デイサービス新人指導で衝突する3つの原因|教育の前提共有を揃える方法

デイサービスの新人指導や職員教育でしんどいのは、
相手ができないことそのものではありません。
本当にしんどいのは、
こっちは教えたつもりなのに、相手の中では「聞いていないこと」になっている時です。
しかも、それが他の職員の前で起きると、
現場の空気は一気に冷えます。
新人指導で揉めると、ついこう考えがちです。
- 教え方が悪かったのか
- 相手の能力が足りなかったのか
- 年齢や経験の問題なのか
- パソコンが苦手だから仕方ないのか
でも、僕が管理者として経験した限り、
本当にズレていたのはそこだけではありませんでした。
新人指導で衝突が起きる原因は、能力不足よりも「前提共有のズレ」にあります。
この記事では、僕が管理者になって1年くらいの時に起きた失敗をもとに、
デイサービスの新人指導で衝突が起きる理由と、管理者が作るべき教育の仕組みを整理します。
この記事の結論
デイサービスの新人指導で衝突が起きる原因は、本人の能力不足だけではありません。
本当に危ないのは、
教えた側は「共有済み」と思い、教わった側は「聞いていない」と感じている状態です。
教育で必要なのは、熱意だけではありません。
マニュアル、チェックリスト、動画、写真、LINE履歴などで、
ズレた時に戻れる前提を残すことです。
デイサービス新人指導で衝突する3つの原因

結論から言うと、
デイサービスの新人指導で衝突が起きる原因は、主に次の3つです。
| 原因 | 現場で起きること | 管理者が見るポイント |
|---|---|---|
| 教えたつもり | 口頭説明だけで終わる | 相手が再現できるか |
| 共有したつもり | 本人の中では入っていない | 見返せる場所があるか |
| できる前提 | 実際には一人でできない | 次回もできるか確認したか |
この3つがズレると、教育は人間関係の問題に変わります。
管理者は「もう教えた」と思っている。
本人は「ちゃんと聞いていない」と感じている。
周囲は「当然できるはず」と見ている。
この状態が一番危ないです。
できないことより、できることになっている状態の方が危ない。
新人指導でも、ベテラン職員への指導でも、ここは同じです。
原因1|口頭で教えただけでは伝わらない
昔の僕は、かなり時間をかけて教えたら、
それで教育したことになると思っていました。
でも今は違います。
口で伝えただけでは、教育したことにはなりません。
当時、勤務時間の集計はまだ手書きでした。
勤務時間を書いて、
電卓を叩いて、
毎月合計を出す。
かなり時間がかかっていました。
だから、パソコン入力へ変えることにしました。
教えた相手は、60代の女性生活相談員。
前の管理者と一緒に仕事をしてきた、いわゆるお局職員です。
パソコンは苦手だと聞いていました。
だから僕も、雑には教えていません。
- パソコンの起動
- エクセルデータの場所
- どこに入力するのか
- どうやって保存するのか
そこまで、かなり細かく教えました。
最初、メモも取らなかったので、
これはメモを取ってください。
とも伝えました。
その時点で、僕の中ではもう、
“ここまで教えたなら、あとは回るだろう”
という前提ができていました。
今思えば、そこが最初のズレでした。
原因2|毎月聞かれる時点で前提は揃っていない
それから数か月、毎月やり方を聞かれました。
だから、そのたびに僕は答えていました。
正直、その時点で気づくべきだったのかもしれません。
「一度教えたから、次はできるはず」
という前提自体が、もう危うかったんだと思います。
でも当時の僕は、そう思っていませんでした。
教えた。
繰り返し答えた。
だから、その人はできる。
そう思い込んでいました。
ところが、数か月後です。
別のスタッフと僕の目の前で、その職員が言いました。
こんなん、いつ決まったん。こんなの初めて聞いたわ。
さすがに、僕も、そこにいた別のスタッフも青ざめました。
あとでそのスタッフと話をした時、
「今までやってきた記憶は、どこに置いてきたんだろうね」
としか言えませんでした。
でも、今振り返ると、問題はそこだけではありません。
本当に怖いのは、
その人が忘れたことより、
こちらが“共有済み”だと思い込んでいたことです。
毎月聞かれるということは、
毎月どこかで止まっていたということです。
本来なら、その時点で、
- 口頭説明では足りない
- 手順が本人の中に残っていない
- 見返す場所がない
- 毎月同じ場所で詰まっている
と見直すべきでした。
原因3|できないことが「できる前提」になると揉める
あの時ショックだったのは、
「そんなこと聞いていない」と言われたことだけではありません。
一番ショックだったのは、
自分が“この人はもうできる”と思い込んでいたことです。
