第48話|デイサービス管理者の仕事|現場と経営の板挟みをどう捌くか

管理者って、何の仕事ですか。
そう聞かれたら、今の僕はこう答えます。
無理って言わない仕事です。
きれいな答えじゃないです。
でも、現場の本音としてはこれが近い。
利用者さんのこと。
家族のこと。
現場スタッフのこと。
経営者のこと。
制度のこと。
数字のこと。
パソコンのことまで、なぜか最後は管理者に集まってくる。
ただ、ここで言う
「無理って言わない」
は、何でも思考停止で引き受けるって意味じゃありません。
できないで終わらせず、落としどころを探して、どうしたら回る形にできるかを考え続ける。
その意味で、無理って言わない仕事なんだと思っています。
今回は、デイサービス管理者の仕事って結局何なのか。
現場と経営の板挟みの中で、僕がどう捌くようになったのかを書きます。
管理者って、結局「無理って言わない仕事」なんだと思う
本音で言うと、管理者って
無理って言わない仕事
だと思っています。笑
もちろん、本当に資格が必要でできないことはできないと言います。
そこは線を引きます。
でも、それ以外のことで困りごとが来た時、
「管理者に聞けば何とかなるんじゃないか」
みたいな空気が、いつの間にかできるんですよね。
利用者獲得のこともそう。
ケアマネから無理めのお願いが来ても、簡単には
「できません」
とは言わない。
経営者からの質問や協力依頼も来る。
社長の愚痴のこぼしどころになっていることもある。笑
小さいところで言えば、パソコンの分からないことまで
「困ったらデイサービスの管理者に聞けばいい」
みたいな合言葉になっていたりする。
でも、僕はそれを全部嫌だとは思っていません。
分からないことや、やったことがないことは、調べてできるようになればいいと思っているからです。
だから管理者って、理想論で言えばもっと別の表現があるのかもしれないけど、
現場でやっていることを一言で言うなら、
「無理って言わない仕事」
これが一番近いです。
現場を守りたい。でも経営としては無理もある。その板挟みが一番きつい
現場と経営がぶつかった場面で、今でもよく覚えていることがあります。
数年前、重度の認知症がある男性利用者さんの受け入れの時です。
体も大きい方でした。
暴力を振るったりするわけではない。
でも、帰宅願望が出たり、声が大きかったりする。
背景には、その方の奥さんがいつ亡くなってもおかしくない状態だったことや、他の事情もあって、
うちのデイに通う必要性が高かった
んです。
だから僕は、最初から
「重い認知症だから無理です」
とは言いたくなかった。
でも当時のスタッフは、かなり強く反応しました。
その頃は、まだ以前の管理者についていた人が多かった時期です。
だから考え方も、今とはかなり違っていました。
火曜と金曜の午前中。
利用者さんはだいたい7人から8人。
介護スタッフは、僕を含めて3人。
機能訓練士は、介護に入らず個別機能訓練のみ。
その利用者さんは、ものすごく暴れたり、不穏が激しかったりする方ではなかった。
テープ式のおむつを使っていても、トイレ介助が極端に難しい方でもなかった。
運動も、その方を含めて1対2、1対3くらいでは回せていました。
だから、完全に受けられない人だったかと言うと、僕はそうは思わなかった。
でも現場の見え方は違った。
スタッフからは、
「こんな認知症の重い方が来たら、介助量が一気に上がりすぎて私たちでは対応できません」
「管理者が介助をやってください」
「こういう人が増えるなら、1単位に入る介護スタッフの数を増やしてください」
と言われました。
気持ちは分かる。
でも、人件費のことを考えると、スタッフを簡単に増やすわけにはいかなかった。
会社がNOと言うのは、ほぼ分かっていました。
だから僕は、その時まだ構造を変える発想が弱かったこともあって、
自分が中に入って、その人のケアをしながら、他の人の運動サポートもする
というやり方で耐えていました。
毎日、汗びっしょりでした。
しかも、ただ暑いとか忙しいとかじゃないんです。
「ここで自分が抜けたら崩れる」
という緊張の中で動いていたから、体だけじゃなく頭もずっと張っていました。
以前は「経営者と喧嘩するのが管理者」だと思われていた
当時、スタッフからすごい勢いで言われたことがあります。
「管理者って経営者と喧嘩するものですよ」
これ、すっごい睨みながら言われました。
めちゃくちゃ感情的に。
会議の場で、しかも声も大きい。
たぶん30分くらい言われていたと思います。
内容としては、
- 私たちの意見を代弁して、経営者に喧嘩してくださいよ
