第37話|新人が辞める瞬間 育成の失敗はどこで起きるのか

デイサービスの管理をしていると、
新人が辞める時は、ある日突然に見えることがあります。
でも実際には、辞める直前に何かが起きるというより、
最初の入口の時点で、もう危ない流れが始まっていることの方が多いです。
- 教えても入らない
- 注意すると黙る
- 現場がざわつく
- でも、なぜか強く切れない
そんな状態が続いて、最後は
「他にいい職場が見つかったので辞めます」
で終わる。
今回は、僕が
「育成の失敗は、育て方だけで起きるんじゃない」
とかなりはっきり学んだ新人職員の話を書きます。
結論から言うと、
採用の入口を曖昧にした時点で、育成は壊れやすくなる
ということでした。
社長の友達が、面接なしで入ってきた
その新人は、40代後半の女性介護職でした。
パートとして入職してきました。
体は大きく、介護経験もある。
社長の友達でもありました。
当時は職員不足があり、体調不良なども重なっていて、現場はかなり人を欲していました。
でも、時期が悪かったのか、募集を出してもなかなか来てくれなかった。
そんな中で、社長が
「友達を連れてきた」
という形で入ってきた人でした。
正直、最初はかなり期待していました。
- 体格もある
- 介護経験もある
- これは即戦力になるかもしれない
そう思っていました。
ただ一方で、社長の友達で、しかも面接なし。
ここには、最初から少し怖さもありました。
僕にとっては、
「本当にこの人をフラットに見られるのか」
という不安があったんです。
今振り返ると、その時の直感は当たっていました。
サインは最初から出ていた
この人の問題は、途中から崩れたことではありません。
最初からサインは出ていました。
まず、メモを取らない。
教えても覚えない。
送迎車の運転も荒い。
さらに介護職は、本来利用者さんの話を聞くことが多い仕事です。
でもこの人は、自分の話をかなり利用者さんにしていました。
要するに、利用者さんの話を聞くより、
自分の話を聞いてほしいタイプだったんだと思います。
しかも表情は固い。
笑顔も少ない。
注意すると、すぐ黙る。
暗い顔になる。
つまり、一般的な意味での「新人らしい不器用さ」というより、
最初から現場との相性の悪さがかなり出ていたんです。
ただ、それでもすぐに切れなかった。
社長の友達だったからです。
ここが大きかった。
注意すると、黙って暗くなる
この人は、注意した時の反応もかなり特徴的でした。
僕が何かを指摘すると、急に黙るんです。
表情も暗くなる。
返事もしなくなる。
あとで社長に確認すると、精神疾患を抱えている人だということが分かりました。
もちろん、精神疾患があること自体を問題にしたいわけではありません。
そこに対して差別的な考えを持っているわけでもありません。
むしろ、そうならそうで、
最初からそれを踏まえた対応が必要だったと思っています。
僕は以前の職場で、精神疾患を複数抱えた後輩職員のメンターをしたことがあります。
その時は、本人からかなり危うい発言もあり、すぐ上司へ報告して組織で対応しました。
だから今回も、
「対応できないわけじゃない」
とは思っていました。
ただ問題は、今回のケースではそれが採用前に共有されていなかったことです。
最初から必要な配慮が分からないまま現場に入る。
それは本人にとってもしんどいし、現場にとっても危ない。
現場は、管理者より先に「危ない」と察知していた
この件で印象的だったのは、他の職員の反応でした。
僕に、個別で相談が次々に来たんです。
- あの新人の女性は本当に危ないから気をつけてください
- 自分の話しかしなくて、利用者さんが苦笑いしていました
- フォローするのがなかなか難しいです
こういう声が、1か月の間にたくさん上がってきました。
現場はやっぱり早いです。
管理者が理屈で整理する前に、
「この人は危ない」
を空気で感じています。
しかもこの時点では、まだ大きな事故やトラブルにはなっていません。
でも、もう全職員が
「このままだと危ない」
と感じていた。
つまり、新人が辞めるサインというのは、本人の中だけに出るわけじゃない。
周囲の職員の違和感として先に出ることがある
ということです。
1か月で限界は見えていた。でも切れなかった
正直に言うと、僕はもう1か月で
「この人を育てるのはかなり厳しい」
と思っていました。
でも、大きな問題にはまだ発展していない。
しかも社長の友達。
無下にもできない。
だから僕は、自分がつきっきりで新人研修をすることにしました。
ここも管理者としては苦しいところです。
まだ育てられるかもしれない。
でももう危ない。
その間で、余計に時間と労力を使うことになる。
ただ、この時の僕にはまだ
「もしかしたら立て直せるかもしれない」
という思いがありました。
だから完全に切れなかった。
でも今振り返ると、あの時点で見えていた限界は、たぶん正しかったです。
結局、半年後にLINEで辞めていった
結局その人は、半年後に辞めました。
