有給中でも、電話は鳴ります。

管理者をしていると、
休みの日でも、
頭のどこかで現場が動いています。

僕もそうでした。

でも、ある時ふと思ったんです。

「この電話、自分が出られなかったらどうなるんやろ」

その時に見えたのは、単なる忙しさではありませんでした。

この施設、僕がいなくなった瞬間に止まる仕事が多すぎる。

小さい会社や、小さいデイサービスでは、どうしてもできる人に仕事が集まります。

人を何人も採用できるわけじゃない。
教える余裕もない。
結局、できる人がやる。

それ自体は珍しいことではありません。

僕のデイサービスもそうでした。

でも、今振り返ると、本当に怖かったのは「仕事が偏っていたこと」ではありません。

本当に怖かったのは、その仕事の中身が、僕以外には見えなくなっていたことでした。

デイサービスのブラックボックス化で本当に危ないのは、夜に残業が出ることではなく、中身が見えず、止まっても気づけず、提出や請求まで止まる構造だと示した比較図
怖いのは忙しさそのものではなく、止まっても誰も気づけない状態です。

計画書。
LIFE。
リハプランの操作。
家族対応。
ケアマネ連絡。
実績請求前チェック。

一言で言うと、ほとんどの仕事がブラックボックス化していて、管理者である僕に100%属人化していました。

もし今、僕が交通事故で死んだら。
このデイサービスも、かなりの確率で止まります。

今回は、その話を書きます。

49話で書いたのは、属人化の「前兆」でした。
今回はその一歩先です。

中身が見えないまま回っている仕事が、なぜ施設を壊すのか。

そこを、僕の現場の実例で書きます。

一言で言うと、ほとんどの仕事が僕に集中していた

今、弊社で僕しか分からない仕事はかなり多いです。

  • 計画書の作成
  • LIFEの管理
  • リハプランの操作方法
  • 家族対応の判断
  • ケアマネ連絡
  • 実績請求前チェック

唯一、送迎表の作成だけは右腕ができます。

それ以外は、かなり危ない状態です。

情報の大半は僕のパソコンと、リハプランのクラウド上にあります。
そのことを知っているのも、僕の右腕だけです。

もちろん、僕はビビりなので、データのバックアップ自体はかなり慎重にやっています。

  • 僕のパソコン
  • Dropbox
  • 外付けハードディスク
  • 右腕のパソコン

この4か所に、週1回バックアップを取っています。

かなり慎重です。笑

でも、今思うのは、バックアップを4重にしていても安心ではなかったということです。

なぜなら、問題はデータの保存先じゃないからです。

問題は、そのデータをどう扱うか、いつ何を提出するか、どこを見ると危ないかという判断の中身が、僕の頭の中にしかなかったことでした。

LIFEの怖さは、送らなくてもすぐには止まらないことだった

たとえばLIFEです。

リハプランの操作方法は、もちろん誰も分かりませんでした。
そもそも、LIFEに提出する時期やルールも、僕以外は分かっていませんでした。

以前は、機能訓練士にLIFE管理を任せていた時期もあります。

でも、それができていませんでした。

不十分な情報をLIFEに送っていたことがあとで分かった時は、本当に青ざめました。

特に怖いのは、科学的介護推進体制加算です。

これ、送るのを忘れたら、その月の請求が全部止まる可能性があります。

利用者さんにも迷惑がかかる。
ケアマネにも迷惑がかかる。

でも、もっと怖いのは別のところでした。

LIFEって、送らなくてもすぐに大きな警告が出るわけじゃない。

そのまま日々が流れていく。
請求もしてしまう。
でも、あとで返戻になる。

これが本当に怖い。

もし僕が突然倒れたら、LIFEが送れない。
請求関係が止まる。
しかも、僕が倒れている間、誰も気づかないまま返戻が積み上がる可能性もある。

それを想像すると、かなり怖いです。