- 無理を言ってくるなら、スタッフが辞めますよって言って駆け引きしてくださいよ
そういう感じでした。
でも僕は、そのやり方は違うと思っていました。
確かに、その時のスタッフたちからしたら、僕は敵に見えていたんだと思います。
以前の管理者についていた人たちだったし、自分たちの立場も守りたかったんでしょう。
でも、そのまま経営者に
「現場が怒ってます」
「辞めますよって言いますよ」
ってぶつけたところで、うまくいかないのは目に見えていた。
むしろ経営者からは
「そんなの無理だ。もっと頭を使え」
と言われるだろうし、僕も実際そう思っていました。
要するに、当時は
対立の構造
だったんです。
現場と経営がぶつかる。
その真ん中で、管理者も一緒に感情でぶつかれと言われる。
でも、それでは長く持たない。
今は「喧嘩する役」ではなく、「通りやすい構造を作る役」だと思っている
今は、管理者の仕事をそうは思っていません。
今の僕は、
現場とも経営者とも仲良くして、意見が通りやすい構造を作る仕事
だと思っています。
ここで言う「仲良く」は、問題に目をつぶるって意味じゃありません。
感情的にぶつからない。
でも、必要なことは通す。
そのために、
- 構造をどう変えたらお互いが楽になるか
- 配置をどう変えたら回るか
- 何を先に整えればいいか
- 何を今は取らない方がいいか
を考える。
昔みたいに
「代わりに喧嘩してください」
ではなく、
「どうしたら、ぶつからずに現場と経営を両方守れるか」
を考えるようになりました。
今のところ、これはうまくいっています。
管理者じゃないと見えない景色がある
管理者をやっていて苦しいことは多いです。
でも、管理者じゃないと見えない景色もある。
それは、
構造を変えたら数字が変わる
という景色です。
これは僕だけかもしれないけど、かなり面白いです。
今まで燃え上がっていた問題が、
構造を変えたことで、さらに燃えるどころか、問題そのものが消えることがある。
そこにすごく驚きました。
特に僕の中で大きかったのは、
役割を変えたら、不満の出方まで変わる
ことでした。
- 配置を変えたら空気が変わる
- 役割を変えたら不満が減る
- 流れを変えたら事故リスクが下がる
- 書類の構造を変えたら処理速度が上がる
- 送迎や稼働率の見方を変えたら数字が動く
こういうことが起きる。
しかも、自分の仕事の処理能力が上がった時の喜びもある。
ただ苦しいだけじゃなく、
構造がハマった時に数字や空気が変わる瞬間
これは管理者じゃないと見えない景色だと思っています。
昔は「厳しくて威厳があるのが管理者」だと思っていた
社長から話をもらって、管理者になるまでの間、僕はかなり本を読みました。
デイサービスの管理者とは何か。
リーダーとは何か。
組織とは何か。
その時は、
管理者は厳しくいて、威厳を持たなければいけない
と思っていました。
でも今は、かなり変わりました。
今は、もっと肩の力を抜いていいと思っています。
もちろん、線引きは必要です。
でも、無理に威厳を作らなくてもいい。
構造を変えれば、変にぶつからなくても済む。
そこを理解しました。
つまり今の僕にとって管理者は、
- えらそうにする人
- 感情で押さえつける人
- 現場と経営のどちらかの味方だけをする人
ではなくて、
現場と経営の間に立って、壊れない形を作る人
に変わりました。
まとめ|管理者は「喧嘩する人」ではなく「壊れない形を作る人」になった
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
デイサービス管理者の仕事は、ただ現場を回すことでも、ただ経営者の言うことを伝えることでもありません。
本当は、
現場と経営の板挟みの中で、感情の衝突を構造の変更に変える仕事
なんだと思っています。
今回の僕のケースでは、
- 無理って言わない仕事として、全部が集まってきた
- 重度認知症の利用者受け入れで、現場と経営のズレが出た
- スタッフからは「経営者と喧嘩してください」と言われた
- でも対立で解決するやり方は違うと思った
- 今は、感情でぶつからずに、通りやすい構造を作る方へ変わった
こういう変化がありました。
以前は、管理者は厳しくて威厳がある存在だと思っていた。
でも今は、
管理者は、壊れない形を作るために現場と経営の間を捌く人
に変わりました。
たぶん、この仕事に正解はありません。
でも少なくとも今の僕は、喧嘩の強さより、
構造を変える力
の方が大事だと思っています。
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