第24話|稼働率を上げたいのに、車に乗れない 送迎パズルが経営を縛る限界突破の記録

デイサービスの稼働率は、空きがあれば上がる。
外から見ると、そう見えるかもしれません。
でも、現場で管理していると分かります。
空きがあっても、送迎が組めなければ受けられない。
しかも厄介なのは、送迎の壁が単純な距離の問題だけではないことです。
- 車椅子が何台載るか
- 歩行器が積めるか
- 同じ車に乗りたくない利用者同士をどう分けるか
- 家が近くても相性で一緒にできないこと
こういう条件が重なると、見た目の空きマスは簡単に死にます。
今回は、小規模デイならではの「送迎の限界」がどうやって稼働率の頭打ちを生むのか、そして言われるままの運用から少しずつ「こちらのルールで回す」運用に変わっていった実話を書きます。
空きはあるのに、送迎の都合で入れられない
デイサービスの管理をしていると、こういう場面があります。
見た目は数か所空きがある。
でも実際は、車椅子持参などの理由で利用できない。
これ、外から見ると分かりにくいです。
「空いてるなら入れたらいいやん」
と思われがちです。
でも送迎込みで考えると、話はまったく別です。
たとえば、車椅子を持参される利用者さんが複数いる。
そこに歩行器を使う方も重なる。
軽自動車4台で回している場合、積める量には物理的な限界があります。
さらに、送迎は荷物だけの問題ではありません。
利用者さん同士の相性も入ってきます。
「あの人、自分に合わないから一緒の送迎車にはなりたくない」
こういう相談も、実際にあります。
長年生きてこられた方ばかりです。
自分に合う、合わないが出るのは当たり前です。
だから単純に、「家が近いから同じ車にしましょう」とはいかないことがある。
送迎は、地図上の最短距離だけでは決まりません。
人間関係まで入った時点で、もう立派なパズルです。
2025年9月、午後は埋まっているのに苦しかった
たとえば2025年9月。
その時の利用状況は、こんな感じでした。
- 月曜:午前9名/午後10名
- 火曜:午前8名/午後9名
- 水曜:午前8名/午後10名
- 木曜:午前8名/午後10名
- 金曜:午前10名/午後8名
午後はほとんど埋まっていました。
数字だけ見ると、悪くありません。
でも、送迎の中身を見ると苦しかったです。
当時の送迎車は軽自動車4台。
午後利用の中には、車椅子持参の方が数名いました。
送迎車1台につき、実質的に持てる車椅子は1台まで。
そこへ歩行器を持ってくる利用者さんも重なる。
車椅子と歩行器が同時に載るか。
安全に積めるか。
他の人も含めて乗れるか。
その確認が毎回必要になります。
この時期、片道1時間の送迎利用者はいませんでした。
つまり、問題は単純な長距離送迎ではなかったんです。
近くても苦しい。
なぜなら、積載条件と利用者同士の相性で、ルート効率が崩れるからです。
一番重かったのは、乗せたくても乗せられないことだった
この時の一番のしんどさは何か。
それは、乗せたくても乗せられないことです。
本来なら、次のルートから近い人をそのまま同じ車に乗せれば効率がいい。
でも、車椅子を載せる都合でそれができない。
別の車に回す。
別の順番にする。
すると送迎ルートの効率が一気に悪くなります。
さらに、家が近い人同士でも、
「性格が合わないから一緒にしたくない」
という希望が入ると、また崩れます。
本当なら同じ車にしたい。
でも希望がある。
だからわざわざ別の車にする。
結果として、また効率が悪くなる。
送迎って、たった1人増えるだけでルート全体が崩れることがあります。
しかもその崩れ方は、外から見えません。
空きマスはある。
でも、そのマスに人を入れるための送迎条件がもう限界。
この状態が一番苦しいです。
「効率が悪くても、どうやったら載せられるか」を考えていた
当時の僕は、かなり無理をしてでも載せる方向で考えていました。
効率が悪くても、どうやったら載せられるか。
そこを最重要視していました。
スタッフからは、よく聞かれました。
「そんな送迎、行けますか?」
でも、そうするしかなかったんです。
「載せることができないから利用は無理です」
とは、できるだけ言いたくなかった。
ケアマネからの無理にも応えたかった。
実際、利用者同士が一緒の車に乗りたくない件では、先にケアマネにクレームが入り、そのあと僕に相談が来る形もありました。
つまり現場だけで完結しないんです。
送迎の問題は、
- 人間関係の問題
- 連携の問題
- 営業の問題
まで引っ張ってきます。
だから管理者としては、単なる「送迎係の仕事」と切り離せません。
受けるか、断るか。
無理を通すか、線を引くか。
全部、最終的には経営判断になります。
本音では、効率重視の送迎ルートを組みたい
ここはきれいごと抜きで書きます。
僕は本音では、効率重視の人間です。
- ガソリン代も気になる
- スタッフの勤務時間も気になる
- 送迎ルートはできるだけ無駄なく組みたい
本当は、家が近い人は同じ車に乗ってもらいたい。
その送迎時間だけ、少し我慢してもらえれば助かる。
これが本音です。
もちろん、安全を削るつもりはありません。
そこは別です。
でも安全に問題がないなら、できるだけ効率よく組みたい。
管理者なら多分、みんなそう思うはずです。
ただ現場は、それだけでは動きません。
- 車椅子が積めるか
- 歩行器が積めるか
- 利用者同士の相性はどうか
- ケアマネとの関係はどうか
- 希望にどこまで応えるか
こういう条件が重なると、「効率だけ見たい」という本音は、すぐに現場の現実に押し返されます。
送迎を組む時、最初に見るのは「効率」ではなく「NGの有無」になった
