小規模デイサービスをやっていると、

「稼働率8割あれば安心ですか?」

と聞かれることがあります。

結論から言うと、安心できません。

むしろ、見かけの稼働率だけを見ていると危ないです。

なぜなら、小規模デイは

何人埋まっているか
よりも
誰で埋まっているか

の方がずっと大事だからです。

僕も昔は、とにかく利用マスを埋めることばかり考えていました。
でもある時、施設利用者の割合が高くなりすぎたことで、数字の見え方が一気に変わりました。

その時に分かったのは、

  • 稼働率が高くても脆い構造はある
  • 施設利用者が多いと、一晩で売上が崩れる
  • 管理者の仕事は、埋めることより潰さないこと

ということです。

今回は、定員10名の小規模デイで、稼働率8割近くあっても安心できなかった理由を書きます。
これは売上の話であると同時に、負けない構造をどう作るかの話でもあります。

定員10名デイは、少し崩れただけで数字が一気に変わる

うちのデイサービスは、午前10名・午後10名の二単位制です。

つまり、1日20マスです。

営業日が20日なら、月の総利用マスは400。
この400をどう埋めるかが、小規模デイの経営ではかなり重要になります。

ただ、ここで怖いのは、1人、2人の欠席でもインパクトが大きいことです。

大きい施設なら多少のブレは吸収できます。
でも定員10名デイは違います。

例えば1単位10名のうち2名休むだけで、もう2割減です。
午前午後それぞれにそれが起きると、その日の空気は一気に変わります。

小規模デイは、少しの欠席がそのまま経営の揺れになります。

しかも、ここに施設利用者が多く入っていると話はもっと重くなります。

施設利用者30マスが埋まっていた時期があった

ある時期、うちでは施設利用者の利用マスが30マスほどありました。

紹介が来ると、やっぱり断りにくいんです。
小規模デイで空きがあれば、なおさらです。

しかも施設利用者さんは、まとまって利用につながることもある。
だから見た目としてはかなり助かります。

実際、その頃は数字だけ見ると悪くありませんでした。
稼働率も8割前後に見えていましたし、管理者としても

「だいぶ埋まってきたな」

という感覚はありました。

でも、その構造はかなり脆かった。

なぜなら、施設利用者さんは、施設側の事情で一気に止まることがあるからです。

一晩で売上の3割近くが消えることがある

これが小規模デイの本当に怖いところです。

施設内で感染症が出る。
外出自粛になる。
すると、その施設の利用者さんが一気に休みます。

うちでも実際に、ある施設で感染症が出て、6名がまとめて休んだことがありました。
しかもそれが単発ではなく、2か月ほど続いた時期もありました。

30マス分の利用が、一気に止まる。
これはかなり重いです。

この時期は、朝の電話が本当に怖かったです。

送迎車を出す前に、

「今日は何人休みですか」

という確認が入るだけで、その日の売上が一気に変わる。

施設利用者の割合が高いと、たった一晩で売上の3割近くが消えることもありました。

管理者としては、朝から心臓がバクバクするような感覚でした。

数字の上では、利用マスは埋まっている。
でも実際には、そのマスが全然安定していない。

この感覚は、経験しないと分かりにくいと思います。

「埋まっている」と「安心できる」は違う

この頃の僕は、かなりはっきり学びました。

埋まっていることと、安心できることは違う。

一見すると、30マス埋まっているのはいいことです。
でも、その30マスが施設依存で、施設の事情ひとつで止まるなら、それは安定ではありません。

しかも施設利用者さんは、要介護の方が多い。
つまり休みが出た時の売上インパクトも大きいです。

ここで怖いのは、

「数字があるから安心」

と錯覚してしまうことです。

本当は違う。
数字があっても、その中身が偏っていれば脆い。

これは20名定員のデイでも起こると思います。
でも、定員10名デイではその影響がより濃く出ます。

小さいからこそ、偏りがそのまま経営の揺れになります。

そこで僕は、施設利用者を20マスまでに制限した

この経験のあと、僕は施設利用者の利用マスを20マスまでに抑えるようにしました。

これは感情ではなく、完全に構造の話です。

施設利用者さんをゼロにしたわけではありません。
必要な人はいますし、紹介もあります。
ただ、割合を持ちすぎると危ない。

だから、

  • 施設利用者は20マスまで
  • それ以上は基本的に埋めない
  • その代わり在宅利用者を増やす

という考え方に変えました。

紹介が来ても、

「今は施設利用者の枠がいっぱいです」

と伝えるようにしました。

正直、断りにくいです。
施設からの紹介はありがたい。
