離職面談・退職面談の初動5選|管理者が引き止め前に確認すべきこと

職員から「辞めたい」という話が出た時、管理者が最初にやりたくなることは、たぶん同じです。
なんとか止めたい。
何が不満だったのか知りたい。
条件を変えれば残るのか確認したい。
でも、現場によっては、その順番がもう違います。
特に、直属上司ではなく社長や会長に先に辞意が上がる職場では、管理者のところに話が来た時点で、本人の気持ちはかなり固まっていることがあります。
離職面談・退職面談の初動で大事なのは、いきなり引き止めることではありません。
まず見るべきなのは、
本音がどこで切れたのか。
誰との間で情報が止まったのか。
その人を残すことで、組織の線引きが壊れないか。
この記事では、デイサービス管理者として僕が実際に経験した離職対応をもとに、離職面談・退職面談の初動で管理者が確認すべきことを整理します。
この記事の結論
離職面談の初動で最初にやるべきことは、説得ではありません。
まず確認すべきなのは、
表向きの退職理由と本音のズレ、
辞意が直属上司ではなく別ルートに流れた理由、
引き止めた後に組織が壊れないかです。
辞める話は、最後の一言で始まるのではありません。
その前から、情報・態度・関係性のどこかで切れ始めています。
離職面談の初動で管理者がやりがちな失敗
離職面談・退職面談の初動で、管理者がやりがちな失敗があります。
それは、
話を聞く前に、すぐ引き止めようとすることです。
もちろん、残ってほしい職員なら止めたくなります。
「何が不満だったのか」
「条件を変えたら残れるのか」
「もう少し考えてくれないか」
こう言いたくなるのは自然です。
でも、本人の気持ちがかなり固まっている場合、いきなり引き止めても逆効果になることがあります。
なぜなら、本人の中ではもう、
- 相談ではなく決定事項になっている
- 表向きの理由だけ話す準備ができている
- 本音を話す気持ちは残っていない
- 直属上司より先に別ルートへ話が流れている
という状態になっていることがあるからです。
離職面談の初動は、説得ではなく状況確認から入る方が安全です。
ここを間違えると、本音はさらに閉じます。
直属上司に辞意が来ない職場では情報がねじれる
うちの会社は少し特殊です。
大きい会社ではないからか、辞める時は直属の上司である僕ではなく、先に社長へ言う流れがかなり多いんです。
しかも、それが半ば当たり前の社風になっています。
僕としては、かなりやりにくいです。
本来なら、社長の耳に入る前に止められるなら止めたい。
でも実際は、社長に先に話が上がる。
そのうえ、僕に不満を持って辞める職員の話を、社長や会長がそのまま受け取ることもあります。
この構造の何がしんどいか。
一番しんどいのは、
直属上司が一番最後に知ることです。
辞めたいと思うまでの温度変化。
小さな不満。
言いづらさ。
他部署とのズレ。
給料への不満。
働き方への違和感。
本当はそのあたりを、早い段階で拾えたら違ったかもしれない。
でも、社風として社長へ先に言うのが正しいことになっていると、そこが飛びます。
結果として、直属上司に話が来た頃には、こうなりやすいです。
- すでに本人の気持ちが固まっている
- 社長側にも情報が入っている
- その情報が本人にとって都合のいい形になっていることがある
- 直属上司が状況を確認する前に、経営側の印象ができている
この状態で離職面談をしても、普通の面談とは意味が変わります。
説得の場ではありません。
本音の採取も、かなり難しい。
むしろ、
情報断絶がどこで起きたかを確認する場
に近いです。
60代女性職員の退職は1年前から始まっていた
離職は、本人が「辞めます」と言った日に始まるとは限りません。
今回の主役にするのは、60代の女性職員です。
この人は、いわゆるお局的な立ち位置の人でした。
僕が管理者をやる前の管理者と仲が良く、以前はパートになる前に正社員として働いていたらしいです。
デイサービスと訪問介護、両方に所属していました。
正直に言うと、僕には少しきつく当たってきていました。
新しく入ってくる職員にも厳しいタイプでした。
辞める流れは、ある日突然始まったわけではありません。
今思えば、1年くらい前からもう始まっていました。
デイサービスの勤務を週1回に減らしてほしいと言われたんです。
よく聞くと、他のデイサービスでパート勤務を始めていて、そちらの時給がうちより200円ほど高かった。
その時点で、僕は薄く思っていました。
このまま辞める流れなんだろうな。
でも、薄く気づいていただけで、止められたわけではありません。
離職は「辞めます」と言われた日に始まるのではなく、勤務量・態度・情報共有の変化として先に出ることがあります。
