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デイサービス経営では、利用者が埋まっていれば安心できる。

昔の僕は、どこかでそう思っていました。

でも、ある時期にその感覚は崩れました。

見た目はかなり埋まっている。
でも、利益がほとんど残らない。
むしろ少し崩れたら赤字でもおかしくない。

そういう現実を、損益分岐点の計算ではっきり突きつけられたんです。

今回は、小規模デイで「満員に見えるのに安心できない」状態がなぜ起きるのか、そして僕が“今の利益”だけでなく“未来を作る投資”まで含めて考えるようになった話を書きます。

僕自身、リハビリ特化型デイサービスの管理者として、稼働率や売上、職員配置、加算、行政確認まで見ながら経営判断をしてきました。この記事では、机上の経営論ではなく、実際に損益分岐点を見て青ざめた経験をもとに書いています。

この記事を読むと、デイサービスが満員に見えても儲からない理由、稼働率と損益分岐点の関係、人件費や加算・人員配置が利益に与える影響が分かります。

「利用者は埋まっているのに利益が残らない」「稼働率は悪くないのに不安が消えない」「人件費や加算を含めて経営判断したい」という小規模デイ管理者向けに書いています。

小規模デイは満員に見えても安心できない

ある時期の利用状況は、こんな感じでした。

  • 月曜:午前8名/午後6名
  • 火曜:午前9名/午後10名
  • 水曜:午前7名/午後9名
  • 木曜:午前8名/午後9名
  • 金曜:午前10名/午後9名

数字だけ見ると、かなり埋まっています。

少なくとも、スカスカのデイには見えません。
実際、現場感覚でも、そこそこ回っているように見えていました。

でも、その時の稼働率は約69%
月売上の感覚も、だいたい160万円くらいでした。

表面上は回っている。
でも、僕の感覚としては全然安心できませんでした。

見た目は埋まっている。でも実際は、人件費が重くて不安定。
まさにそんな状態でした。

満員に見える小規模デイでも、稼働率69%・売上約160万円・人件費負担で安心できない構造を示した図
利用マスが埋まって見えても、利益が残るとは限りません。

デイサービスが満員でも儲からない理由

その時、一番お金を重くしていたのは何か。

まずは人件費です。
これはかなり大きかった。

ただ、単純に「人件費が高いから苦しい」で終わる話ではありませんでした。

もう一つ重かったのは、

  • 今はまだ取れていない加算
  • 今はまだ増やせていない定員

この「未来の余地」が、まだ形になっていなかったことです。

きっかけは、リハ職の突然の退職でした。
そこで新しいリハ職を募集したのですが、なかなか見つからなかった。

その時、社長から

「このまま待つより、看護職に声をかけよう」

という話が出ました。

そこで知り合いの看護職に声をかけ、機能訓練指導員として入ってもらう方向に動きました。

ただ、ここで問題が出ます。

うちはリハビリ特化型デイです。
看護職が入ったからといって、リハビリの質を下げるわけにはいかない。

だから僕は、単に人を埋めるのではなく、構造ごと変える方向で考えました。

  • 看護職に体調管理を担ってもらう
  • 定員増の可能性を作る
  • まだ取れていない加算の算定も視野に入れる
  • そのうえで定期的にリハ職にも入ってもらい、質を守る

