第36話|職員メンタル崩壊が起きる前に管理者が見ているサイン 辞める直前は静かに始まる

デイサービスの管理をしていると、
「この人、もう危ないかもしれない」
と感じる瞬間があります。
でも、そのサインは分かりやすいとは限りません。
- 急に休みが増える
- 泣く
- 元気がなくなる
そういう分かりやすい崩れ方もあります。
でも実際には、もっと厄介な形で始まることがあります。
それが、攻撃性です。
しかも本人も、自分が崩れているとは思っていないことが多い。
むしろ、「自分は正しい」と思いながら、現場や管理者への不満を強めていく。
今回は、僕が
「この人、危ないな」
と感じた職員の話を書きます。
ただ、先にひとつだけはっきり書いておきたいことがあります。
この人は、悪い人ではありませんでした。
むしろ、利用者さんに良くなってもらいたいという思いが強く、情熱もあった。
実際、一緒に静かだったデイサービスを立て直してくれた仲でもありました。
だからこそ、この話は単なる人間関係のもつれではありません。
善意や功労があっても、組織を壊す方向へ向かった時には線を引かなければならない。
その痛みを伴う判断の話でもあります。
一緒にデイサービスを立ち上げ直してくれた人だった
その職員は、60代の女性介護職でした。
他のデイサービスの立ち上げにも関わり、そのデイをかなり有名なところまで成長させた人の一人でした。
病院やデイサービスの勤務経験もあり、社長とももともと仲がよかった。
制度には強くない。
でも、気持ちは強い。
利用者さんに良くなってもらいたいという思いはかなり強い人でした。
僕がデイサービスの管理者になった時、社長が連れてきた介護職員でもあります。
正直、最初はかなり助けられました。
静かだったデイサービスを、元気なデイサービスに一緒に変えてくれた人でした。
僕にとっても良い相談相手でした。
だから、最初は敵対するなんて全く思っていませんでした。
そこから少しずつズレていった
ただ、途中から僕の考えは変わっていきました。
このままではダメだ。
書類仕事や制度に強くなっていかないと、いつか運営指導で潰れる。
そう思うようになったんです。
だから僕は、制度対応や書類整備を強める方向へ動いていきました。
でも、そのあたりから関係が少しずつ悪くなっていったように思います。
この方は、制度より現場が大事という現場主義の人でした。
悪い人ではありません。
でも僕が制度の方へ強く寄っていくことで、価値観のズレが広がっていった。
今振り返ると、あの頃からもうサインは出ていたんだと思います。
最初のサインは「弱る」ではなく「攻撃的になる」だった
この方の崩れ方は、静かに弱るタイプではありませんでした。
最初に出たのは、攻撃性でした。
ちょうど5月頃。
運営規定の更新や制度変更で、書類業務がかなり増える時期でした。
当然、僕はパソコンに向かう時間が増えます。
現場に入れる時間は減る。
そこに対して、かなり不満があったようでした。
他の職員には、
「オタクみたいにパソコンに向かってるじゃないですか」
みたいなことを言っていたらしいです。
一見すると小さな悪口です。
でも、こういう言葉って、ただの愚痴では終わらないことがあります。
「私は不満を持っている」
だけでなく、
「他の人もそう思っているはずだ」
という空気を作ろうとし始める。
ここが危ないです。
全体会議で「大暴露大会」を始めようとした
決定的だったのは、ある全体会議でした。
その60代女性職員が、急に
「今日は自分が仕切りたい」
と言い始め、会議を回し始めたんです。
あとから分かったのは、事前に他の介護スタッフへ
「管理者に対する不安はないか」
と聞いて回っていたようでした。
要するに、会議を
僕への不満の大暴露大会
にしようとしていたわけです。
実際、その場で
- この人はこんな不満がありますよ
- 他の人もこう言ってますよ
という話が出てきました。
でもそこで、巻き込まれた他職員たちは黙るか、あるいは
- 私はそんなこと言ってません
- そんなつもりで言ったんじゃありません
となっていきました。
空気はかなり修羅場でした。
つまりこの時点で、ただの不満ではなく、
他職員の扇動
に変わっていたんです。
「制度のことなんていいですよ」と言われた時、さすがに見過ごせなかった
会議の中で僕は、全部制度を絡めて説明しました。
なぜそれが必要なのか。
なぜそのルールを守らないといけないのか。
なぜ現場のやりやすさだけでは済まないのか。