家族対応も、実は判断基準がブラックボックスだった

ブラックボックス化していたのは、LIFEだけではありません。

家族対応もそうでした。

「こういう時、どう判断するか」
「どこまで説明するか」
「何を先に伝えるか」
「どこからはケアマネや医療につなぐか」

このあたりの基準も、僕以外はほとんど持っていませんでした。

つまり、家族対応の怖さは、単に電話をかけられるかどうかじゃないんです。

どのタイミングで、何を、どういう順番で伝えるかが見えていないことです。

請求前チェックも同じでした。

どこの数字とどこの数字を突き合わせるのか。
どこを見落とすと事故るのか。
どのズレが危険信号なのか。

そこを分かっている人がいない。

こういう状態って、普段は回ってしまうんです。

だから余計に怖い。

「教える時間がなかった」は、半分本音で半分きれいごとだった

ここ、かなり正直に書きます。

こういう話をすると、
「教える時間がなかったんですね」
で終わりそうになります。

たしかに、それもあります。

でも、本音を言うと、それだけじゃありませんでした。

教えてもいいと思える能力がある人がいなかった。

これも現実でした。

厳しい言い方になりますが、できない人に教えたところで、それが育つわけでもなく、ミスが増えるだけ、という感覚があったんです。

たとえば、この介護業界って、本当にパソコン操作が苦手な人がいます。

本当の話かと思うくらい、パソコンに拒否反応がある人もいました。

そこから教えないといけない。
しかも、日々の現場は止まらない。

簡単な例で言うと、今スタッフにはパソコンで勤務時間を入れてもらっています。

操作を教える。
でも、1か月後に「教えてもらってない」と言ってやらない。

そんなことが、実際にあります。

こういう現場で、LIFEや請求前チェックや計画書作成を引き継ぐというのは、きれいごとでは済みませんでした。

ブラックボックス化は、責任感が強い人ほど起こしやすい

今、主に仕事を抱えているのは僕です。
管理者です。

自分でも思うし、他人からも言われますが、僕は責任感が強いです。
強すぎるくらい強い。

どれくらい強いかというと、たとえばシングルマザーの介護士さんがいたら、
「この人が介護福祉士に合格して、ここを辞めてもどこでも通用する介護者になってほしい」
と本気で思ってしまう。

その人の人生を背負うような気持ちになるんです。

そこまで背負わなくていいのに。
そう思いながらも、思ってしまう。

たぶん、ブラックボックス化って、無責任な人の現場で起きるわけじゃありません。

むしろ逆で、責任感が強い人が、止めたくない、事故らせたくない、迷惑をかけたくないと思い続けた先で起きる。

僕の場合もそうでした。

  • 僕以外にできる人がいない
  • 教えても覚えられない
  • 力に差がありすぎる
  • LIFEのような業務は、基礎にPC操作と理解力が必要
  • 急ぎ対応も多い

そうなると、結局「自分がやる」が一番事故らない。

その積み重ねで、こうなるべくして100%依存構造になりました。

怖いのは、仕事が偏っていることじゃない

ここまで書いてきて、僕が今思うのはこれです。

ブラックボックス化の怖さは、仕事が偏っていることじゃありません。

忙しいことでもありません。

本当に怖いのは、その人がいなくなった瞬間に、提出も請求も連絡も判断も止まるのに、止まったことにすらすぐ気づけないことです。

特にLIFEのように、やらなくてもすぐ警告が出ない仕事は危ない。

日々は普通に流れます。
でも、あとで返戻になる。

それが一番怖い。

じゃあ、どうやって壊し始めたのか

デイサービスでブラックボックス化した業務を壊すために、棚卸し、責任者設定、締切、見える化、再現可能な形への変換を5段階で示した図  【キャプション】
いきなり全部引き継ぐのではなく、まずは見える形にしてから再現できるようにしていきます。

