第43話|リハビリの変化は誰が見つけるのか|介護職が拾う“最初の異変”が訓練を変える

リハビリ特化型デイサービスというと、
「変化を見るのはOTや機能訓練士の仕事」
と思われやすいです。
もちろん、それは間違っていません。
評価や訓練調整の専門性は、やはり大きいです。
でも現場をやっていると、それだけでは回りません。
毎月の体力測定はある。
機能訓練士の評価もある。
それでも、評価の日まで待っていたら遅い変化があります。
その小さな変化を一番最初に拾っているのは、実は介護職だったりします。
今回は、僕が
「リハビリの変化は、専門職の評価日だけで見つかるものじゃない」
と強く感じた利用者さんの話を書きます。
そしてそこで見えたのは、
介護職は脇役ではなく、看護師兼機能訓練士やOTが安全に判断するための“一次情報を拾う専門職”だ
ということでした。
96歳、要介護4。体重と浮腫が動きに直結する利用者さんだった
その方は96歳の女性。
要介護4。
大腿骨骨折の既往があり、うっ血性心不全もある方でした。
施設に入所されていて、認知症もあります。
普段は歩行器で歩いていました。
この方でずっと気になっていたのが、体重変動と下肢浮腫です。
退院後から体重は増えていて、下肢の浮腫も継続していました。
そして現場では、介助の場面で
- いつもより体が重い
- なんとなく動きにくそう
と感じることがありました。
こういう人って、数字だけ見ても分からないことがあります。
逆に、現場で介助している時の重さや遅さの方が、先に違和感として出ることがある。
しかもこの方は施設入所中で、施設へ様子を聞いても詳しいことが分かりにくい。
訪問看護も入っていたけれど、返ってくる情報は
「大きな変わりなし」
程度のことが多かった。
でもこちらとしては、心不全のある方です。
安全に配慮しながら、良いリハビリを提供したい。
そのためには、もっと細かい変化が必要でした。
毎月の体力測定だけでは追いつかない
うちでは毎月体力測定をしています。
それはもちろん大事です。
でも、この方のようなケースでは、それだけでは足りません。
この方は週3回、月曜・水曜・木曜の利用。
そして毎週月曜と木曜に体重を計測していました。
- 体重の変化を見る
- 下肢浮腫の状態を見る
- そこに加えて、現場での様子を見る
具体的には、
- 来所時の動き
- 移動時の重さ
- 排泄介助時のしんどさ
- 立ち上がりの遅さ
- 疲れやすさ
- 息の荒さ
こういう変化が、OTの評価日まで待っていたら遅いと感じました。
だからこの方では、
日々の観察を共有する必要がある
と判断しました。
見ていたのは「歩行」だけではなかった
この方で見ていたのは、単純な歩行の安定性だけではありません。
- 立ち上がり動作
- バランス
- 疲れやすさ
- 体重変化
- 浮腫の状態
- 息の荒さ
- 皮膚状態
- 動作全体の重さ
こういうものを、現場の様子と合わせて見ていました。
特にこの利用者さんの場合は、
体重変化と浮腫が、動作や疲れにどう影響しているか
をかなり意識していました。
つまり、数字だけではなく、
その数字が現場でどう出ているかを見る。
ここがすごく大事でした。
チームノートに書くのは「大きな異常」ではなく「昨日との違い」
うちには、毎日書くチームノートがあります。
介護職、看護師、OTがちょっとした変化を書いて、それに対して機能訓練士がどう指示をするかまで回す記録です。
目的は、利用者の体調変化やリスク、訓練上の課題を職種間で共有し、安全かつ効果的な支援を実施するための情報伝達・指示・観察・対応です。
さらに実施記録にも、日々の変化を書きます。
この方で実際に書いていたのは、たとえばこういうことです。
- 下肢浮腫の継続
- 体重増加
- 動作の重さ
- 疲れやすさ
- 息の荒さ
- 皮膚状態(臀部や股部など)
たとえば記録としては、
「体重前回比+1.0kg、歩行時息切れあり、下肢浮腫持続、移乗時に動作重い」
というような書き方になります。
そして、ただ症状を書くのではなく、
昨日と比べてどうか
いつもと違うか
を意識して記録していました。
ここがかなり大きいです。
介護現場って、異常が出てから書くものと思われがちです。
でも本当に大事なのは、
異常になる前のズレ
なんですよね。
一番最初に拾っていたのは、介護職の一次情報だった
この方のケースで一番大きかったのは、介護職が小さな変化を拾っていたことです。
