小規模デイサービスの稼働率と収益|69.5%の実績と75%稼働モデル

※この記事にはプロモーションが含まれます。
結論から言うと、稼働率だけでは小規模デイの経営に余裕があるかは分かりません。
僕のデイでは、2025年12月の総提供枠420枠に対して、延べ利用は292回でした。稼働率は69.5%です。
ただし、僕は実際の売上帳票を確認できる立場ではありません。1回の利用による売上を約5,000円として考えると、292回×約5,000円で、2025年12月の売上は概算約146万円、丸めれば約150万円前後という試算になります。
これとは別に、20営業日・1日20枠・最大400枠のうち300回利用するモデルも確認しました。稼働率は75%です。
このモデルでは、基本報酬と実際に算定している加算を合わせた総収入が150万円、人件費が114万6,000円でした。人件費率は76.4%で、人件費を引いた残額は35万4,000円です。
ただし、この35万4,000円からは、家賃、車両費、水道光熱費、消耗品費、システム費、修繕費、本部経費などがさらに出ていきます。事業全体で最終的に残る金額を示した数字ではありません。
この記事では、2025年12月の実績と300回利用モデルを分けたうえで、稼働率が高く見えても安心できなかった僕の実体験を書きます。
2025年12月の稼働率は69.5%だった
ある時期の利用状況は、こんな感じでした。
- 月曜:午前8名/午後6名
- 火曜:午前9名/午後10名
- 水曜:午前7名/午後9名
- 木曜:午前8名/午後9名
- 金曜:午前10名/午後9名
数字だけ見ると、かなり埋まっています。
少なくとも、スカスカのデイには見えません。実際、現場感覚でも、そこそこ回っているように見えていました。
でも、月単位で確認すると、2025年12月は21営業日でした。
- 午前10名+午後10名で、1日20枠
- 21営業日で、総提供枠420枠
- 延べ利用292回
- 稼働率69.5%
見た目は埋まっている。でも、月全体で見ると約7割でした。
売上も帳票の実績値ではなく、1回約5,000円として試算すると概算約146万円です。
表面上は回っている。それでも、僕の感覚としては全然安心できませんでした。

稼働率だけでは安心できなかった理由
その時、一番重かったのは人件費です。
ただ、単純に「人件費が高いから苦しい」で終わる話ではありませんでした。
きっかけは、2025年7月31日に常勤の作業療法士が退職したことです。新しいリハ職を募集しましたが、なかなか見つかりませんでした。
その時、社長から、
「このまま待つより、看護職に声をかけよう」
という話が出ました。
2025年8月1日から、看護職員兼機能訓練指導員を配置しました。非常勤の作業療法士にも入ってもらいましたが、家庭事情などから勤務は月5〜15日程度で、勤務日数は減少傾向にありました。
うちはリハビリ特化型デイです。看護職を配置したからといって、機能訓練の質が自動的に高まるわけではありません。
定員変更も、追加の職員増員も実施していません。
人を配置すれば終わりではなく、その体制で何ができて、何ができないのかを見なければいけませんでした。
稼働率75%でも人件費率76.4%となる試算

2025年12月の実績とは別に、月300回利用する場合の収益モデルを確認しました。
前提は次のとおりです。
- 20営業日
- 1日20枠
- 最大提供枠400枠
- 月間延べ利用300回
- 稼働率75%
収入の内訳は次のとおりです。
| 項目 | 試算額 |
|---|---|
| 基本報酬 | 1,350,000円 |
| 個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 100,800円 |
| 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | 18,000円 |
| 個別機能訓練加算Ⅱ | 7,200円 |
| 科学的介護推進体制加算 | 24,000円 |
| 加算合計 | 150,000円 |
| 総収入 | 1,500,000円 |
このモデルで算定に含めていないのは、ADL維持等加算と口腔機能向上加算です。