教えた。
メモも取るよう伝えた。
毎月聞かれた時も答えた。
そこまでやったら、できると思っていました。
でも、できない人はできない。
しかも、その人がプライドの高い職員だった時、
「分からない」と素直に言えないこともあります。
そうなると、今度は守りに入ります。
そして、その守りが攻撃に変わることがあります。
これは新人教育でも、ベテラン指導でも同じです。
できないこと自体が問題なんじゃありません。
できないことを“できることになっている状態”が一番危ない。
ここを放置すると、
教育の問題が、いつの間にか人間関係の問題に化けます。
教育でズレやすい5つの前提
教育で衝突が起きる時、ズレているのは能力だけではありません。
本当によくズレるのは、こういう前提です。
| ズレる前提 | 管理者側の思い込み | 現場で起きること |
|---|---|---|
| 一度教えた | 次はできるはず | 次回も同じ所で止まる |
| メモを取った | 覚えているはず | メモを見ても再現できない |
| 分からない時 | 聞いてくるはず | 分からないまま進める |
| 毎月業務 | 流れを理解しているはず | 毎回「初めて」になる |
| 同じ認識 | 共有済みのはず | 聞いていない話になる |
でも、現場ではこの前提は簡単に崩れます。
特に、年齢、職歴、プライド、苦手意識が絡むと、
こっちが思っている以上にズレます。
しかも厄介なのは、
このズレは表面上すぐには見えないことです。
一応その場では「分かりました」と言う。
でも、実際には入っていない。
そして数か月後に、別の形で噴き出す。
だから教育は、
熱意だけでも、丁寧さだけでも足りません。
教育は、何を教えたかより、何を“共有できたことにするか”の設計が重要です。
年上職員やベテランへの新人指導で注意すること
デイサービスの新人指導は、若い新人だけが対象ではありません。
年上の職員。
ベテラン職員。
前の職場経験が長い職員。
パソコンや記録が苦手な職員。
こういう人に教える時ほど、
管理者は注意が必要です。
なぜなら、本人の中にプライドや過去のやり方があるからです。
こちらが丁寧に教えているつもりでも、
相手からすれば、
- 今までのやり方を否定された
- 人前でできないと思われた
- 若い管理者に指摘された
- 分からないと言いにくい
と受け取られることがあります。
だから、年上職員やベテランに教える時は、
「分かりましたか?」だけでは足りません。
見るべきなのは、
次回、その人が一人で再現できるかです。
責める必要はありません。
でも、できたことにして進めるのは危ない。
プライドがある人ほど、分からないと言えない前提で教育を設計する。
これくらいで見ておいた方が、現場は壊れにくいです。
その職員は辞めた。だから僕は記録に残す教育へ変えた

その職員は、結局その数か月後に突然辞めていきました。
もちろん、原因は一つではないと思います。
でも少なくとも、教育の前提が揃っていなかったことは大きかったはずです。
この経験以降、僕は教え方を変えました。
今は、グループLINEを使っています。
- 詳細を文章で残す
- 動画で残す
- 写真で残す
- いつでも見返せる形にする
- 「いつでも聞いて」と言える状態にしておく
もちろん、これは覚えてもらうためでもあります。
でも、それだけではありません。
もっと大きいのは、
「教えた」という事実を残すためです。
口頭指導だけだと、あとから
聞いていない。
そんな説明はなかった。
が起きます。
でも、マニュアル、チェックリスト、動画、写真、LINE履歴が残っていれば、
少なくとも
“共有しようとした記録”
は残せます。
教育は、相手を責めるために記録するんじゃありません。
でも、管理者が自分を守るためにも、
現場の前提を揃えるためにも、
記録は必要です。
新人指導で管理者が作るべき3つの仕組み

この話を、ただの失敗談で終わらせると弱いです。
では、管理者は何を作ればいいのか。
僕は、最低限この3つだと思っています。
| 仕組み | 目的 | まず作るもの |
|---|---|---|
| マニュアル | 手順を見返す | どこを見るか・順番 |
| チェックリスト | できたか確認する | できた/不安を分ける |
| 動画・写真 | 戻れる場所を作る | 操作・物品場所・手順 |
1. 見返せるマニュアルを作る
口頭説明だけで終わらせない。
パソコン操作、記録、送迎表、物品管理、月末処理。
同じ質問が繰り返される業務ほど、見返せる形にした方がいいです。
完璧なマニュアルじゃなくてもいい。
まずは、
「どこを見るか」
「どの順番でやるか」
だけでも残す。
これだけで、教育の前提はかなり揃いやすくなります。