ここを見落とすと、離職面談の初動が遅れます。
退職の第一声が「社長にはもう言ったから」だった
その日も突然でした。
昼。
送迎から帰ってきた時です。
その人がさらっと言いました。
もう今月で辞めるからよ。社長にはもう言ったからよ。
これが第一声でした。
相談ではありません。
確認でもありません。
決定事項の通告です。
数時間後、社長からも
「あの人が辞めると言ってきた」
という話が来ました。
社長や会長は、その人が長く働いてくれていたから、何とか引き止めたかったようです。
だから訪問介護の方では1か月ほど長引いたようです。
でも、僕が管理しているデイサービスの方は、そのまま止めてもらいました。
引き止めることはしませんでした。
この時点で、僕の中ではかなりはっきりしていました。
直属上司に最初の相談がない離職は、面談の時点でかなり終盤です。
ここで無理に引き止めると、かえって組織の線引きが崩れる可能性があると感じました。
退職理由は表向きと本音がズレることがある

表向きの理由は分かりやすかったです。
新しいデイサービスの方で、もっと稼ぎたい。
そちらの時給の方が高い。
だから勤務を減らしたい。
最終的にはそちらへ寄せたい。
これは一応、筋の通った理由です。
でも、本音はたぶんそこだけじゃありません。
今振り返ると、その人は僕の管理下では働きたくなかったんだと思います。
それまで正しいと思っていたことを、僕がかなり覆していったからです。
- パソコン化を進める
- 業務のやり方を変える
- 稼働率を上げる
- 忙しさが増す
- でも時給は上がらない
このズレは大きいです。
本人から見れば、こう見えていたはずです。
- 昔のやり方はどんどん変わる
- 自分の立場は少しずつ危うくなる
- 忙しさは増える
- でも報われている感覚は薄い
しかも、その不満を直属上司の僕に正面からぶつけるのではなく、社長や会長の方へ持っていく。
そうなると、本音はさらに見えにくくなります。
退職理由でズレやすい部分
・表向き:時給が高い職場へ行きたい
・本音:今の管理者の下では働きづらい
・表向き:勤務を減らしたい
・本音:現場の変化についていきたくない
・表向き:家庭や体調の都合
・本音:職場の人間関係や役割に疲れている
もちろん、すべての退職理由に裏があるとは限りません。
ただ、管理者は、表向きの理由だけで判断しない方がいいです。
退職理由は、本人が話しやすい理由に整えられていることがあります。
離職面談の初動で確認すべき5つのこと

離職面談・退職面談の初動では、いきなり条件交渉に入らない方がいいです。
まず確認すべきことは、次の5つです。
| 確認項目 | 見るポイント | 質問例 |
|---|---|---|
| 1. 表向きの理由 | 給料・勤務日数・家庭事情など | 「今回の一番大きな理由は何ですか?」 |
| 2. 本音のズレ | 本当は誰と何に疲れているのか | 「言いにくい部分も含めて、働きづらさはありましたか?」 |
| 3. 情報ルート | 誰に最初に話したのか | 「最初に誰へ相談しましたか?」 |
| 4. 前兆 | 口調・報告・欠勤・距離感の変化 | 「いつ頃から気持ちが変わっていましたか?」 |
| 5. 引き止め後の影響 | 特別扱いや前例化で組織が壊れないか | 「残るなら、どんな条件なら現実的ですか?」 |
この5つを見ずに、すぐ条件交渉に入るのは危ないです。
もちろん、残ってほしい職員もいます。
引き止めるべきケースもあります。
でも、その前に見るべきものがあります。
この離職は、本人の問題なのか。 組織の問題なのか。 管理者との関係の問題なのか。 それとも、すでに引き止める段階を過ぎているのか。
ここを見極めないと、離職面談はただの説得になります。
離職面談で本音を聞くための質問例
「本音を聞く」と言っても、いきなり核心を聞くと相手は閉じます。
特に、もう辞める気持ちが固まっている職員に対して、
何が不満だったんですか?
と聞いても、本音は出にくいです。
責められているように感じるからです。
だから僕なら、今はこう聞きます。
離職面談で使いやすい質問例
・いつ頃から、辞めることを考え始めていましたか?
・一番しんどかったのは、業務ですか、人間関係ですか、働き方ですか?
・こちらが気づけていなかった負担はありましたか?
・もう少し早く聞けていたら、変えられたことはありましたか?
・もし残る余地があるとしたら、何が変わる必要がありますか?
・逆に、もう気持ちとして戻れない部分はありますか?
・今後、同じことを他の職員に起こさないために、管理者として何を見ておくべきでしたか?
