第15話|デイサービスの「稼働率80%の壁」 本当に見るべきは数字の先だった

デイサービスの管理者をしていると、稼働率80%という数字が気になり始めます。
70%台では物足りない。
でも、80%を超えたら本当に安心なのか。
むしろ現場は苦しくなるのではないか。
そんなふうに感じたことがある管理者は多いはずです。
この記事では、半日型・定員10名×2単位のリハビリ特化型デイを運営してきた私が、年間稼働率79.8%だった2023年を振り返りながら、デイサービスにおける「稼働率80%の壁」の本当の意味を書きます。
結論から言うと、稼働率80%はゴールではありません。
次の手を打てる管理者かどうかが試される、経営の分岐点です。
2023年、年間稼働率79.8%まで来て見えたもの
2023年、私のデイサービスの年間稼働率は79.8%でした。
月別で見るとこうです。
- 1月:65%
- 2月:73%
- 3月:82%
- 4月:84%
- 5月:84%
- 6月:82%
- 7月:84%
- 8月:71%
- 9月:81%
- 10月:86%
- 11月:84%
- 12月:83%
年間で見れば、あと0.2%で80%でした。
今でも忘れません。
2023年9月、管理者になって2年目が終わろうとしていた頃です。
3月から7月まで80%を超え、9月から12月も再び80%を超えました。
数字だけ見れば、かなりうまくいっていると言えます。
実際、私は当時こう感じていました。
「ここまで来れば、管理者として認められている」
利用者さんもワイワイしていて楽しそうでした。
職員も生き生きしていた。
現場には手応えがありました。
でも、同時に分かったことがあります。
80%を超えると、別の脆さが見えてくるということです。
なぜ80%に届かなかったのか
2023年に年間80%へ届かなかった最大の理由は、真冬と真夏の落ち込みでした。
1月と2月は、毎年のように利用者さんが減ります。
- 入院
- 体調不良
- 感染症
- 死別
デイサービスの管理者をしていると、真冬は本当に独特です。
私は毎年この時期になると、心の中でこう思っています。
「真冬に死神がいる。頼むから連れて行かないでくれ」
それくらい、1月2月は高齢者が弱る季節です。
そして最近は、真夏も同じくらい怖くなってきました。
2022年頃までは、真夏の体調不良はそこまで大きな差ではありませんでした。
でも年々、夏の酷暑が高齢者の体を削るようになっています。
2023年も8月は71%まで落ちました。
2025年はさらに酷く、7月から9月にかけて倒れる人、体調を崩す人、亡くなる人が増えました。
つまり今のデイサービス経営は、
- 真冬の死別・入院リスク
- 真夏の熱中症・体調不良リスク
この二重の季節リスクを前提に考えないといけません。
昔のように「冬だけ気をつければいい」という時代ではなくなっています。
稼働率80%を超えると何が起きるのか
私のデイサービスは、午前10名・午後10名の2単位です。
- 午前:9時〜12時
- 午後:13時30分〜16時30分
- 平日のみ営業
つまり、1日最大20名。
1週間で考えると、最大100マスです。
この100マスのうち、80%を超えるということは、利用マスがかなり埋まっている状態です。
ここで何が起きるか。
まず、得意のケアマネさんからの無理なお願いに応えにくくなります。
- 遠い場所の送迎
- 希望曜日の利用
- 早急な体験利用
- イレギュラーな介助量が多いケース
こういう案件に対して、空きが少ないと対応できません。
するとケアマネさんの頭の中で、少しずつこう記憶されていきます。
「あそこはいつもいっぱいで入りにくい」
この記憶は怖いです。
なぜなら、真冬や真夏に利用者が一気に減った時、その時点で紹介の入口が細くなっているからです。
さらに、現場も確実にバタつきます。
- 職員が急に休むと送迎が回らない
- 介護度が高い利用者が重なるとトイレが詰まる
- 利用者同士の相性問題が増える
- 器具が埋まり、運動案内が滞る
- 管理者が現場に入り、書類が止まる
私のデイは小規模で、トイレも1つしかありません。
介助量が多い日には、トイレ介助の順番待ちができます。
焦らせるわけにはいかない。
でも、ゆっくりもできない。
外から見ると平和でも、内側ではかなり神経を使っています。
それでも80%を目指した方がいい理由
ここまで読むと、
「じゃあ80%を超えない方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
でも、私はそうは思っていません。
80%を目指すこと自体は大事です。
なぜなら、目標が低いと次の手が打てなくなるからです。
稼働率が低いとどうなるか。
- 利用者さんは「寂しいね」と言い始める
- 職員は「こんなもんでいいだろう」という空気になる
- 現場に緊張感がなくなる
- 技術もコミュニケーションも伸びにくい
逆に、80%を超えると忙しくはなります。
でも利用者さんはワイワイして、楽しそうです。
職員も仕事している感が出て、生き生きしてきます。