でも、その60代女性職員は最終的に
「制度のことなんていいですよ、別に」
と言い始めました。
ここは、さすがに見過ごせませんでした。
もし全体会議の場で、それを放置したらどうなるか。
現場に
「制度はどうでもいい」
という価値観が広がる。
それはもう、単なる意見の違いではありません。
組織の土台そのものを崩します。
だから僕は、その場で
「それは違う」
と指摘せざるを得ませんでした。
全体会議の場じゃなければ、2人で話したと思います。
でもあの時はそうできなかった。
あの場で間違っていることを間違っていると言わなかったら、組織が潰れていたと思います。
結果として、その会議は
「制度のことはしっかり守らなければいけない」
「そのルールの中で質の高い介護サービスを提供していかなければいけない」
という形で落ち着きました。
でもその翌週、その方は社長に連絡し、辞めていきました。
まだ支えられる段階だと思っていた。でも線を越えた
正直に言うと、会議の前までは、まだ支えられる段階だと思っていました。
不満がある。
気持ちが乱れている。
制度強化に納得できていない。
そこまでは、まあ分かる。
でも、他の職員を巻き込んで、管理者への不信感を会議で爆発させようとした時点で、線を越えたと感じました。
僕の中での線引きは、ここです。
他の職員を扇動するかどうか。
不満を持つのはいい。
意見を言うのもいい。
でも、それが組織の土台を崩す方向へ行き始めたら、管理者として守らなければいけないものが変わる。
一緒に静かだったデイサービスを元気なデイサービスに変えてくれた仲だったからこそ、かなり悲しかったです。
でも、悲しいからといって見逃していい問題ではありませんでした。
この件のあと、僕は前面に出るのを減らした
この出来事のあと、僕の管理の仕方はかなり変わりました。
僕が全部前面に出るのはやめました。
これは逃げではありません。
むしろ逆です。
僕が前に出る時代は終わった、と理解したんです。
それまでの僕は、自分が価値観を壊し、新しい元気な価値観を入れていく役でした。
その役目は果たしたと思っています。
さらに、制度に対応するための箱も作った。
書類、ルール、流れ、仕組み。
土台は作った。
だからその先は、職員同士で
「どうやったら良くなるか」
を決めてもらうフェーズに入ったんです。
今も僕は、書類業務や管理業務に追われて、現場にずっと出られるわけではありません。
でも、書類をしながらも職員や利用者さんの動きを見ています。
フェーズが変わった。
だからこそ、構造が見えるようになったんだと思っています。
職員メンタルの崩壊は「弱さ」ではなく「攻撃性」で始まることがある
この件で分かったのは、職員のメンタル崩壊は、必ずしも弱って見える形では始まらないということです。
- 表情が死ぬ
- 休みが増える
- 静かになる
それだけではない。
むしろ、
- 急に攻撃的になる
- 管理者への不満をまき散らす
- 他職員を巻き込もうとする
- 自分の正しさを強く押し出す
こういう形で出ることもあります。
そして本人は、
「自分が崩れている」
とは思っていない。
でも実際には、かなり限界が近い。
だから攻撃になる。
ここを見抜けるかどうかで、管理者の対応はかなり変わります。
まとめ|職員メンタル崩壊のサインは「静かな崩れ」だけじゃない
今、読者に一番伝えたい結論はこれです。
職員メンタル崩壊のサインは、静かに弱る形だけではありません。攻撃性として出ることもある。
今回の件では、
- 制度強化への不満
- 現場に入らない管理者への反発
- 他職員の扇動
- 全体会議での爆発
という流れで、一気に表面化しました。
以前は、メンタルが危ない人というと、元気がない人を想像していた。
でも今は、
急に攻撃的になる人、周囲を巻き込み始める人も危ない
と見るようになりました。
そしてもう一つ。
支えられる段階と、組織を守る段階は違います。
不満や揺れがあるうちは支える。
でも、他の職員を扇動し始めたら、それはもう組織防衛のフェーズです。
以前は、自分が前に出て全部まとめようとしていた。
でも今は、土台を作ったら、その中身は職員同士で作ってもらう方向に変えています。
メンタル崩壊を防ぐには、
人を見ることも必要。
でも同じくらい、構造を見ることが必要です。
それをかなり痛く学んだ出来事でした。
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