第41話|利用者が急に来なくなる理由|デイサービス管理者が「休み始めたサイン」をどう見るか

デイサービスをやっていると、利用者さんが急に来なくなることがあります。
最初は普通に来ていた。
体験利用も無事に終わった。
本利用にもつながった。
でも、そのあと急に休み始める。
こういう時、表面だけ見れば
「体調不良かな」
「たまたまかな」
で終わります。
でも実際には、急に来なくなる人には、急に来なくなる前のサインがあります。
しかもそのサインは、休み始めてから出るんじゃない。
体験利用の時点で、もう出ていることがある。
今回は、僕が
「この人、たぶん来なくなる」
とかなり早い段階で感じた利用者さんの話を書きます。
そしてそこから見えてきたのは、
利用中止に向かう人は、本人の気持ちだけでなく、家族の事情と温度差まで見ないと読めない
ということでした。
僕は基本、断らないスタンスで5年間やってきた
まず前提として、僕はこの5年間、よほどの医療処置が必要とか、明らかに難しいケースでなければ、ケアマネさんから紹介された利用者さんは基本断らないスタンスでやってきました。
体験利用にも来てもらう。
使ってもらう。
その中で、続けやすくする努力をする。
それが基本です。
ただ、その中でもあります。
体験利用の時点で、
「あ、この人たぶん来なくなるな」
と分かる人が。
もちろん、だからといって最初から断るわけではありません。
僕らの仕事は、そういう人でも入りやすく、続けやすくすることだからです。
でも、続かない人には続かない人の共通点があります。
最初から「来なくなる可能性が高い」と感じた利用者さん
その方は、85歳の男性。
要介護4。
奥さんとの二人暮らしでした。
3か月前に自宅で転倒して右足を骨折し、入院。
2か月後に退院して、デイサービス利用の話になった方です。
もともとは工場勤務。
あまり社交的ではなく、人との関わりは得意ではない。
ただ、手先は器用。
怒りっぽい性格で、老老介護の中、入浴は奥さんが一部介助していました。
ケアマネからこういう情報が来た時点で、僕はもう
「この人、来なくなる可能性は高いな」
と思います。
理由はまず、社交的ではないというところです。
これは分かりやすいです。
社交的じゃない人にとって、デイサービスという場所はかなりしんどいことがあります。
- 知らない人がいる
- 会話がある
- 集団がある
- 人の目がある
僕で例えるなら、カラオケが苦手な人が、知らない人が何人もいる場所で歌わされるようなものです。
あれは苦痛です。
だから、社交性が低い人がデイへ来る時は、それだけでかなり負荷がかかります。
僕は「奥さんが入浴を一部介助している」という一文を見逃さない
もう一つ、僕がかなり重く見るのがこれです。
「老老介護で奥さんが入浴を一部介助している」
この一文です。
これが出てきた時、僕は奥さんの疲労感を読みます。
逆算すると、奥さんは疲れているはずなんです。
自分の時間が欲しいはずなんです。
つまり、この利用には裏の目的としてレスパイトが入っているかもしれない、と読みます。
もちろんレスパイトが悪いわけではありません。
むしろ大事です。
でも、ここで大切なのは、
本人が行きたいのか、家族が行ってほしいのかを分けて見ることです。
このズレが強いと、かなりの確率で後から崩れます。
決定的だったのは、本人より奥さんの方がよく話したことだった
体験利用で迎えに行った時、僕は違和感を感じました。
本人は、あまり話さない。
でも奥さんが、すごく話す。
これがまず引っかかりました。
しかも奥さんの話し方には、
「この人に行ってもらいたい」
という必死さがありました。
僕はこの時点で、
「ああ、やっぱりそうか」
と思いました。
当初の読み通り、奥さんはかなり疲れていて、自分の時間を持ちたいんだろう。
だからデイへ行ってほしい。
でも逆に言うと、本人はたぶん家から出たくない。
デイへ行きたくない。
この温度差がかなり見えていました。
さらに決定的だったのが、出発前に奥さんが笑顔で僕らに言った一言です。
「これでやっと楽になります」
この一言で、ほぼ確信しました。
やっぱりこの利用は、本人の希望より、家族の限界の方が強く乗っている。
つまり本人の中では、最初からデイは前向きな場所ではなかった可能性が高い。
この流れなら、本利用になっても、すぐ休み始めるはずだ。
そこまで予想しました。
体験の時点で、体はもう答えを出していた
こういう方は、体験利用の時点でかなり分かりやすいです。
まず、ガチガチに緊張しています。
体がこわばっている。
表情が暗い、もしくはない。
会話も少ない。