今でも普通は、送迎効率や送迎距離を見ています。
本当はそこだけ見たいです。
でも、今は最初に別のことを確認しています。
最初に見るのは、NGがないかです。
僕の中では、おおむねこの順番になっています。
- 利用者同士の相性に大きなNGがないか
- 車椅子の人数はどうか
- 歩行器の有無はどうか
- そのうえで送迎効率と送迎距離を見る
ここが昔との違いです。
以前は、まず乗せることを優先して、そのあとで何とかしようとしていました。
でも今は、最初に「そもそも成立するか」を見ます。
送迎って、一回無理を通すと、その日だけでは終わりません。
職員の疲労にもつながるし、次回以降も同じ希望対応が前提になりやすい。
だから最初の時点で、どこにNGがあるかを見るようになりました。
これは地味ですが、かなり大きな変化です。
今は少しずつ、「全部言われるまま」から離れ始めている
とはいえ、正直に言うと、まだ完全には変え切れていません。
今でも、できる限り利用者さんの希望には沿うようにしています。
「あの人とは一緒に乗りたくない」という希望も、できるだけ配慮してきました。
本当は、これはずっと続けていいことではないと思っています。
ただ、少しずつ変えている部分もあります。
以前は、言われるままに送迎を組んでいました。
でも今は、できるだけこちらの送迎ルートに従ってもらうようにしています。
たとえば、同じ車に乗ってもらう必要がある場合は、
- 助手席と後部座席で分ける
- どうしても無理な時だけ別車にする
といった形で、まずはこちらの組み方で成立させる方向を取るようになりました。
車椅子についても、デイサービス側の車椅子に乗ってもらえないかお願いすることがあります。
もちろん、自分の車椅子と違うことで肌トラブルが起きる可能性もあるので、そこは注意が必要です。
でも、「持参が前提」で固定してしまうと送迎が成立しないこともある。
だから安全面を見たうえで、代替手段を考えるようになりました。
つまり今は、希望を全部そのまま通すのではなく、まず送迎が成立するかを見て、成立させるための代替案を出す方向に変わっています。
片道1時間以上は原則受けない。でも、稼働率で揺れる
もう一つ、今は線を引いていることがあります。
送迎距離です。
片道1時間以上の方は、原則として受けないようにしています。
これはさすがに送迎全体への負荷が大きいからです。
ただ、ここも現実は単純じゃない。
稼働率が70%を切っていると、そこは柔軟に受けることがあります。
ここが管理者の苦しいところです。
理想で言えば、遠距離は断った方がいい。
効率も悪いし、職員負担も増える。
でも数字が苦しい時期に、それを完全に貫けるかというと難しい。
だから結局、送迎の問題はルール一本では解決しません。
- 稼働率
- 安全
- 職員負担
- 営業
- 地域ニーズ
全部を見ながら、その時点の最適解を探すしかないんです。
この揺れ自体が、小規模デイの現実です。
小規模デイの送迎は「移動」ではなく「経営」そのもの
送迎は、単なる移動手段ではありません。
経営そのものです。
- 誰を受けられるか
- 何人まで乗せられるか
- どのエリアまで広げるか
- どこで線を引くか
- どこまで希望対応するか
全部、売上に直結します。
でも同時に、全部、現場負担にも直結します。
だから送迎を軽く見ると、稼働率は頭打ちになります。
空きがあるのに入れられない。
入れたくても車に乗らない。
家は近いのに同じ車にできない。
その積み重ねで、見た目の空きマスが死んでいく。
これは、実際に管理をしていないと見えにくい苦しさです。
デイの経営って、紹介が来たら終わりじゃありません。
受けると決めたあと、本当に回せるかが勝負です。
その最後の詰めを担っているのが送迎です。
まとめ|送迎は「言われるまま」では回らない
今回の結論はこうです。
以前は、言われるままに送迎を組んでいた。
でも今は、まず送迎が成立するかを見たうえで、できるだけこちらのルートに従ってもらうようにしている。
これが今の僕の整理です。
もちろん、まだ完全ではありません。
今でも希望対応はあるし、無理をすることもあります。
でも少なくとも、「何でも受ける」「何でも合わせる」だけでは送迎は崩れると分かりました。
送迎で最初に見るべきは、距離だけではありません。
- 利用者同士の相性
- 車椅子の人数
- 歩行器の有無
- そのうえでの効率と距離
この順番で見ないと、実際には回らないことが多いです。
小規模デイの稼働率は、営業だけでは決まりません。
最後は、送迎が組めるかどうかで止まります。
空きマスがあるのに入れられない。
その悔しさを何度も経験したからこそ、今はそう思います。
送迎は、ただの移動ではありません。
経営を縛る最後のパズルです。
だからこそ、感覚で回し続けるのではなく、どこにNGがあって、どこまでなら成立するのかを見える化していく必要がある。
送迎の限界を直視しないまま稼働率だけ追っても、現場は必ずどこかで詰まります。
逆に言えば、送迎の急所を押さえれば、小規模デイはまだ伸ばせる余地があるということです。
次に読むべき記事
第25話:「忙しくなるなら利用者はいりません」と言われた日
→ 送迎の限界を超えると、次は現場の抵抗と向き合うことになります。
別角度で読む記事
第22話:デイサービスはなぜ水曜だけ埋まらないのか?
→ 物理制約ではなく、曜日偏りから整理し直したい方はこちら。
ハブ記事
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
→ 管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。