総人件費は1,146,000円で、人件費率は76.4%です。
総収入150万円から人件費を引くと、残額は354,000円になります。
ただし、このモデルに家賃、車両費、水道光熱費、消耗品費、システム費、修繕費、本部経費などは含まれていません。総収入150万円も実際の売上帳票ではなく、あくまでモデル上の試算です。
数字を見た時に、まず思いました。
「余裕ないな」
本当に、それでした。
手元に通年データがそろっている2023年は、年間総提供枠5,140枠に対して延べ利用4,106回で、稼働率は79.9%でした。
高い水準で稼働した年があっても、毎月その水準を保てるとは限りません。75%のモデルでも人件費率が76.4%になる。その数字を見て、稼働率だけでは安心できないと感じました。
看護職配置でできたことと、できなかったこと

その時の本音を、そのまま書くとこうです。
「これは儲け出てないな」
「下手したら、ちょっと赤になってもおかしくないよな」
これは売上帳票と全経費を確認した結論ではなく、当時の僕の率直な感覚です。
ただ同時に、僕の中には別の考えもありました。
「これを維持できるなら、まだちょっといいかな」
もしかしたら甘いのかもしれません。でも僕は、看護職を配置する意味も感じていました。
実際に、看護処置や健康管理を任せられるようになりました。利用者さんの急変時にも対応でき、極度の低血糖となった利用者さんを救急搬送につなげたこともあります。
一方で、看護職にはリハビリの経験がなく、機能訓練には悩みがありました。
看護職を配置したことで機能訓練の質が高まったとは言えません。非常勤の作業療法士の勤務も安定しておらず、稼働率や紹介数の増加にも結びついていません。
できたことと、できなかったこと。その両方を見なければ、この人員変更は評価できないと思っています。
構造変更は人材定着もリスクになる
もちろん、きれいな話ではありません。
看護職は、リハビリを覚えるのにかなり苦労していました。こちらも分かっていました。
だからといって、
「もっと頑張れ」
と強く言えば、辞める可能性もある。
つまり、数字だけの問題ではないんです。
- 新しい人材が定着するか
- リハビリの質を守れるか
- 利用者や家族からの信頼を保てるか
- 現場が無理なく回るか
そういう不安定さも含めて考える必要がありました。
だから僕の感覚としては、
「最低限ラインだけど、このまま行ければな」
という感じでした。
攻め切れているわけではない。でも、ただ守っているだけでもない。その中間です。
小規模デイの経営って、こういう曖昧な緊張感の中にあります。
加算や人員配置は確認範囲を限定して扱う
この時、僕はかなり胃が痛かったです。
そもそも、そんなことして大丈夫なのか。そこが出発点でした。
そこで、和歌山市 健康局 保険医療部 指導監査課へ疑義照会を行いました。疑義照会No.123への回答日は、2025年8月4日です。
確認したのは、次の範囲です。
- 個別機能訓練加算(Ⅰ)イの配置・直接実施条件
- 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの追加配置・直接実施条件
- 当時の体制では、第1・第3週の月曜から金曜、10時から12時に直接訓練を受けた利用者が対象となること
- 口腔機能向上加算は、看護職員配置でも人員要件を満たし得ること
実際に算定しているのは、個別機能訓練加算(Ⅰ)イ、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ、個別機能訓練加算Ⅱ、科学的介護推進体制加算です。
ADL維持等加算と口腔機能向上加算は算定していません。
この疑義照会では、定員変更の可否は確認していません。定員変更も実施していません。
また、この回答だけで、他の要件まですべて満たしていると一般化はできません。2025年8月4日時点の和歌山市への照会内容として、範囲を限定して扱います。
僕にとっては、「人を入れる」ことより、「成立する条件を確認してから人を配置する」ことのほうが大事でした。
2025年12月の稼働率低下は冬季欠席が主因ではない
2025年12月の欠席は例年並みで、冬季の欠席急増が主因ではありませんでした。