つまり、コスト増をただの負担ではなく、次の形を作るための投資として見るようにしたんです。

損益分岐点73%超で青ざめた

看護職配置などの構造変更で損益分岐点が73%超に上がり、最高年間稼働率79%でも安心できないことを示した図

損益分岐点は、超えれば安心の線ではありません。

損益分岐点とは、簡単に言えば「ここを下回ると利益が残りにくいライン」のことです。

ただ、この構造変更は当然ながら楽ではありません。

人件費は上がる。
定期的にリハ職に入ってもらうなら、さらにコストは乗る。

その結果、損益分岐点はだいたい稼働率73%以上まで上がりました。

ここで僕は、かなり現実を突きつけられました。

今までの最高年間稼働率が79%。
つまり、かなりギリギリなんです。

数字を見た時に、まず思いました。

「余裕ないな」

本当に、それでした。

しかも、利用者が減りやすい時期とも重なっていました。
冬場は怪我、体調不良、入院、そして亡くなる方も増えます。

小規模デイは、こういう季節変動をまともに受けます。

だから、紙の上で73%ならいけるように見えても、現実の現場ではそんなに甘くない。

損益分岐点は、越えれば安心の線ではありません。
ギリギリで越えているだけでは、全然守れていないんです。

儲からない状態でも投資だと考えた

リハ職退職をきっかけに看護職配置や加算算定の可能性を含む構造変更を進め、コスト増を投資として見た流れを示した図
今は苦しくても、次の形を作る投資として見る視点が必要でした。