実際、私のデイでもそうでした。
忙しい。
でも、現場に活気が出る。
職員同士の情報共有も増える。
事故を起こさない意識も高まる。
介護スキルもコミュニケーションスキルも上がる。
社長に新しい運動器具を買ってもらえたのも、稼働率が上がって「次の投資」ができる状態になったからです。
80%は単なる数字ではなく、現場の質を上げるための圧力でもあるのです。
80%を超えて見えた「構造の弱点」
私が思うに、稼働率80%の壁とは、
「ここから先、管理者として本当に腕が問われるライン」
です。
80%を超えること自体は大事。
でも、それで現場が回らないなら、ただの自己満足です。
- 送迎をどう組み替えるか
- 介助の導線をどう整理するか
- 利用者同士のトラブルをどう散らすか
- 書類と現場をどう両立するか
- 紹介を止めないための余白をどう残すか
そこまで考えて初めて、80%は意味を持ちます。
実際、私の現場でもそこを変えました。
それまでは、職員1人が利用者さん1人を機械や運動に案内し、終わったら次の利用者さんへ、という1対1の回し方が中心でした。
でも、稼働率が80%を超えてくると、それでは回らなくなります。
そこで取り入れたのが、
- 1人で10人を見る集団体操
- 1人で5人を見る小集団での運動
です。
少ない職員数でも多くの利用者さんに必要な運動を同時に提供できるようになり、現場にかなり余裕が生まれました。
忙しくなったから気合いで頑張るのではなく、回し方そのものを変える。
これが、80%を超えた時に最初にやるべきことだと今は思っています。
施設利用者の割合は「静かな爆弾」になる
もう一つ、管理者として気をつけていることがあります。
それは、施設入居者の割合です。
例えば、95マス埋まっている中で20マスが施設入居者だとします。
この状態で施設内でコロナが出れば、外出自粛で一気に20マス落ちることがあります。
これは本当に大きいです。
だから私は、施設利用者の比率を見ています。
ただし、本音を言えば、稼働率が75%未満ならそんなことも言っていられません。
どんどん入ってもらわないと経営が苦しい。
でも、その積み上げが後で大きな爆弾になるかもしれない。
この怖さは、デイの管理者をやっている人なら分かると思います。
私が数字を見る時、稼働率そのものだけではなく、その中身も見ています。
例えば、80%に届くまでは長距離送迎の利用者さんもかなり受けていました。片道1時間かかる人もいました。
ただ、これが増えすぎると、送迎だけで現場全体が苦しくなります。
もう一つ見ているのが、施設入居者の割合です。
感覚としては、これが3割を超えるとちょっと危ないと感じます。
施設利用者さんは、感染症や施設都合で一気に利用が止まることがあるからです。
稼働率は高く見えていても、内訳が偏っていると、その数字は安定ではなく脆さになります。
本当に見るべきなのは、80%の先です
今振り返ると、80%を超えた時に本当に見るべきなのは、数字そのものではありません。
- 曜日の偏りはないか
- 送迎距離が伸びすぎていないか
- 介助量の重い利用者が一部時間帯に固まりすぎていないか
- 施設利用者の割合が高くなりすぎていないか
- 職員が静かに疲れているサインを見落としていないか
昔の私は、80%に届くかどうかばかり見ていました。
でも今なら分かります。
本当に大事なのは、80%を超えたあとに壊れない構造を先に作っておくことです。
まとめ|80%はゴールではなく、管理者の力が試される数字
デイサービスの稼働率80%は、達成したら終わりのゴールではありません。
- 冬に落ちる
- 夏にも落ちる
- 施設比率が高いと一気に崩れる
- 現場は忙しくなり、管理業務も詰まる
それでも私は、80%を目指した方がいいと思っています。
なぜなら、稼働率が低い現場は、利用者も職員も元気を失いやすいからです。
逆に80%を超えると、利用者さんは楽しそうになり、職員も伸びます。
だからこそ大事なのは、
80%を超えた時に壊れない構造を作れるかどうか
です。
そこが、管理者の力の見せ所です。
もし今、70%台で伸び悩んでいる管理者がいるなら、まずは80%を目指してください。
そして、80%を超えたら次はこう考えてください。
「この忙しさを、どうやって構造で乗りこなすか」
それができた時、稼働率はただの数字ではなく、現場を強くする武器になります。
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第20話:定員10名デイの売上リアル
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第22話:デイサービスはなぜ水曜だけ埋まらないのか?
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リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
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