと言いたいわけではありません。
施設の方にもニーズはあるし、実際に必要な支援です。

ただ、経営として割合を見ないと危ない、という話をしています。

受けるか受けないかの二択ではなく、どれくらいの比率で持つか。
この視点が抜けると、後から崩れます。

稼働率を見るなら、「誰が埋めているか」まで見ないといけない

この経験以降、僕は数字の見方を変えました。

以前は、利用マスがとりあえず埋まることだけを見ていました。
でも今は、その利用マスでどんな利用者さんが利用しているかを見るようにしています。

たとえば、こういうことです。

  • 施設利用者は何%いるか
  • 要支援と要介護の割合はどうか
  • 認知症の方は何人いるか
  • 寒い時期に休みやすい利用者は多いか
  • 送迎距離の長い利用者は何人いるか
  • 片道1時間かかる人は何人いるか
  • 片道5分で済む人は何人いるか
  • 車いすや歩行器の方は何人いるか

これらは全部、経営に関係します。

送迎ルートは変わる。
介助量は変わる。
休みやすさも変わる。
稼働率の揺れ方も変わる。

同じ「10人」でも、中身が違えばまったく別物です。

ここを見ないまま、「今月は何人埋まった」だけで判断していると、見かけの数字に騙されます。

小規模デイは「埋める力」より「落ちにくくする力」が大事

デイサービス経営の話になると、どうしても

「どうやって新規を増やすか」
「どうやって満員にするか」

に意識が向きやすいです。

でも、現場を回している側からすると、それだけでは足りません。

本当に大事なのは、落ちにくい構造を作ることです。

  • ある属性に偏りすぎていないか
  • 同じ施設や同じ紹介元に依存しすぎていないか
  • 季節要因で崩れやすい構成になっていないか
  • キャンセルが出た時に、急落しやすい利用者構成になっていないか

こういうことを見ておかないと、せっかく埋めても脆いままです。

僕は2021年11月の66.1%を経験して、ようやくそこに気づきました。

遅かったかもしれません。
でも、このとき気づけたから、その後は「人数」だけでなく「構成」を見るようになりました。

これは稼働率改善の話であると同時に、崩壊予防の話でもあります。

まとめ|稼働率は「量」ではなく「構造」で見る

今回の結論ははっきりしています。

以前は、利用マスがとりあえず埋まることだけを見ていた。
でも今は、そのマスをどんな利用者が埋めているのかを見るようにしている。

施設利用者は何%か。
要支援・要介護の割合はどうか。
認知症の方はどれくらいいるか。
送迎距離は偏っていないか。
車いすや歩行器の方は何人いるか。

デイサービス経営では、数字だけでは足りません。
その数字を作っている中身まで見ないと、稼働率は守れない。

82マス埋まっていても、66.1%まで落ちることはあります。
だからこそ、見るべきなのは

「埋まっているか」ではなく、
「どんな構造で埋まっているか」

です。

小規模デイは、埋めるだけでは勝てません。
崩れにくくして、初めて勝負になります。

そしてこの視点は、属人的な勘だけで持つものではなく、見える化して残しておくべきものだと今は思っています。

利用者属性、送迎条件、季節要因、キャンセル傾向。
そのへんを一覧で見えるようにしておかないと、また同じ落ち方をします。

稼働率を上げる前に、まず崩れ方を知る。
あの66.1%は、そのことを僕に教えた数字でした。


次に読むべき記事
第24話:送迎パズルが経営を縛る限界突破の記録
→ キャンセルの正体を見たら、次は受け入れの物理的限界です。

別角度で読む記事
第20話:定員10名デイの売上リアル
→ 赤字感の話を、損益分岐点から見直すならこちら。

ハブ記事
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
→ 管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。

ABOUT ME
リハビリデイ管理者
リハビリ特化型デイサービスの現役管理者。 現場運営・稼働率改善・スタッフ管理など、実際のデイサービス経営のリアルを発信しています。 これまで複数のデイサービス事業所で勤務し、稼働率が低迷していた事業所の改善に携わる。 担当した事業所では、稼働率を58.5%から79.8%まで改善。 ケアマネジャーとの関係づくり、紹介数を増やす営業方法、現場オペレーション改善など、 現場経験をもとにした実践的なノウハウをまとめています。 「現場で本当に使えるデイサービス経営」をテーマに、 管理者・生活相談員・デイサービス経営者向けに情報を発信しています。