大きかったのは、2025年8月に、死亡や施設入所などで複数名の利用が終了したことです。
その後、新規紹介が少ない状態が続き、利用者数が回復しないまま12月を迎えました。
月単位の稼働率を見る時は、欠席だけではなく、
- 利用終了が何件あったか
- 新規紹介がどの程度あったか
- 減った利用枠が回復しているか
まで分けて見ないと、原因を取り違えます。
僕のデイで2025年12月の69.5%につながったのは、冬だからという一言ではなく、8月以降の利用終了と紹介減が続いた結果でした。
稼働率より「人件費を引いたあとに何が残るか」を見る
小規模デイで怖いのは、満員を幻想として追うことです。
利用枠が埋まれば何とかなる。稼働率が上がれば安心できる。そう思いたくなります。
でも、300回利用・稼働率75%のモデルでも、人件費率は76.4%でした。
人件費を引いた残額は354,000円ですが、そこから家賃、車両費、水道光熱費などが出ていきます。
僕がこの時に学んだのは、見るべきなのは稼働率そのものではなく、その稼働率と収入の前提で、人件費を引いたあとにいくら残るかということでした。
そして、残額だけでは判断しないことです。何の費用を含み、何を含んでいないのかまで確認しなければ、数字の意味を取り違えます。
今月の数字と、体制変更が今後どう影響するか。その両方を見る視点が必要でした。
数字を管理者の評価や給料交渉にどうつなげるか
稼働率や人件費を見るようになると、管理者の仕事は「現場を回すこと」だけでは終わらないと分かります。数字を動かした実績は、評価や昇給交渉の材料にもなります。
僕が実際に、稼働率58%台から79%台まで改善し、年収470万円まで上がった経緯はこちらの記事で書いています。
小規模デイ管理者が数字を見る時の順番
今回の実体験から、僕が先に確認するのは次の数字です。
- 営業日数
- 1日の最大提供枠
- 月間の総提供枠
- 延べ利用回数
- 稼働率
- 基本報酬と、実際に算定している加算
- 人件費
- 人件費を引いた残額
- まだ含めていない非人件費
- 利用終了、新規紹介、欠席の内訳
売上帳票を確認できない場合は、実績値と概算を混ぜないことも大切です。
僕の2025年12月の売上は、1回約5,000円として考えた概算です。300回利用のモデルも、実際の売上帳票ではありません。
数字を感覚だけで追わず、実績と試算を分ける。それだけでも、何が分かっていて、何がまだ分からないのかが見えやすくなります。
会計や収支管理を後回しにしているなら、まずは売上・人件費・固定費を見える化するところから始めると、判断はかなり変わります。
売上・人件費・固定費を見える化する仕組みを選ぶときの確認軸は、別の記事で整理します。
小規模デイで会計・収支管理の仕組みを選ぶときの確認軸を読む
まとめ|稼働率だけでは経営の余裕は分からない
2025年12月の僕のデイは、420枠中292回の利用で、稼働率69.5%でした。
1回約5,000円として考えると、売上は概算約146万円です。ただし、これは売上帳票で確認した実績値ではありません。
これとは別の300回利用モデルでは、稼働率75%、総収入150万円、人件費114万6,000円、人件費率76.4%、人件費を引いた残額35万4,000円という試算になりました。
35万4,000円には、家賃、車両費、水道光熱費などの支払いが反映されていません。
だから、稼働率が高いか低いかだけでは判断できません。
- 実績と試算を分ける
- 何を含む数字か確認する
- 人件費以外の支出を忘れない
- 利用終了、紹介、欠席を分けて見る
- 人員変更でできたことと、できなかったことを分ける
この視点が必要でした。
利用枠が埋まって見えるかではなく、その数字の前提と、人件費を引いたあとに何が残るか。
そこまで見て初めて、小規模デイの現在地が分かるのだと思います。
ハブ記事
→ 管理者の仕事全体をまとめて追いたい方はこちら。
第20話|定員10名デイの売上リアル稼働率が高くても、施設利用者への依存で売上が崩れるリスクを読む。
第25話|「忙しくなるなら利用者はいりません」と言われた日数字の話を、現場の反発と温度差から深める。