2. チェックリストで「できた」を確認する
説明しただけでは、できたことにはなりません。
実際にできたか。
どこで止まったか。
次回も一人でできそうか。
ここを確認しないと、
管理者だけが「教えたつもり」になります。
チェックリストは、相手を縛るためではありません。
できたことと、まだ不安なことを分けるための道具です。
3. 動画・写真・LINEで戻れる場所を作る
文章だけで分かりにくい業務は、動画や写真が強いです。
特に、パソコン操作や物品の場所、手順が決まっている作業は、
動画や写真で残した方が早いことがあります。
そして、LINEや共有フォルダで見返せる場所を作っておく。
これで、分からなくなった時に、
本人も管理者も戻る場所ができます。
教育のゴールは、
毎回管理者が説明し続けることではありません。
職員が自分で戻れる場所を作ることです。
マニュアルを作る時間がない時の最初の一手
ここで、現場の管理者はこう思うはずです。
マニュアルを作る時間なんてない。
これは本当にそうです。
現場がある。
送迎がある。
記録がある。
書類もある。
家族対応もある。
だから、最初から完璧なマニュアルを作ろうとしなくていいです。
まずは、毎月同じ質問が出る業務を1つだけ選びます。
たとえば、
- 勤務時間の集計
- 送迎表の作成
- 記録入力
- 物品補充
- 月末処理
この中から、同じ説明を繰り返しているものを1つ選ぶ。
そして、A4一枚でもいいので、
「見る場所」と「順番」だけを書きます。
写真を1枚貼るだけでもいいです。
スマホで動画を30秒撮るだけでもいいです。
最初に作るのは完璧なマニュアルではなく、戻れる場所です。
これなら、忙しい管理者でも始めやすいです。
LINEを見ない職員にはどう対応するか
もう一つ、よくある問題があります。
LINEに残しても見てくれない職員はどうするのか。
これも現場では起きます。
その場合、LINEだけに頼るのは危ないです。
LINEで残す。
紙でも置く。
チェックリストで確認する。
実際に一緒にやってみる。
このように、複数の戻り場所を作った方がいいです。
特に年配職員やスマホ操作が苦手な職員には、
LINEだけでは不十分なことがあります。
その場合は、
- 紙の手順書
- 写真付きの簡単な説明
- 見る場所の固定
- 最後にチェックリスト確認
までセットにした方が安全です。
大事なのは、ツールそのものではありません。
LINEを使うことが目的ではなく、前提を残すことが目的です。
紙でも、動画でも、写真でも、チェックリストでもいい。
ズレた時に戻れるなら、それが教育の仕組みになります。
よくある質問
Q. 何度も同じことを聞かれる職員にはどう対応すればいいですか?
まず、同じ説明を繰り返している業務を見つけます。
そのうえで、口頭説明だけで終わらせず、手順書やチェックリストに変えます。
何度も聞かれるということは、
本人の記憶力だけでなく、戻る場所がない可能性があります。
Q. 年上職員に指導すると空気が悪くなります。どうすればいいですか?
人前で「できていない」と見せる形は避けた方がいいです。
まずは、手順書やチェックリストを使い、個人攻撃ではなく「業務の流れの確認」にします。
人を正すより、流れをそろえる方が衝突は減ります。
Q. マニュアルを作る余裕がありません。
完璧なマニュアルは不要です。
まずは、毎月同じ質問が出る業務を1つだけ選び、A4一枚か写真1枚から始めます。
最初の目的は、完成度ではなく「戻れる場所」を作ることです。
Q. LINEや動画を見返してくれない職員にはどうすればいいですか?
LINEだけに頼らず、紙の手順書やチェックリストも併用します。
見る場所を一つに固定し、最後に一緒に確認する流れを作ると、前提が揃いやすくなります。
まとめ|新人指導は教え方より前提共有が重要
新人指導で衝突が起きる時、
よく「教え方が悪かったのか」「相手の能力の問題か」で考えがちです。
でも、現場ではそれだけでは足りません。
本当にズレているのは、
何を共有できたことにするか
という前提の方です。
一度教えた。
説明した。
メモも取るように言った。
それでも、相手の中で“入っていない”なら、
現場では共有されていないのと同じです。
だから今の僕は、
- マニュアルを作る
- チェックリストを作る
- 動画で残す
- 写真で残す
- LINEでいつでも見返せるようにする
この形に寄せています。
覚えてもらうためでもある。
でもそれ以上に、
前提を残すためです。
教育は、口で伝えることではありません。
前提を揃え、ズレても戻れる状態を作ること。
そこまでやって、ようやく現場は少し壊れにくくなります。
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