第8話|デイサービスの稼働率は何%あれば黒字になるのか 管理者が最初に知るべき損益分岐点

デイサービスの管理者をしていると、よく考える数字があります。
「稼働率は何%あれば黒字なのか?」
これは経営を考えるなら、必ず知っておかなければいけない数字です。
でも、現場では意外とこの話がされません。
むしろ、数字の話を出しただけで空気が悪くなることもあります。
今回は、私のデイサービスを例にしながら、稼働率と損益分岐点の話を、できるだけ現場感覚に寄せて書いてみます。
私のデイサービスの基本構造
私のデイサービスは、半日型のデイサービスです。
午前の部
9:00〜12:00(3時間)
定員:10名
午後の部
13:30〜16:30(3時間)
定員:10名
つまり、1日最大20名まで利用できるデイサービスです。
管理者になった当時の空気は、数字を見る雰囲気ではなかった
私が管理者になった2021年、稼働率は58.5%でした。
ただ、当時の現場は数字の話をする空気ではありませんでした。
スタッフ同士で話すのは、利用者のケアやリハビリの話ではなく、別の雑談ばかり。
機能訓練士からの具体的な指示もありませんでした。
そして一番驚いたのは、誰も稼働率を知らなかったことです。
前管理者は稼働率を計算していませんでした。
機能訓練士は、
「今くらいの利用者数が一番いいんですよ」
と言っていました。
でも私は思いました。
「このままではまずい」
その話をすると、スタッフ全員から攻撃されました。
社長も優しい人で、
「スタッフに数字の話をしてはいけない」
と思っていたそうです。
ただ、管理者が数字を見ないまま現場を守るのは無理です。
デイサービスの損益分岐点を実際に計算してみる
では、実際に計算してみます。
例として、地域密着型通所介護の小規模デイを考えます。
条件
- 定員:20名
- 利用単価:5,000円
- 営業日:20日
最大売上
20名 × 5,000円 × 20日
= 200万円
人件費と維持費を足すと、固定費はこうなる
人件費
介護職4名で考えます。
パート3名
1,050円 × 8時間 × 20日
= 16万8,000円 × 3人
常勤1名
= 25万円
介護職人件費合計は、75万4,000円です。
維持費
- 家賃:30万円
- 雑費:10万円
合計40万円です。
つまり、月の固定費は
75万4,000円 + 40万円 = 115万4,000円
この条件なら、損益分岐点は約58%になる
固定費115万4,000円を、最大売上200万円で割ると、
115万4,000円 ÷ 200万円 = 約58%
つまり、稼働率58%を下回ると赤字という計算になります。
この数字だけを見ると、
「58%あれば大丈夫なんだ」
と思うかもしれません。
でも、現場感覚としてはそう単純ではありません。
58%は最低ラインであって、安心ラインではない
ここはかなり大事です。
58%はあくまで最低ラインです。
しかもこれは、何の特色もないデイサービスを前提にした計算です。
もし、
- リハビリ特化
- 作業療法士
- 機能訓練士の強化
などを入れれば、人件費は当然増えます。
つまり、損益分岐点はさらに上がるということです。
だから実際の運営では、70%以上ないと正直しんどいというのが現場の感覚です。
私のデイでも、2023年に79.8%まで上がった時、ようやく安心できました。
稼働率を上げるために一番意識したのは「雰囲気」だった
私が一番意識したのは、デイサービスの雰囲気です。
基本、人は笑顔の多いところに集まります。
うちの利用者さんは、独居で85歳以上の方が多いです。
家でやることはテレビを見るだけ。
表情も硬い。
だからデイに来た時は、笑ってもらうことを一番大事にしました。
「楽しかった」
「また来るね」
と言って帰ってもらう。
それが結果的に、稼働率につながったと思っています。
数字を見ていない管理者は意外と多い
私の経験では、稼働率を見ていない管理者は意外と多いと思います。
特に、雇われ管理者の場合です。
また福祉業界には、
「福祉でお金を稼いではいけない」
という考え方がまだ残っています。
非営利法人ならそれでもいいかもしれません。
でも、株式会社や有限会社は営利法人です。
営利法人で働くなら、売上を上げる責任があります。
利益を出すことで、
- サービスを増やす
- 人を雇う
- 利用者に還元する
ことができます。
数字を見ることは、現場を壊すことではなく、現場を守ることです。
新しい管理者に最初に調べてほしいのは、この2つです
もしこれからデイサービスの管理者になる人がいるなら、まずこの2つを調べてほしいです。
- 稼働率
- 損益分岐点
これは経営の基本です。
ちなみに私の感覚では、稼働率60%以下になると胃が痛くなります。
数字は、現場を追い込むためのものではありません。
現場を守るための指標です。
ぜひ一度、自分の事業所の数字を計算してみてください。
まとめ|黒字ラインを知らない管理者は、静かに経営判断を外していく
デイサービスの稼働率は何%あれば黒字になるのか。
今回の例では、損益分岐点は約58%でした。
ただし、本当に大事なのはその先です。
58%は最低ラインであって、安心できる数字ではないということ。
実際の運営では、特色、人件費、加算体制によって必要な数字は変わります。
だから、現場感覚としては70%以上ほしい。
これはかなりリアルです。
勘違いしやすいのは、数字の話をすると冷たい管理者だと思われることです。
一番危ない見落としは、数字を見ないことが優しさだと思い込むことです。
数字を知らないと、守るべき現場も守れません。
逆に、数字を知っていれば、どこまでなら耐えられるか、どこから危険かを判断できます。
それが管理者の役割だと、私は思っています。
次に読むべき記事
第15話:デイサービスの「稼働率80%の壁」
→ 黒字ラインを超えた後、なぜ8割で止まりやすいのかを続けて読むならこちら。
別角度で読む記事
第25話:「忙しくなるなら利用者はいりません」と言われた日
→ 数字の問題が、現場の温度差としてどう表れるかを見るならこちら。
ハブ記事
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
→ 管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。