ここで終わると、ただの恐怖記事になります。

だから、今やっていることも書きます。

僕が最初にやったのは、全部の業務を棚卸しすることでした。

  • 日々の業務
  • 雑務
  • 締め切りがあるもの
  • 誰がやるべきか
  • 誰の責任か

これを、チェックリストと業務日誌の形で整理しました。

そして、

  • 全ての業務に責任者をつける
  • 全ての業務に締め切りをつける
  • 出勤中の誰がやるかを明確にする

ここまで落としました。

これは、今かなりうまく回っています。

できなかった人がいた時も、
「なんでできないんだ」
でぶつかるのではなく、
「どうしたらできるようになるか」
を考えるようにしています。

感情的にぶつからず、行動を変えて問題を解決する。

そこはかなり意識しています。

うまくいかなかったのは、右腕に集中させすぎたことだった

ただ、反省もあります。

うまくいかなかったのは、右腕の人に仕事を集中させすぎたことです。

ブラックボックスを壊そうとして、次の1人に集中させてしまった。

これは反省しました。

だから今は、1個ずつ覚えてもらうステップを作っています。

今年はまず、右腕に介護福祉士試験に挑戦してもらって、合格してもらう作戦です。

いきなり全部を渡すのではなく、まず土台を作る。

そこをかなり意識しています。

今やっているのは、「全部理解」ではなく「スイッチ作り」

今のフェーズは、計画書を誰でも作成できるようにすることです。

そのために、ChatGPTやAIを使う方法を考えています。

カスタムGPTを作って、

  • リハプランのこと
  • 日々の業務のこと
  • 計画書作成に必要な情報
  • 操作の流れ

を全部プロンプトとして覚え込ませる。

その上で、

「計画書を作成したいんだけど、リハプランのどこを触ればいいか」

と聞けば、必要な操作を教えてくれるようにする。

今やっているのは、そういう仕組みです。

例えて言うなら、部屋に明かりをつける時に、電気の構造まで理解しなくていい、ということです。

ただ、スイッチを押せばいい。
それだけ分かればいい。

僕が今やっているのは、まさにその「スイッチ作り」です。

全部の専門性を移植するのではなく、再現に必要な最小操作だけを渡す。

それができれば、引き継ぎの前提能力が足りない現場でも、少しずつ再現性を作れます。

小さい会社ほど、棚卸しから始めた方がいい

小さい会社や小さいデイサービスって、どうしてもこの形になりがちです。

そんなに人を採用できない。
だから、できる人がやる。
そうすると、その人に集中する。

それ自体は自然です。

でも、それをやっているのは人間です。

人間は、いつどうなるか分からない。

だから、本当はとてもリスクが高い。

そして、最初に「どこを見ろ」と言われても、正直1個ではないんです。

LIFEだけ見てもだめ。
請求だけ見てもだめ。
家族対応だけ見てもだめ。

どの業務が、どんな流れで回っているのかを見ないといけない。

ただし、もし科学的介護推進体制加算のように、体制に関わる加算を算定しているなら、そこは重点的に見た方がいいです。

止まった時のダメージが大きいからです。

最初の一歩は、全部リストアップすることだった

今、同じように「その人しか分からない仕事」を抱えている管理者に、僕が最初に1つ言うならこれです。

どれか1個の仕事を見るんじゃなくて、今、自分が何を抱えているのかを全部リストアップしてください。

全部です。

  • 何の業務があるのか
  • どういう順番で流れているのか
  • 締め切りは何か
  • 誰がやるのか
  • 誰の責任か
  • 止まったら何が起きるのか

そこまで棚卸しする。

それが最初の一歩です。

ブラックボックスを壊すって、いきなり全部教えることじゃありません。

まずは、見えていない仕事を見えるようにすることです。

まとめ

ブラックボックス化の本当の怖さは、仕事が偏っていることではありません。

その人が倒れた瞬間に、提出も請求も連絡も判断も止まるのに、止まったことにすらすぐ気づけないことです。

特にLIFEのように、送らなくてもすぐ警告が出ない業務は危ない。

しかも、この構造は無責任だから起きるわけではありません。

小さい現場で、責任感が強い人が、事故を起こさないように抱え込み続けた先で起きます。

だから、責めるべきは人ではなく構造です。

そして最初にやるべきことは、誰かを責めることでも、いきなり全部教え込むことでもありません。

今、自分たちが何を抱えているかを全部棚卸しすることです。

そこから、責任者を決める。
締め切りをつける。
チェックリスト化する。
最後は、誰でも押せるスイッチを作る。

僕は今、そのフェーズにいます。


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リハビリデイ管理者
リハビリ特化型デイサービスの現役管理者。 現場運営・稼働率改善・スタッフ管理など、実際のデイサービス経営のリアルを発信しています。 これまで複数のデイサービス事業所で勤務し、稼働率が低迷していた事業所の改善に携わる。 担当した事業所では、稼働率を58.5%から79.8%まで改善。 ケアマネジャーとの関係づくり、紹介数を増やす営業方法、現場オペレーション改善など、 現場経験をもとにした実践的なノウハウをまとめています。 「現場で本当に使えるデイサービス経営」をテーマに、 管理者・生活相談員・デイサービス経営者向けに情報を発信しています。