その時の本音を、そのまま書くとこうです。

「これは儲け出てないな」
「下手したら、ちょっと赤になってもおかしくないよな」

実際、そんな感覚でした。

ただ同時に、僕の中には別の考えもありました。

「これを維持できるなら、まだちょっといいかな」

もしかしたら甘いのかもしれません。
でも僕は、その構造変更に希望も持っていました。

なぜなら、看護職が入る意味は大きかったからです。

うちの利用者さんは高齢の方が多い。
しかも要介護の割合も高い。

そうなると、体調の変化は毎回かなり大きいです。

そこに看護職がいてくれるだけで、

  • 利用者さん本人の安心
  • 家族の安心
  • ケアマネの安心
  • 現場の判断の安定

こういうものが全部変わる可能性がある。

さらに、建物条件から見ても、看護職配置によって定員増の余地が見えました。
加算面でも、新しい可能性が出てくる。

今は苦しい。でも、ここで構造を変えれば次につながる。
その感覚がありました。

構造変更は人材定着もリスクになる

もちろん、きれいな話ではありません。

看護職は、リハビリを覚えるのにかなり苦労していました。
こちらも分かっていました。

だからといって、

「もっと頑張れ」

と強く言えば、辞める可能性もある。

つまり、数字だけの問題ではないんです。

  • 新しい人材が定着するか
  • リハビリの質を守れるか
  • 利用者や家族からの信頼を保てるか
  • 現場が無理なく回るか

そういう不安定さも、全部含めての投資でした。

だから僕の感覚としては、

「最低限ラインだけど、このまま行ければな」

という感じでした。

攻め切れているわけではない。
でも、ただ守っているだけでもない。
その中間です。

小規模デイの経営って、こういう曖昧な緊張感の中にあります。

加算や人員配置は行政確認して進める

この時、僕はかなり胃が痛かったです。

そもそも、そんなことして大丈夫なのか。
そこが出発点でした。

だから制度上の可否については、行政にも繰り返し確認しました。

  • 看護職配置で見込めること
  • リハ職が関わる時間帯や役割
  • 加算算定の条件

そこを曖昧なまま進めるのは危険だと思ったからです。

このあたりは、現場の感覚だけで走ると危ない。

特に構造を変える時ほど、

  • 制度上どうか
  • 算定上どうか
  • 何ができて何ができないか
  • どの条件なら成立するか

これを先に確認しないと、あとで全部崩れます。

僕にとっては、「人を入れる」ことより「成立する形で人を入れる」ことのほうが大事でした。

満員より「何が残るか」を見る

小規模デイで怖いのは、満員を幻想として追うことです。

満員なら儲かる。
埋まれば何とかなる。
そう思いたくなります。

でも実際は違います。

  • 人件費が重い
  • 加算が弱い
  • 送迎負担が大きい
  • 季節要因で崩れやすい
  • 新しい体制づくりにコストがかかる

こういう条件が重なると、埋まっていても全然楽じゃない。

むしろ、「満員なのに余裕がない」が起こります。

僕がこの時に学んだのは、

見るべきなのは稼働率そのものではなく、その稼働率で何が残るか

ということでした。

そしてもう一つ。

今月いくら残るかだけでなく、その構造が半年後にどう効くか

も見る必要がある。

短期の利益だけ見ていたら、構造転換なんてできません。
でも未来だけ見て、今の数字を無視しても危ない。

この両方を見る視点が必要でした。

数字を管理者の評価や給料交渉にどうつなげるか

損益分岐点や稼働率を見るようになると、管理者の仕事は「現場を回すこと」だけでは終わらないと分かります。数字を動かした実績は、評価や昇給交渉にもつながります。

私が実際に、稼働率58%台から79%台まで改善し、年収470万円まで上がった経緯はこちらの記事で書いています。

デイサービス管理者の年収470万円と昇給交渉の実体験を読む

小規模デイ管理者がまず見る数字

最低限、管理者が見ておきたい数字はこのあたりです。

・月の売上
・稼働率
・損益分岐点
・人件費
・加算の有無
・欠席や入院による利用減
・新しい体制にかかる追加コスト

この数字を見ないまま「満員だから大丈夫」と考えると、実際には利益が残っていないことがあります。

今、同じことで苦しんでいる管理者に言うなら、まずこれです。

まず見る数字は、損益分岐点と稼働率。

これは当たり前です。
でも、本当にここを見ていないまま苦しんでいる職場は少なくありません。

次に、勘違いしやすい点。

どれだけ稼働率が良くても、人件費が高ければ儲かりません。

これも当たり前のようで、かなり見落とされます。
埋まっていることと、利益が出ることは別です。

そして一番危ない見落とし。

全てが計画通りには行かない

ということです。

採用した人がすぐ戦力になるとは限らない。
加算が思った通りに回るとも限らない。
利用者数も、季節も、現場も、全部揺れます。

だからこそ、計画は楽観で組まず、崩れた時にどう耐えるかまで見ておかないと危ない。

数字を感覚で追うだけでは、満員に見えても安心できません。
僕も、損益分岐点を見て初めて「思ったより全然余裕がない」とはっきり分かりました。

会計や収支管理を後回しにしているなら、まずは売上・人件費・固定費を見える化するところから始めると、判断はかなり変わります。

※私自身がすべてのサービスを利用したわけではありません。公式情報を確認し、自分の事業規模や経理体制に合うかを比較するための選択肢として紹介しています。

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まとめ|満員でも損益分岐点を見ないと危ない

今回の結論はこうです。

以前は、稼働率を重視して見ていた。
でも今は、現状を見るのは当たり前として、未来に対して投資することまで見るようにしている。

これです。

小規模デイの経営は、本当にギリギリです。

埋まっているように見えても、人件費が重ければ不安定です。
構造を変えようとすれば、さらに苦しくなる時期もあります。

でも、その苦しさを理由に必要な投資を全部止めてしまえば、先は細くなります。
逆に、夢だけ見て無理な投資をすれば、今度は足元が崩れます。

だから必要なのは、

  • 今の数字を見ること
  • 未来の投資を見ること
  • そして、その両方を制度と現場で成立させること

この視点だと思っています。

満員かどうかだけでは、経営は語れません。
小規模デイは、埋まっていても苦しい。
でも、構造を変える投資をしなければ、もっと苦しくなる。

あの時に損益分岐点を見て青ざめた経験は、僕にその現実を教えてくれました。

満員かどうかではなく、その満員で何が残るか。
そこを見られるかどうかが、小規模デイの管理者には問われているのだと思います。


次に読むべき記事
第20話:定員10名デイの売上リアル
→ 稼働率が高くても、施設利用者への依存で売上が崩れるリスクを知りたい方はこちら。

別角度で読む記事
第25話:「忙しくなるなら利用者はいりません」と言われた日
→ 数字の話を、現場の反発から見たい方はこちらです。

ハブ記事
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
→ 管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。

ABOUT ME
リハビリデイ管理者
リハビリ特化型デイサービスの現役管理者。 現場運営・稼働率改善・スタッフ管理など、実際のデイサービス経営のリアルを発信しています。 これまで複数のデイサービス事業所で勤務し、稼働率が低迷していた事業所の改善に携わる。 担当した事業所では、稼働率を58.5%から79.8%まで改善。 ケアマネジャーとの関係づくり、紹介数を増やす営業方法、現場オペレーション改善など、 現場経験をもとにした実践的なノウハウをまとめています。 「現場で本当に使えるデイサービス経営」をテーマに、 管理者・生活相談員・デイサービス経営者向けに情報を発信しています。