しかも空きがあるように見えると、なおさら断りづらい。

でも、あの時に分かりました。

ここで断れないと、あとでもっと苦しくなる。

管理者の仕事は「全部受けること」ではない

この経験を通して、管理者の仕事の見え方が変わりました。

以前は、来た紹介はできるだけ全部受けることが正しいと思っていました。
とにかく埋める。
それが経営だと思っていた。

でも今は違います。

管理者の仕事は、来た紹介を全部受けることではない。

本当に大事なのは、

どの利用者構成ならこのデイが潰れにくいか

を考えることでした。

つまり、全方位に良い顔をするのではなく、リスクのポートフォリオを管理すること
埋めることより、まず潰さないことを優先する。

それが小規模デイの管理者に必要な冷たさだと、あの時はっきり分かりました。

この冷たさは、利用者を切り捨てるという意味ではありません。
デイ全体が崩れないために、構成を管理するという意味です。

小規模デイは、優しさだけでは守れません。構造で守る必要があります。

施設利用者を減らしたら、現場の空気も変わった

この話、経営の数字だけで終わるわけではありません。

施設利用者の比率を下げていった結果、現場の空気も変わりました。

具体的には、介護員の不満が減りました。

理由はシンプルです。
施設利用者さんが多いと、キャンセルの波が急です。
来る日と来ない日の差も大きい。
送迎も崩れる。
その日の介助量や負荷も読みづらい。

つまり、現場のリズムが安定しにくいんです。

逆に、在宅利用者さんの割合が増えると、比較的リズムが読みやすくなる。
もちろんゼロではないけれど、施設都合でまとめて止まるような崩れ方は減る。

結果として、数字だけでなく、現場のストレスも減っていきました。

経営の構造を変えることは、現場のメンタルにも直結します。

売上の安定は、そのまま職員の安心にもつながるんです。

稼働率8割でも赤字リスクがある理由

ここで一度、はっきり書いておきます。

定員10名デイで、稼働率8割でも赤字リスクはあります。

なぜなら、

  • 利用者構成が偏っている
  • 施設依存が強い
  • キャンセルが一気に出る
  • その日の売上が急変する
  • 加算や職員配置とのバランスがある

こういう条件が重なると、見た目の稼働率だけでは守れないからです。

数字としての8割は、確かに悪くないです。
でも、それが

落ちにくい8割なのか
一晩で崩れる8割なのか

で意味が全く違う。

ここを見誤ると、管理者は苦しくなります。

まとめ|小規模デイで大事なのは「埋めること」ではなく「潰さないこと」

今回の結論はこれです。

小規模デイで本当に大事なのは、埋めることより、潰さないことです。

定員10名デイでは、少しの偏りがそのまま経営の揺れになります。

施設利用者が多ければ、一晩で売上の3割近くが消えることもある。
稼働率8割でも、構造が脆ければ全然安心できない。

だから管理者は、

何人埋まっているか
ではなく
誰で埋まっているか

を見なければいけない。

施設利用者の割合。
在宅利用者とのバランス。
キャンセルの出方。
現場の負担。
その全部を含めて、負けない構造を作る。

それが小規模デイを守る管理者の仕事だと思っています。

あの時、施設利用者30マスを抱えたことで、僕はそれをかなり痛く学びました。

数字は埋まっていた。
でも、要塞としては脆かった。

だから今は、

「埋まっているか」より「崩れにくいか」

を見るようにしています。


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第23話:キャンセル崩壊の正体
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第26話:満員でも儲からない
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ハブ記事
リハビリ特化型デイサービス管理者の仕事ロードマップ
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ABOUT ME
リハビリデイ管理者
リハビリ特化型デイサービスの現役管理者。 現場運営・稼働率改善・スタッフ管理など、実際のデイサービス経営のリアルを発信しています。 これまで複数のデイサービス事業所で勤務し、稼働率が低迷していた事業所の改善に携わる。 担当した事業所では、稼働率を58.5%から79.8%まで改善。 ケアマネジャーとの関係づくり、紹介数を増やす営業方法、現場オペレーション改善など、 現場経験をもとにした実践的なノウハウをまとめています。 「現場で本当に使えるデイサービス経営」をテーマに、 管理者・生活相談員・デイサービス経営者向けに情報を発信しています。