デイサービスの管理者をしていると、よく考える数字があります。

「稼働率は何%あれば黒字なのか?」

これは経営を考えるなら、必ず知っておかなければいけない数字です。

でも、現場では意外とこの話がされません。

むしろ、数字の話を出しただけで空気が悪くなることもあります。

今回は、私のデイサービスを例にしながら、稼働率と損益分岐点の話を、できるだけ現場感覚に寄せて書いてみます。

私のデイサービスの基本構造

私のデイサービスは、半日型のデイサービスです。

午前の部
9:00〜12:00(3時間)
定員:10名

午後の部
13:30〜16:30(3時間)
定員:10名

つまり、1日最大20名まで利用できるデイサービスです。

管理者になった当時の空気は、数字を見る雰囲気ではなかった

私が管理者になった2021年、稼働率は58.5%でした。

ただ、当時の現場は数字の話をする空気ではありませんでした。

スタッフ同士で話すのは、利用者のケアやリハビリの話ではなく、別の雑談ばかり。
機能訓練士からの具体的な指示もありませんでした。

そして一番驚いたのは、誰も稼働率を知らなかったことです。

前管理者は稼働率を計算していませんでした。
機能訓練士は、

「今くらいの利用者数が一番いいんですよ」

と言っていました。

でも私は思いました。

「このままではまずい」

その話をすると、スタッフ全員から攻撃されました。
社長も優しい人で、

「スタッフに数字の話をしてはいけない」

と思っていたそうです。

ただ、管理者が数字を見ないまま現場を守るのは無理です。

デイサービスの損益分岐点を実際に計算してみる

では、実際に計算してみます。

例として、地域密着型通所介護の小規模デイを考えます。

条件

  • 定員:20名
  • 利用単価:5,000円
  • 営業日:20日

最大売上

20名 × 5,000円 × 20日
200万円

人件費と維持費を足すと、固定費はこうなる

人件費

介護職4名で考えます。

パート3名
1,050円 × 8時間 × 20日
= 16万8,000円 × 3人

常勤1名
= 25万円

介護職人件費合計は、75万4,000円です。

維持費

  • 家賃:30万円
  • 雑費:10万円

合計40万円です。

つまり、月の固定費は

75万4,000円 + 40万円 = 115万4,000円

この条件なら、損益分岐点は約58%になる

固定費115万4,000円を、最大売上200万円で割ると、

115万4,000円 ÷ 200万円 = 約58%

つまり、稼働率58%を下回ると赤字という計算になります。

この数字だけを見ると、

「58%あれば大丈夫なんだ」

と思うかもしれません。

でも、現場感覚としてはそう単純ではありません。

58%は最低ラインであって、安心ラインではない

ここはかなり大事です。

58%はあくまで最低ラインです。

しかもこれは、何の特色もないデイサービスを前提にした計算です。

もし、

  • リハビリ特化
  • 作業療法士
  • 機能訓練士の強化

などを入れれば、人件費は当然増えます。

つまり、損益分岐点はさらに上がるということです。

だから実際の運営では、70%以上ないと正直しんどいというのが現場の感覚です。

私のデイでも、2023年に79.8%まで上がった時、ようやく安心できました。

稼働率を上げるために一番意識したのは「雰囲気」だった

私が一番意識したのは、デイサービスの雰囲気です。

基本、人は笑顔の多いところに集まります。

うちの利用者さんは、独居で85歳以上の方が多いです。
家でやることはテレビを見るだけ。
表情も硬い。

だからデイに来た時は、笑ってもらうことを一番大事にしました。

「楽しかった」
「また来るね」

と言って帰ってもらう。

それが結果的に、稼働率につながったと思っています。

数字を見ていない管理者は意外と多い

私の経験では、稼働率を見ていない管理者は意外と多いと思います。

特に、雇われ管理者の場合です。

また福祉業界には、

「福祉でお金を稼いではいけない」

という考え方がまだ残っています。

非営利法人ならそれでもいいかもしれません。
でも、株式会社や有限会社は営利法人です。

営利法人で働くなら、売上を上げる責任があります。

利益を出すことで、

  • サービスを増やす
  • 人を雇う
  • 利用者に還元する

ことができます。

数字を見ることは、現場を壊すことではなく、現場を守ることです。

新しい管理者に最初に調べてほしいのは、この2つです

もしこれからデイサービスの管理者になる人がいるなら、まずこの2つを調べてほしいです。

  • 稼働率
  • 損益分岐点

これは経営の基本です。

ちなみに私の感覚では、稼働率60%以下になると胃が痛くなります。

数字は、現場を追い込むためのものではありません。
現場を守るための指標です。

ぜひ一度、自分の事業所の数字を計算してみてください。

まとめ|黒字ラインを知らない管理者は、静かに経営判断を外していく

デイサービスの稼働率は何%あれば黒字になるのか。

今回の例では、損益分岐点は約58%でした。

ただし、本当に大事なのはその先です。

58%は最低ラインであって、安心できる数字ではないということ。

実際の運営では、特色、人件費、加算体制によって必要な数字は変わります。
だから、現場感覚としては70%以上ほしい。
これはかなりリアルです。

勘違いしやすいのは、数字の話をすると冷たい管理者だと思われることです。

一番危ない見落としは、数字を見ないことが優しさだと思い込むことです。

数字を知らないと、守るべき現場も守れません。
逆に、数字を知っていれば、どこまでなら耐えられるか、どこから危険かを判断できます。

それが管理者の役割だと、私は思っています。


次に読むべき記事
第15話:デイサービスの「稼働率80%の壁」
→ 黒字ラインを超えた後、なぜ8割で止まりやすいのかを続けて読むならこちら。

別角度で読む記事
第25話:「忙しくなるなら利用者はいりません」と言われた日
→ 数字の問題が、現場の温度差としてどう表れるかを見るならこちら。

ハブ記事
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
→ 管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。

ABOUT ME
リハビリデイ管理者
リハビリ特化型デイサービスの現役管理者。 現場運営・稼働率改善・スタッフ管理など、実際のデイサービス経営のリアルを発信しています。 これまで複数のデイサービス事業所で勤務し、稼働率が低迷していた事業所の改善に携わる。 担当した事業所では、稼働率を58.5%から79.8%まで改善。 ケアマネジャーとの関係づくり、紹介数を増やす営業方法、現場オペレーション改善など、 現場経験をもとにした実践的なノウハウをまとめています。 「現場で本当に使えるデイサービス経営」をテーマに、 管理者・生活相談員・デイサービス経営者向けに情報を発信しています。