しかも退職の連絡は、
「他にいい職場が見つかったので辞めます」
というLINEでした。
この終わり方も含めて、かなり象徴的だと思っています。
要するに、最後まで関係は深くならなかった。
現場の中で根を張れなかった。
だから、より合う場所があればそちらへ行く。
それ自体は仕方ないです。
でも僕の中では、この件でかなりはっきりしたことがありました。
育成がうまくいかなかったというより、採用の入口の時点で負けていた。
そういう感覚です。
この件のあと、採用のルールを変えた
この件以降、僕はルールを変えました。
どんな関係性の人でも、必ず自分の面接を受けてもらう。
これを徹底するようにしました。
社長にも、その方針ははっきり伝えました。
紹介で入る人ほど、現場での役割や最低限の基準を最初に共有しないと危ないと説明し、最終的にはそのルールで進める形になりました。
友人づて、知り合いづて、紹介。
そういうルートが悪いわけではありません。
むしろ、最初から信頼がある分、強い面もあります。
でもその分、甘く見てしまうこともある。
言わなければいけないことが言いにくくなることもある。
それは、管理者としてかなり危ないです。
だから今は、社長の紹介であっても
「現場を守るために、必ず自分が面接する」
という形にしています。
不採用にするためというより、
現場での役割や最低限の基準を最初に共有するためです。
ここを入れないと、結局しわ寄せは全部現場に来るからです。
紹介採用だけに頼ると、現場は守れない
この件を通して、もう一つ強く思ったことがあります。
紹介採用だけに頼るのは危ないということです。
友人ルートや知人ルートは、早いです。
信頼もあるように見えます。
でもその分、最初から関係性のしがらみが入る。
すると、
- 面接が甘くなる
- 問題を言いにくい
- 現場で違和感があっても切りにくい
- 結果として育成より先に現場が疲弊する
こうなりやすい。
だから今は、求人サイトのような外部の採用ルートを持っておくことをかなり大事にしています。
求人サイト経由の人の方が、まだフラットに見られます。
面接もできる。
条件も確認できる。
自分の責任も明確になる。
現場を守るには、誰かの紹介しかない状態から抜けることも必要でした。
今後は、面接で必ず確認していることや、紹介採用で失敗しないための基準も、別記事でまとめていく予定です。
新人育成の失敗は、「教え方」だけでは起きない
今回の件で見えたのは、新人育成の失敗は教え方だけでは起きないということです。
もちろん、現場の教え方、フォローの仕方、メンターの質も大事です。
でも、それ以前に
- 採用時の見極め
- 事前共有
- 関係性のしがらみ
- 最初に言うべきことを言えるか
ここが整っていないと、育成はかなり苦しくなります。
つまり、新人が辞める瞬間は、育成の途中で突然生まれるんじゃない。
最初の入口で、もう流れは決まっていることがある。
ここを見誤ると、管理者はかなり消耗します。
まとめ|新人が辞める瞬間は、入口の曖昧さから始まる
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
新人が辞める瞬間は、辞める直前に突然起きるわけではありません。入口が曖昧だった時点で、もう始まっていることがあります。
今回のケースでは、
- 社長の友達という関係性
- 面接なし
- 事前情報の不足
- 最初から出ていたサイン
- 注意しにくさ
- 現場の違和感
この全部が重なっていました。
以前は、入ってから教えれば何とかなると思っていた。
でも今は、
採用の入口を曖昧にした時点で、育成は壊れやすくなる
と考えています。
そしてもう一つ。
新人が危ないサインは、元気がなくなることだけじゃない。
- 表情の固さ
- メモを取らない
- 注意すると黙る
- 利用者との距離感のズレ
- 周囲の職員の違和感
そういう形でも出ます。
だから今は、本人だけを見るのではなく、
周囲の職員がその新人をどう感じているか
もかなり重視するようになりました。
育成は現場でやるものです。
でも採用の入口は、管理者が守らないといけない。
それをかなり痛く学んだ出来事でした。
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第36話:職員メンタル崩壊が起きる前に管理者が見ているサイン|辞める直前は静かに始まる
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第34話:利用者のわがままと支援の境界|寄り添うことが現場を壊す瞬間
→ 個人への配慮と、現場全体を守る線引きを続けて見たい方へ。
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
→ 人材管理・現場改善・制度対応まで、管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。