こちらからの声かけすら、苦痛になっている感じがあります。
つまり、デイサービスという場所に体がもう拒否反応を出している。
この方もそうでした。
そして本利用になったあと、最初の1回来て、その後休むようになりました。
ケアマネに聞くと、
「しばらく休ませてあげてください」
という流れになりました。
ここまで来ると、正直かなり厳しいです。
もちろん、僕らの力不足でもあります。
続けやすくできなかった。
そこは事実です。
でも同時に、本人の性格や背景からくる限界もあります。
あまり無理を用意しすぎると、今度は利用者さんが怒ったり、他の利用者さんとトラブルになったりします。
だから、どこまで押すかはすごく難しい。
本人が言う「疲れた」は、体の疲れだけじゃない
この方が体験利用を終えたあと、本人は
「運動していないのに疲れた」
と言いました。
この言葉、かなり重いです。
実際には、体が疲れたというより、
気疲れ
だったんだと思います。
- デイへ行く
- 知らない人がいる
- 会話がある
- 緊張する
- 居場所がない
その全部で疲れてしまった。
一方で、自宅へ送った時には、本人以上に奥さんがよく話しました。
「本当は行きたかったはずなんだけどね」
「頑張ってほしかったんだけどね」
と。
でも、僕の感覚では違いました。
本人はたぶん、本当は行きたくなかった。
だからこそ、体があれだけ固くなっていた。
ケアマネからも、
「頑張ってほしかったんだけどね」
「お宅のデイサービスさんで無理なら他では無理かな」
と言われました。
この言葉も重いです。
でも、無理なものは無理です。
今は「一時的な休み」と「このまま終わる休み」がだいたい分かる
今の僕は、ある程度分かります。
これは一時的な休みなのか。
それとも、このまま利用中止に向かう休みなのか。
特別な病気や入院が理由なら別です。
でもそうじゃないなら、体験利用や本利用の時の表情でかなり読めます。
今回のケースみたいに、
- 体がガチガチ
- 表情が暗い
- 会話が少ない
- 家族の熱量だけが高い
- 本人の納得感が薄い
こういう場合は、このまま利用中止になる休みだと分かります。
逆に、
- 「ここに来たら安心するわ」
- 「楽しかった」
- 「また来たい」
と言っていた人が急に休む。
こういう時は、一時的な休みだなと分かります。
ここはかなり違います。
今は、体験利用の時点で見る項目を頭の中で整理している
もちろん、これを全部紙に書いて判定しているわけではありません。
でも今は、体験利用の時点で、意識して見る項目があります。
- 本人の表情
- 家族の熱量
- 会話の温度差
- 体のこわばり
- 本人と家族のどちらが利用を強く望んでいるか
こういうところです。
属人的な勘だけで終わらせず、
見立ての項目として頭の中では整理する
ようになりました。
そうしないと、来なくなってから毎回同じことで驚くことになるからです。
以前より、「来なくなる人」は早く読めるようになった
以前も今も、基本スタンスは変わっていません。
紹介があれば、まず体験利用に来てもらう。
使ってもらう。
できるだけ続けてもらえるようにする。
それは今も同じです。
ただ、以前よりも
「この人は来なくなるだろうな」
というのは分かるようになりました。
それは悲観ではなく、観察です。
本人の性格。
家族の疲労。
利用の裏目的。
体のこわばり。
会話の温度。
誰が本当にこの利用を望んでいるのか。
そこを見ると、かなり早い段階で見えてきます。
まとめ|利用者が急に来なくなる理由は、休み始める前から出ている
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
利用者が急に来なくなる理由は、急に生まれるわけではありません。休み始める前から、かなり出ています。
今回のケースでは、
- 社交的ではない性格
- 老老介護による奥さんの疲労
- 本人より家族の熱量が高い
- 体験時からの体のこわばり
- 「運動していないのに疲れた」という訴え
この全部が、休み始める前から出ていました。
以前は、来なくなってから理由を考えていた。
でも今は、
来なくなる人は、体験利用の時点でかなり読める
と思っています。
もちろん、それでも体験には来てもらうし、できるだけ続けやすくする努力はします。
でも、本人の納得より家族の希望が強すぎる利用は、やっぱり崩れやすい。
デイサービス管理者としては、
休み始めた後に慌てるより、休み始める前のサインを読むことの方が大事
だと、今は思っています。
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