ここで大事なのは、引き止めるために聞くのではないことです。
もちろん、残る可能性があるなら検討します。
でも、それ以上に大事なのは、
次に同じ離職を起こさないために、どこで関係や情報が切れていたかを回収することです。
離職面談は、退職者を責める場ではありません。
管理者が、現場の構造を見直すための最後の聞き取りでもあります。
離職面談で引き止めない方がいい場面

ここも大事です。
僕は、何でも引き止めればいいとは思っていません。
もちろん、引き止めて働いてもらって、その後に変わることもあります。
でも一方で、条件を変に飲んでしまう怖さもあります。
たとえば、こういうことです。
- その人だけ特別扱いになる
- わがままに近い条件まで通る
- 他の職員にも同じ条件を求められる
- 管理者側の主導権がどんどん薄くなる
- 残った職員にしわ寄せが行く
これはかなり怖いです。
特に、小規模で人間関係が濃い職場では、一人の離職対応が、そのまま組織ルールの前例になります。
だから僕は今、
引き止めるかどうかより、引き止めた後に組織が壊れないか
を先に見ます。
ここを見ないで感情だけで残してしまうと、今度は別の場所で歪みが出ます。
引き止める前に見ること
・その条件は他の職員にも説明できるか
・特別扱いにならないか
・残った職員にしわ寄せが行かないか
・本人の気持ちは本当に戻るのか
・組織ルールより個別事情が優先されすぎていないか
一人を残すために、組織全体の線引きを壊すと、次の離職リスクが生まれます。
離職前のサインは口調・報告・距離感に出る
今回の話でも、結局ここに戻ります。
社長に辞めると言う前に、やっぱり兆候はあります。
- 情報が少なくなる
- 口調がきつくなる
- 休みがちになる
- 業務の協力が減る
- 管理者との距離が明らかに変わる
これらは、離職の確定サインではありません。
でも、かなり重要な前兆です。
そして、直属上司に辞意が直接来ない職場ほど、この前兆を拾う力が必要になります。
なぜなら、最初の相談が飛ぶからです。
普通の会社なら、辞める前に上司へ少しずつ不満が上がるかもしれない。
でも、それが飛んでいきなり社長へ行くなら、現場では前兆しか拾えません。
だからこそ、
「辞めると言われた時に何を聞くか」だけでなく、「辞める前に何が減っていたか」を見ることが重要です。
離職面談は、退職の話が出た後だけの技術ではありません。
本当は、退職の話が出る前から始まっています。
離職対応後に管理者が見直すべきこと
離職面談が終わった後、管理者がやるべきことがあります。
それは、本人への対応だけで終わらせないことです。
退職する人が悪かった。
相性が悪かった。
給料が高い職場に行っただけ。
そう整理すると、現場は何も変わりません。
見直すべきなのは、こういう部分です。
| 見直すこと | 確認するポイント |
|---|---|
| 情報共有 | 報告・相談が減っていなかったか |
| 業務負担 | 特定の職員に偏っていなかったか |
| 給与・時給感 | 外部との差をどう受け止めるか |
| 変化の負担 | 業務変更を一方的に進めていなかったか |
| 相談ルート | 直属上司に本音が上がる形があったか |
この振り返りがないと、同じ形の離職がまた起きます。
僕自身も、今回の件で思いました。
もっと早く聞けたことはなかったのか。
デイの勤務を週1回に減らした時点で、もっと踏み込むべきだったのではないか。
時給差200円の話を、ただ「外部条件」として見ていなかったか。
業務変更の負担を、本人がどう感じていたか見切れていたのか。
答えは簡単ではありません。
でも、少なくとも今は、辞める一言だけを見るのではなく、
その前から何が減っていたか
を見るようにしています。
まとめ|離職面談の初動は説得より情報回収
離職面談・退職面談の初動で大事なのは、上手に引き止めることではありません。
特に、直属上司ではなく社長に先に辞意が上がるような職場では、その時点でかなり決まっていることが多いです。
だから最初にやるべきことは、説得ではありません。
- 本音は何か
- 表向きの理由とズレていないか
- いつから前兆が出ていたか
- 誰と誰の間で情報が切れたか
- もし残る余地があるなら、何が変わればよかったのか
- 引き止めた後に、組織の線引きが壊れないか
ここを確認することです。
そしてもう一つ大事なのは、変に引き止めないことです。
一人を残すために、組織の線引きを壊してしまうと、そのしわ寄せは必ず別の職員へ流れます。
僕は今、離職の話が出た時ほど、その人一人だけではなく、
この職場の構造がどこで崩れていたのか
を見るようにしています。
離職は、最後の言葉より前に始まっています。
だから管理者が見るべきなのは、
「辞めます」の一言そのものではなく、
その前から切れ始めていた情報と関係です。
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今後、職員が辞めない仕組み全体を整理したい方は、こちらへつなげます。
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