第40話|看護師がいないと回らない日 デイで急変が重なった時の空気

リハビリ特化型デイサービスをやっていると、
看護師がいる意味を強く感じる日があります。
普段は、服薬確認や健康相談、体調観察。
それだけでも十分大事です。
でも本当に怖いのは、
「一見そこまで悪く見えない」
ところから、急変へ向かう時です。
しかも今のうちのデイサービスは、登録利用者55名ほどのうち、約70%が85歳以上です。
要介護も約60%。
利用者の高齢化がかなり進んでいます。
こうなると、小さな変化が大きな病気につながることがあります。
- 腹痛に見えても、違う
- ふらつきに見えても、違う
- 冷や汗や震えが、ただの体調不良では終わらない
今回は、僕が
「これは看護師がいないと回らない」
と強く思った急変対応の話を書きます。
最初は「胃が痛い」だった
この方は、90代の女性。
認知症がありました。
朝、迎えに行った時から、少し呼吸が荒かったんです。
その時点では、まだ何とも言い切れない感じでした。
9時にデイサービスへ着いてから、今度は
「胃が痛いよ」
と言い始めました。
呼吸が荒い。
胃が痛い。
でも、最初のバイタルはそこまで悪くなかった。
だから、最初は胃腸炎のようなものも疑っていました。
ただ、看護師にはその時点で横についてもらっていました。
- 最近どうだったか
- どこがしんどいのか
- どう変わっていくか
そのまま様子観察をしてもらっていたんです。
ここがかなり大きかったと思っています。
10時に空気が変わった
10時頃、もう一度バイタルを測りました。
その時、脈拍が120。
頻脈でした。
さらに、SpO2も下がってきた。
冷や汗も出てきた。
ここで一気に空気が変わりました。
最初は胃の不調に見えていたものが、
「これは心筋梗塞の可能性がある」
という話になってきたんです。
そのままベッドに横になってもらい、家族へ連絡。
そして救急搬送の判断を取りました。
救急隊が来た時も、看護師がその場の経過をすぐに申し送れたのは大きかったです。
最初の訴え、途中の変化、脈拍やSpO2の推移を短く整理して渡せるだけで、現場の空気はかなり変わります。
この流れって、後から見れば
「ああ、危なかったんだな」
と思えます。
でも、その場では最初からは分からないんです。
だからこそ、看護師が横について、途中の変化を拾ってくれたことが大きかった。
正直、1年前の看護師がいない体制だったら、
「家で様子を見てもらおうか」
で終わっていた可能性があります。
そう考えると、かなり怖いです。
「見た目が悪い」という感覚を、判断につなげられるか
もう一つ、直近で強く印象に残っているケースがあります。
80代の男性。
大柄で、甘いものもお酒もタバコも好き。
大工さんをしていた方です。
この方は、80代の奥さんと2人暮らしでした。
でも直近で奥さんが施設に入居し、1人暮らしになっていました。
もともと乱れていた食生活が、さらに悪くなっていった。
金銭的にも余裕はない。
それでもお酒は飲んでいた。
以前から僕はケアマネに、
「この人はちょっと病気になりやすい。気をつけてください」
と伝えていました。
その方がデイへ来た時、明らかに様子が悪かったんです。
- 震えている
- 冷や汗をかいている
- 表情が硬い
- ふらついて歩く
バイタル自体は、そこまで悪くありませんでした。
でも、見た感じが悪い。
だからベッドに横になってもらいました。
その後、だんだん意識がもうろうとしてきた。
その時は夏だったので、熱中症の可能性も疑いました。
看護師からの要請で、救急搬送の手順を取っています。
このケースも、数字だけでは拾いにくい部分がありました。
だからこそ、看護師判断が大きかったです。
「見た目が悪い」を、そのまま危険信号として扱えるかどうか。
そこがかなり大きいと思っています。
急変の時、一番きついのは「その人だけ」を見ていられないこと
急変対応で何が一番きついかというと、その人だけに集中できないことです。
当然、急変した利用者さんは最優先です。
でもデイのフロアには、他の利用者さんもいます。
今回の時も、他の介護職員がすぐに動いてくれていました。
- 他の利用者さんが心配しすぎないように声をかける
- 転倒リスクが上がらないように見守る
- いつも仲の良い利用者さんが不安にならないように対応する
急変した利用者さんの周りだけじゃなく、フロア全体の空気を守ってくれていたんです。
やっぱり、仲の良かった利用者さんが苦しそうにしていたら、他の人も心配します。
空気は重くなります。
しかも、
- 家族連絡
- 救急搬送の準備
- その場の判断
もある。
ちょうどこの時は、ご家族も休みの日だったようで、すぐに飛んできてくれました。
これはかなり助かりました。
85歳以上が7割のデイでは、「小さい変化」で止まれない
今のうちのデイサービスは、利用者55名のうち約70%が85歳以上です。
この状態だと、小さい変化でも見逃せません。
- 腹痛だと思ったら、心筋梗塞につながる
- ふらつきだと思ったら、熱中症や代謝異常かもしれない
- 冷や汗だと思ったら、循環器系の問題かもしれない
今の僕は、
小さい変化でも看護師判断は入れた方がいい
と思っています。
これは今の状態だから言えることでもあります。
小さいデイサービスは、限られた人員の中で、
- 看護師を入れるか
- リハビリ専門職を入れるか
かなり迷うと思います。
でも、うちのように高齢化が進んだデイサービスでは、看護師が適切だと思っています。
リハビリの質も大事です。
でも、その前に命を守らないと意味がない。
高齢化したデイでは、「機能改善」より先に「急変を拾える体制」が要ります。
以前は「医療的な判断が遅いデイ」だった
この件で、看護師の役割の見方はかなり変わりました。
以前は、看護師がいない、医療的な判断が遅いデイサービスだったと思います。
介護職や管理者だけで見ていて、
「様子を見ようか」
で終わることもあった。
でも今は違います。
登録利用者55名のうち70%が85歳以上という、かなり高齢化したデイサービスになった。
だから看護師に入ってもらっている。
今では、小さな変化でも大きな病気につながることを、すぐに拾えるリハビリ特化型デイサービスになりました。
これはかなり大きい変化です。
まとめ|看護師がいる意味は「安心感」より「判断速度」だった
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
看護師がデイサービスにいる意味は、安心感だけではありません。
本当の意味は、判断速度です。
- 最初は胃痛に見える
- 最初はふらつきに見える
- バイタルがそこまで悪くないこともある
でも、その途中で
「これは危ない」
と見抜けるかどうかで、命が変わることがあります。
以前は、看護師がいない医療判断の遅いデイサービスだった。
でも今は、
小さな変化でも大きな病気につながる前に拾えるデイサービス
を目指しています。
高齢化したデイサービスでは、看護師の役割は補助ではありません。
現場を回すための中核だと、今は思っています。
看護師がいる意味は、「安心感」よりも「危ない方向へ傾く途中で止まれること」でした。
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