空きがあるのに受けられない。デイサービス送迎の制約と判断順序

送迎表に空きがある。定員にも空きがある。それでも、新しい利用者さんを受けられないことがあります。
僕が管理していた小規模デイで一番苦しかったのは、この矛盾でした。送迎は地図上の距離だけで決まりません。車椅子、歩行器、利用者さん同士の相性、車両、職員負担が重なると、見た目の空き枠はそのまま受入れ可能枠にはならないからです。
これは、きれいな正解がある話ではありません。できるだけ断りたくない。でも、無理に乗せれば安全と現場が崩れる。稼働率を上げたい。でも、遠距離を受け続ければ送迎時間と職員負担が膨らむ。僕が実際に迷い、判断順序を変えてきた記録です。
小規模デイで送迎の受入れ可否を考える時、僕が何から確認するようになったかを、6つの順序に整理します。
2025年9月、定員に空きがあっても送迎で受けられなかった理由

2025年9月の利用人数は、次の通りでした。定員は午前・午後とも10名です。
- 月曜:午前9名/午後10名
- 火曜:午前8名/午後9名
- 水曜:午前8名/午後10名
- 木曜:午前8名/午後10名
- 金曜:午前10名/午後8名
数字だけを見れば、午後はかなり埋まっています。午前にも2名分の空きがある曜日があります。営業だけを考えれば、その空きへ新しい利用を入れたくなります。曜日ごとの偏りを先に整理したい場合は、水曜だけ埋まらない理由で、送迎以外の要因も切り分けています。
しかし、実際には軽自動車4台で送迎を回していました。車椅子は、1台の車に実質1台まで。歩行器も重なると、荷物を含めた積載条件はさらに厳しくなります。定員10名の枠と、送迎車へ安全に乗せられる組み合わせは別物でした。
家が近い人を同じ車に乗せればいい、では終わらない
送迎効率だけなら、家が近い利用者さんを同じ車へまとめるのが自然です。でも、現場ではそれだけで決められません。
実際に、利用者さんから「あの人、自分に合わないから一緒の送迎車にはなりたくない」と言われることがありました。車椅子の方が重なり、歩行器もあり、さらに相性のNGが入る。すると、地図上では成立するルートが、現場では成立しません。
「そんな送迎、行けますか?」と確認されることもありました。以前の僕は、効率が悪くても、どうやったら乗せられるかを最優先に考えていました。利用希望があるなら、まず車へ乗せる方法を探す。その考えが強かったです。
でも、無理な組み合わせを積み重ねるほど、送迎ルートは長くなり、職員負担も増えます。空きがあるのに入れられない苦しさと、できるだけ断りたくない気持ちの間で、ずっと揺れていました。
見た目の空き枠と、実際の受入れ可能枠は違う

僕が後から整理できたのは、受入れ枠を二つに分けて考えることでした。
一つは、定員表に見える「見た目の空き枠」。もう一つは、相性、車椅子、歩行器、車両、ルートを通過した後に残る「実際の受入れ可能枠」です。
たとえば午前8名なら、定員表には2名分の空きがあります。しかし、その2名をどの車へ、どの順番で、どの組み合わせで乗せるかが成立しなければ、利用を受けることはできません。「載せることができないから利用は無理です」と言わざるを得ない場面が出ます。
数字上の空きを、そのまま営業可能な枠として扱うと判断を誤ります。送迎条件を含めて初めて、今日の本当の受入れ枠が見えます。空き枠が収益にならない別の原因として、埋まっているのに赤字感が残ったキャンセル崩壊もあります。
「まず乗せる」から「そもそも成立するか」へ変えた

今は、判断する順序を変えています。
最初に見るのは、利用者さん同士の相性に大きなNGがないか。次に、車椅子の人数と歩行器の有無。それから、使える車両とルートを確認し、最後に送迎効率と距離を見ます。
以前は「希望された時間に、どうやって乗せるか」から考えていました。今は「安全に成立する条件は何か」を先に確認します。
希望通りの時間が難しければ、別の時間帯を提案する。特定の組み合わせが難しければ、別ルートや別曜日で成立する案を探す。希望をそのまま通すか、すぐ断るかの二択ではなく、成立する代替案を出す考え方へ変わりました。
片道1時間以上は原則受けない。でも固定ルールでは割り切れない

現在は、片道1時間以上かかる方は原則として受けないようにしています。遠距離を一人受けることで、他の利用者さんの乗車時間や職員の拘束時間へ影響が広がるからです。
ただし、これも絶対ではありません。稼働率が70%を切っている時は、遠距離の利用を柔軟に受けることがあります。
効率だけを見れば断りたい。営業と稼働率だけを見れば受けたい。地域ニーズを考えれば、簡単には断れない。一方で、安全と職員負担を無視することもできません。
だから僕は、片道1時間という基準を持ちながら、稼働率、安全、職員負担、営業、地域ニーズを一緒に見ます。矛盾を一つの数字で消すのではなく、その時点で何を優先するかを決めるしかありません。こうした判断を送迎だけでなく管理者業務全体の中で整理するなら、リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップへ戻れます。
送迎判断で先に確認する6項目
僕の現場経験を、明日使える確認順序にすると次の6項目です。
- 利用者さん同士に大きな相性NGがないか
- 車椅子は何台あり、どの車に載せられるか
- 歩行器や荷物を含めて積載が成立するか
- 使える車両と職員でルートが成立するか
- 距離と乗車時間が現実的か
- 難しい場合に、時間帯・曜日・ルートの代替案を出せるか
この順序なら、効率の良いルートを作った後で、相性や積載条件によって全部組み直す無駄を減らせます。受ける、条件を変えて受ける、今回は断る。その判断理由も説明しやすくなります。
まとめ|送迎は移動ではなく、受入れ可能枠を決める経営判断
定員表の空きと、実際に受けられる枠は同じではありません。
2025年9月、午後がほぼ埋まっていた僕たちの現場でも、軽自動車4台、車椅子は実質1台/車、歩行器、利用者さん同士の相性が重なり、空きがあるのに受けられない場面がありました。
以前の僕は「どうやって乗せるか」を先に考えていました。今は、相性、車椅子、歩行器、車両とルートを確認し、その後に効率と距離を見ます。難しい時は、成立する代替案を出します。
送迎は、ただの移動ではありません。誰を受けられるか、どこで条件を変えるか、どこで線を引くかを決める経営判断です。完全な正解はなくても、判断順序を持つことで、感覚だけで受けたり断ったりする状態からは離れられます。
次に読む
第25話|管理者と現場の温度差送迎条件を整えた次に起きる、現場との価値観の衝突へ。
第26話|満員でも儲からない受入れ枠の次は、満員感と採算構造のズレを深掘りする。