- 体が重い
- 足の張りが強い
- いつもより動作が遅い
- 疲れやすい
- 息が荒い
こういうのって、介助しながらじゃないと分からないことが多いです。
つまり、よく接しているのが介護職だからこそ、
介護しながら利用者さんの一次情報を拾うことができる。
ここに気づけたのは大きかったです。
僕自身、介護福祉士として5年、介護業界に入って10年になります。
だから分かるんですが、介護職って他の専門職と比べてしまうことがあります。
- 看護師には医療知識がある
- リハ職にはリハビリの専門性がある
特にリハビリ特化型デイでは、リハ職の言葉は強くなりやすい。
「リハビリの先生が言ったことは絶対」
みたいな空気は、やっぱりあります。
そうなると介護職は、自分は脇役なんだと思いやすいんです。
でも本当は違う。
看護職やリハビリ職からすると、自分たちでは見つけきれない一次情報を拾ってくれる介護職は、ものすごく大事な存在
なんです。
一次情報があるから、看護もリハも安全にできる
この方のケースでも、介護職が日々の記録として
- 下肢浮腫の継続
- 体重増加
- 動作の重さ
- 息の荒さ
をチームノートに書いていました。
その情報をもとに、看護師兼機能訓練士が確認し、全身状態や負担のかかり方を再評価した。
そしてOTとも共有し、無理のない運動量への調整や、状態観察の強化につながりました。
さらに、その情報はケアマネや家族にも随時報告していました。
結果として、信頼も強まりました。
ここが大事です。
看護職やリハビリ職は、いつも少し怖がっています。
- これをやって本当にいいのか
- 何か起きた時に責任が取れるのか
と。
特に詳しい情報が少ない時は、なおさら不安になります。
だから本音を言えば、
一次情報は多いほどいい
んです。
その一次情報を一番くれるのが介護職だったりする。
だから、介護職は決して脇役じゃないんです。
実際、こういう情報が上がった時に、
「その情報があったから助かった」
と専門職側が思う場面は本当にあります。
「観察している人」が現場の主役になる
この話で一番伝えたいのは、介護職が看護師やOTみたいにならないといけない、ということではありません。
そうじゃない。
介護職は介護職として、
毎日接しているからこそ拾える変化
を持っています。
- 抱えた時の重さ
- 立ち上がる時の遅さ
- 歩き出しの怖さ
- 息づかい
- 表情
- 声の張り
- 昨日との違い
これって、評価表だけでは見えません。
毎日一緒にいる人にしか分からない。
だから、
観察している人が現場の主役になる
んです。
リハビリ特化型デイでも、それは同じです。
今は「評価結果」より先に「日々の違和感」を見ている
この件のあと、リハ観察の見方はかなり変わりました。
以前は、体力測定や評価結果を基準に見ていました。
でも今は違います。
日々の小さな変化を先に拾い、早めに共有する
見方に変わりました。
そしてその中で、介護職の現場での重要性もはっきり見えるようになりました。
リハビリの変化は、評価用紙の中だけで起きているわけじゃない。
移動の時、トイレの時、立ち上がりの時、息づかいの時、表情の時に、もう始まっている。
そこを拾えるかどうかで、その後の訓練も、安全性も、家族への説明も変わってくる。
今はそう思っています。
まとめ|介護職が拾う“最初の異変”が訓練を変える
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
リハビリの変化は、OTや機能訓練士の評価日だけで見つかるものではありません。むしろ、最初の異変を拾っているのは、毎日接している介護職であることが多いです。
今回のケースでは、
- 体重増加
- 下肢浮腫
- 動作の重さ
- 疲れやすさ
- 息の荒さ
こうした小さな変化を介護職が拾い、チームノートと実施記録に残した。
その一次情報があったからこそ、看護師兼機能訓練士やOTが安全に判断でき、訓練調整にもつながりました。
以前は、体力測定や評価結果を基準に見ていた。
でも今は、
日々の小さな変化を先に拾い、早めに共有することを優先している
に変わりました。
そしてもう一つ。
介護職は脇役ではありません。
介護職が拾う一次情報があるから、看護もリハも、もっと安全に、もっと効果的に提供できる。
今はそう考えています。
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